2025年度の大学入試から追加される「情報」科目。
「志望大学によって配点が違うの?」「既卒者のための『旧情報』って何?」「どうやって勉強すればいいか分からない…」――そんなお悩みをこの記事で解消しましょう!
共通テスト「情報I」がどんな試験なのか、大学入試センターが公開している試作問題を、現役東大生が実際に解いてみた感想とともに説明します!
(StudiCoサポーターI.T.)
現役東大生。理学部物理学科に所属。高校生だった頃はまだ旧課程で、「情報」の授業はPower PointやExcelの操作に慣れる程度のものでした。プログラミングに触れたのは大学で履修していたPythonを使う授業が初めてで、現在は実験データの解析などにプログラミングを活用しています。(プログラミング言語は主にPython、C言語を使用)
1. 共通テスト「情報I」の概要
共通テスト「情報I」および既卒生に向けた経過措置となる「旧情報」は、どちらも試験時間は60分、配点は100点です。2025年1月実施の共通テストから追加となる科目ですが、既に大学入試センターは試作問題を公開しており、誰でも閲覧可能です。
*令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等(大学入試センター)
大学ごとに「情報I」の配点は異なりますが、国立大学ではほとんどが必須、公立大学でも半数近くが必須科目としています。(他教科との選択が可能、または利用しない大学もあります)自分が志望する大学が「情報I」を必須にしているか、配点がどのようになっているのかは、「大学受験パスナビ」などの受験情報サイトから確認しましょう。
*大学受験パスナビ:全国の大学・学部の入試科目
*東進ハイスクール:大学別「情報I」利用状況
私立大学の共通テスト利用入試では、選択科目として設定する大学がある一方、必須科目として配点を比較的高めに設定している大学もあるようです。最新情報は各大学のWebサイトを確認するようにしてください。
また、2025年度の共通テストに限り、旧教育課程履修者のための経過措置として、旧学習指導要領の選択必履修科目「社会と情報」「情報の科学」を範囲とする科目「旧情報」が用意されています。「旧情報」も大学入試センターが試作問題を公開しています。新課程履修者は、旧課程科目を選択解答することはできません。
※ここでの旧課程履修者とは、既卒者や令和7年3月卒業見込みであるが入学は令和4年3月以前の受験生を指しています。
*令和7年度 大学入学共通テストQ&A
共通テスト「情報I」では、それぞれの教科書や学校で採用しているプログラミング言語が異なるという事情を考慮して、「共通テスト手順記述標準言語」(DNCL)が使用されます。基本的にはPythonなどの一般的なプログラミング言語の知識があれば読み解くことができます。
代入文を「=」(イコール)でなく「←」のようにして書き表す場合があったり、算術演算子「÷」で整数の除算の商を計算するように定められていたりしますが、問題文の指示を読めば分かるようになっています。 大学入試センターがDNCLのルールについて説明している文書があるので、興味があれば確認しておきましょう。
*共通テスト手順記述標準言語(DNCL)の説明
2. 共通テスト「情報I」の試作問題を解いてみた
筆者が「情報I」の試作問題を解いてみたところ、結果は96点でした。問題の量が多く、制限時間60分ギリギリまでかかってしまい、見直しに充てる時間はほとんどありませんでした。
久々に共通テストのような試験を受けたこともあり、「答えを1つ選べばよい問題で2つ答えがある問題だと勘違いしていた」「問題文を微妙に読み落としていて答えを絞り切れなかった」といったミスがあり、時間をロスしてしまいました。
全体として、知識を問う問題は少ないものの表やグラフを処理する能力が求められる問題が多く、筆者のような新課程の「情報」を全く勉強していない人でもある程度は解くことができました。その分問題の数や文章量が多く、問題文の必要な情報を見落として時間をロスすると制限時間に間に合わないでしょう。
選択肢を絞り切れない、解答に必要な情報が足りないと思ったら、すぐに問題文を読み返すようにしましょう。
それでは各大問について詳しく見ていきます。
・第1問
パリティチェックや論理回路は、事前の知識がなくても解答に必要な情報が問題文に書かれています。論理的思考力を問う問題であると言えます。
ただ、16進数を2進数に書き直すなどの基数変換の処理は最低限できた方がよいでしょう。
・第2問
前半はQRコードについての問題でした。こちらも問題文や表をしっかり読めば解答できるでしょう。
問4「空欄に当てはまる適当な二次元コードを、後の解答群のうちから一つずつ選べ」のような指示を見落とすと、空欄と解答群が一対一で対応しているのか、二つ以上の空欄を満たすような解答があるのか分からず、正解が特定できなくなってしまいます。最低限問題文は読み落とさないように注意しましょう。
・第3問
「上手な払い方」をプログラミングで求める問題でした。この問題のプログラミングでは「共通テスト手順記述標準言語」(DNCL)が使用されています。ただし代入文が一般的なプログラミング言語と同様に「=」で書かれており、設定されているDNCLのルールとは異なっていました。こういった細かい部分で動揺しないように、PythonでもC言語でも1種類で良いので、実際にコードを書いて慣れておけば、臨機応変に対応できるでしょう。
・第4問
表やグラフなどのデータを読み解いていく問題でした。スマートフォン・パソコンなどの使用時間と生活行動時間の相関関係を調べる問題で、表や箱ひげ図、散布図などいくつかの方法でデータがまとめられています。基本的なグラフの読み方、特徴は必ず押さえておきましょう。自分でExcelにデータを入力してグラフを作成したり、Pythonでコードを書いてグラフを出力させたりするのも良いでしょう。
自分がまとめたいデータはどんなグラフを使うと見やすいのか、グラフのどこを観察すれば自分が見たい結果を得られるのか、とても良い練習になると思います。
3. おすすめ勉強法
●「大学受験パスナビ」を活用
大学受験情報サイト「大学受験パスナビ」では、「情報I」の対策として、月刊「螢雪時代」との連動企画“共通テスト「情報I」最速攻略法”の連載をしています。
*大学受験パスナビ:共通テスト「情報I」最速攻略法
「旺文社まなびID」の会員登録(無料)をすれば、公開されている全ての動画を見ることができます。図をたくさん用いてわかりやすく説明がされており、実際にコードを入力して実行した上での出力についても解説されているので、教科書を読んで分からなかったところを復習する時に活用すると理解が深まるでしょう。
●参考書で勉強
おすすめの参考書を2冊紹介します。
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『藤原進之介のゼロから始める情報1 : 学校で習っていなくても読んで理解できる』(KADOKAWA/中経出版)
「情報I」について初学者でも勉強できるように基本的な内容を中心に構成されており、一部発展的な範囲まで触れられています。Google ColaboratoryでPythonを使う方法を丁寧に解説しており、実際にプログラミングをしながら勉強できるのも魅力です。
『かやのき先生の情報Ⅰプログラミング教室』(技術評論社)
「共通テスト手順記述標準言語」(DNCL)でプログラミングを記述しているのが特徴です。どんな処理がされているかフローチャートで分かりやすく説明、繰り返し文は変数とその中身を表や図にまとめて細かく解説されています。
付録として、JavaScriptとPythonでDNCLのプログラミングを書き直したコードを掲載しています。
●生成AIの活用
自分でコードを書くことに自信がない場合は、「Chat GPT」や「Claude」などの生成AIが役立ちます。プログラミング言語についてある程度の理解がありさえすれば、こういう方法・順序で計算してほしい(例:〇〇ライブラリの〇〇関数を使って計算して)という指示に応じて、正しいコードを出力してくれる場合が多いです。
また、生成されたコードについて、自分でコードや値を書き換えたりして修正してみると色々な発見があり、自分でコードを書く時の参考になるでしょう。
ただし生成AIが出力したコードは間違っていることもあるため、鵜呑みにせずできれば動かしてみたり、複数の生成AIで出力したりなどして、正しいかどうか検証するのも大切です。
4. まとめ
共通テスト「情報I」について、現役東大生が試作問題を実際に解いてみた上で解説しました。
問題の分量が多く、「共通テスト手順記述標準言語」(DNCL)で書かれたプログラミングコードも登場し、受験者全体の平均点や得点分布は予想が難しいです。
ただ、初めて「情報I」を受験するという条件はどの受験生も同じ。怖がり過ぎず自分なりにできることを積み重ね、自信をつけて本番に臨みましょう!