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【単元総まとめ】「波動」分野の勉強法とレベル別おすすめ参考書7選

2024.07.24

大学入試対策で見落としがちな物理の「波動」分野。
「覚えることが多くて大変…」「イメージがうまく掴めない…」――そんなお悩みをこの記事で解消しましょう!
高校物理「波動」分野の特徴と勉強法、各単元のポイントをわかりやすく解説し、あわせて各学習段階に応じたおすすめ参考書も紹介します。

※この記事は2024年7月に書かれた内容を一部最新の情報にリライトして投稿したものです。

1. 「波動」のポイント

1-1. 波の性質

(1)波と媒質の運動
波にはいくつかの要素があります。波形の山の高さあるいは谷の深さを「振幅」、隣り合う山と山の間隔(波ひとつ分の長さ)を「波長」、山と谷の進む速さを「波の速 さ」といいます。

波にはいくつか種類があり、高校物理で取り扱われることが多いのが、横波と縦波です。波の振動方向が進行方向と垂直になるのが横波、波の振動方向が進行方向と同じなのが縦波です。
縦波は、媒質が密集した部分(密部)とまばらな部分(疎部)の繰り返しなので「疎密波」と呼ばれることもあります。なお、私たちが耳にする音(音波)は疎密波の一種です。

縦波・横波の違いを知る科学実験 NGKサイエンスサイト【日本ガイシ】

ここで、受験生が混乱しがちな「正弦波」の式を2パターンで解説します。

原点で時刻tにおける変位を(1)式のようにあらわすと、位置xの点には時間x/vだけ遅れて変位が伝わります。よって時刻tにおける位置xでの変位は(3)式のように計算できます。
波がx軸正の向きに進む場合、時刻t=0で位置xにおける波の式は(2)式のようになります。これは、t秒後にvtだけx軸正の向きに平行移動されるので、時刻tにおける位置xでの変位は(4)式のように計算できます。
実際の入試問題では、正弦波の式はさまざまな形をとって出題されます。波の要素についての式と、上記の方法で変形することを合わせて覚えておけば、どんな形が出てきても対応できます。
また、波は重ね合わせの原理が成り立ちます。波は正弦波の式の形であらわされることが多いので、三角関数の和を積に変換する公式が必要になることもあります。これも合わせて覚えておきましょう。

(2)波の伝わり方
波形が進行しない波を「定常波」といいます。定常波にはまったく振動しないと大きく振動するがあります。
波が媒質の端で反射する時、媒質が自由に振動できる自由端では、波は変位が変わることなく反射されます。一方、媒質が振動できない固定端では波の変位が反転して反射されます。

次に、平面上を伝わる波を考えましょう。
球面波の波源が2つある場合、波が重なって振動を強め合う点と弱め合う点に分かれます。この現象は「波の干渉」といい、「光」の単元でも登場する重要な概念です。
(画像を挿入)
波源が同位相の時、それぞれの波源からの距離の差が「波長の整数倍」になると振動を強め合い、距離の差が「波長の整数倍+半波長」になると振動を弱め合う形になります。

平面波が壁に反射して進む際は、入射角反射角が等しいという反射の法則が成り立ちます。また、屈折角については以下のような屈折の法則が成立します。

例えば、水面を進む平面波について、深い部分と浅い部分で波の進む速さが変わります。入試にも出題されたことがある話題なので、興味あればぜひチェックしてみてください。
また、波が障害物の背後に回り込む現象を「波の回折」といいます。身近な例として、防波堤に打ち寄せる海の波は、防波堤の隙間を通った後その背後にまで回り込んできます。

1-2. 音

音(音波)は、空気の振動が縦波となって伝わる疎密波です。振幅が音の大きさ、振動数が音の高さとして耳に伝わります。

マイクロフォンとオシロスコープを用いて音の波形を観察すると、上の図のような波形が観察できます。
横軸は時間、縦軸はオシロスコープが受け取る電気信号の電圧で、音の振幅に対応します。振幅が大きいほど音が大きく、振動数が大きいほど音が高く聞こえます。
音が空気を伝わる速さは常温で約340 m/sですが、音の速さは温度によっても変化します。また、音は空気のような気体だけでなく、液体や固体でも伝わります。液体や固体では、空気中より音が数倍速く伝わります
これらの性質を活かして超音波の反射を検出し、金属やコンクリートの構造に異変がないか調べる装置が建築分野などで使われています。
音も反射、屈折、干渉、回折をします。今や多くの人が使用するノイズキャンセリングイヤホンは、音の干渉によってノイズを消去しています。
振動数がわずかに異なる2つの音叉を同時にならすと音の大小が周期的に繰り返されて聞こえます。これを「うなり」といい、うなりの周期は2つの音源の振動数の差で求めることができます。

音源や観測者が動く場合、音源が近づくと音は高く、遠ざかると音は低く聞こえます。救急車のサイレンや電車に乗っているときの踏切の警報機の音など、どこかで耳にしたことがあるでしょう。この現象のことをドップラー効果といいます。
音源が動く場合と観測者が動く場合では、異なる原理で振動数が変化します。教科書を読んだら、それぞれの場合について自分で図を描いて導出してみましょう。
実はドップラー効果は音だけでなく全ての波に共通して起こります。光にもドップラー効果があり、我々から遠ざかっている天体を観測すると光の波長が本来より伸びて観測されます(この現象を「赤方偏移」といいます)。

1-3. 光

私たちが普段目にしているのは、「可視光線」という特定範囲の波長の光です。
可視光線の中では、赤が最も波長が長く、紫が最も波長が短いです。可視光線よりも波長の長い光を「赤外線」、波長の短い光を「紫外線」といいます。
赤外線は電子レンジのマイクロ波や通信で利用される電波、紫外線はレントゲンのX線など、さまざまな方法で利用されています。
光も同様に反射、屈折、干渉をします。光の干渉にはさまざまな例がありますが、光では光路長(光学距離)の差が「波長の整数倍」になると強め合い、「波長の整数倍+半波長」になると弱め合うことをおさえておけばよいでしょう。
光路長とは、光が屈折率の異なる媒質を進んだとき、真空でどれだけの距離を進んだことに相当するかを考える概念です。具体的には、光路長=屈折率×距離として計算します。

光は波長によって屈折率が異なるので、太陽光のような白色光をプリズムに通すと、屈折して色々な色の光に分けることができます。虹は空気中に浮かぶ水滴によって、太陽光が2回屈折することでできるものです。
光を波長によって分けたものを「スペクトル」といいます。スペクトルについては「原子」の単元で再登場する重要な概念なので、しっかりおさえておきましょう。

光が小さな粒子に当たると、通常の反射とは異なり四方に散る性質があり、これを「光の散乱」といいます。これは高校物理の範囲外になりますが、光の波長より小さい粒子による散乱をレイリー散乱、光の波長と同程度かそれより大きい粒子による散乱をミー散乱といいます。レイリー散乱は日中空が青く、朝焼け・夕焼けが赤いことに関係し、ミー散乱は雲が白く見えることに関係しています。興味があれば調べてみましょう。

光が小さな粒子に当たると、通常の反射とは異なり四方に散る性質があり、これを「光の散乱」といいます。これは高校物理の範囲外になりますが、光の波長より小さい粒子による散乱をレイリー散乱、光の波長と同程度かそれより大きい粒子による散乱をミー散乱といいます。レイリー散乱は日中空が青く、朝焼け・夕焼けが赤いことに関係し、ミー散乱は雲が白く見えることに関係しています。興味があれば調べてみましょう。

凸レンズ・凹レンズの2つのレンズについては、それぞれの性質をおさえて実像や虚像が作図できるようにしましょう
補足として、眼鏡として凸レンズは遠視(近くが見えない)の矯正に、凹レンズは近視(遠くが見えない)の矯正に使われます。また、顕微鏡や望遠鏡で対物レンズ・接眼レンズといったように2つ以上のレンズを使用しているのは、レンズを組み合わせることで像を歪ませることなく拡大できるからです。

光の回折・干渉の例は、「ヤングの実験」「スリット」「薄膜による干渉」「ニュートンリング」などたくさんあります。全て押さえるのは大変なので、それぞれどのような近似を用いるか、また実際の干渉の様子をポイントとして覚えておくとよいでしょう。
忘れがちですが、「薄膜による干渉」「ニュートンリング」では、屈折率の大きい媒質から入射し屈折率の小さい媒質との境界面で反射する場合、位相は変化せず、逆に屈折率の小さい媒質から入射し屈折率の大きい媒質との境界面で反射する場合、位相は半波長ぶん変化することに要注意です。

2. 波動の勉強におすすめの参考書7選

2-1. 定期テスト対策レベル

宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版 宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版
理科
物理
宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版
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鯉沼拓 為近和彦
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宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版』(学研プラス)

公式を分かりやすく説明するために図やイラストがふんだんに使われていて、「波動」分野を初めて勉強する際にも楽しく取り組めるようになっています。
別冊で問題集が付いていますが問題数自体は少ないため、物理現象や公式を理解するための参考書として使用しましょう。

 

漆原晃の物理基礎・物理〈波動・原子〉が面白いほどわかる本 : 大学入試 漆原晃の物理基礎・物理〈波動・原子〉が面白いほどわかる本 : 大学入試
理科
物理
漆原晃の物理基礎・物理〈波動・原子〉が面白いほどわかる本 : 大学入試
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漆原晃
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改訂版 漆原晃の物理基礎・物理〈波動・原子〉が面白いほどわかる本 : 大学入試』(KADOKAWA/中経出版)

公式の導出過程から問題を解くためのポイント、さらに演習問題を解説した構成になっています。
特に問題を解くためのポイントには重要な視点が簡潔にまとまっており、問題を解けるようにする参考書としておすすめの1冊です。

2-2. 大学入試 基本問題レベル

大学受験Doシリーズ 漆原の物理 明快解法講座 五訂版 大学受験Doシリーズ 漆原の物理 明快解法講座 五訂版
理科
物理
大学受験Doシリーズ 漆原の物理 明快解法講座 五訂版
0
漆原晃
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大学受験Doシリーズ 漆原の物理 明快解法講座 五訂版』(旺文社)

入試問題の頻出パターンをまとめ、どんな解法を使えばよいかがすぐ分かるようにまとめられています。物理の総合的な問題についても収録されており、演習を通して各単元の要素が絡んだ複雑な問題を解けるような力が身に付くでしょう。
公式についてはある程度定着していることが前提になっているので、「公式を覚えているけれど実際の問題を前にすると行き詰まってしまう…」という場合におすすめです。

 

物理のエッセンス力学・波動 物理のエッセンス力学・波動
理科
物理
物理のエッセンス力学・波動
4.5
浜島清利/著
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物理のエッセンス[力学・波動]-五訂版』(河合出版)

シンプルにまとまった図と丁寧な文章の両方で、例題が解説されているのが特徴です。最初にまとめられている解法の見通しを意識しながら、解法を身に付けるのがおすすめの使い方です。
受験生が抱きがちな疑問にも触れているので、基礎事項の理解も深まるでしょう。

2-3. 大学入試 応用・発展問題レベル

物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版 物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版
理科
物理
物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版
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中川雅夫 為近和彦
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物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版』(旺文社)

実際の入試問題を収録した問題集です。解答・解説が見やすくまとまっており、各問題の解説の始めには、使用する公式やミスしがちな気を付けるべき注意点に加え、設問にまつわる物理的事象の本質について触れられています。
「波動」だけでなく他の分野も、この1冊でまんべんなく勉強できます。

その他に大学入試対策レベルの問題集として、次の2冊をおすすめします。

良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版 良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版
理科
物理
良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版
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浜島清利
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良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版』(河合出版)

名問の森 物理[力学・熱・波動I] -四訂版- 名問の森 物理[力学・熱・波動I] -四訂版-
理科
物理
名問の森 物理[力学・熱・波動I] -四訂版-
0
浜島 清利
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名問の森 物理[力学・熱・波動Ⅰ] -四訂版-』(河合出版)

これらの参考書は以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
>> 【単元総まとめ】「力学」分野の勉強法とレベル別おすすめ参考書7選

3. まとめ

高校物理「波動」の特徴と各単元のポイントを解説しました。
「波動」でも他の分野と同じように、図を描いて何が起こっているか理解することがとても重要です。
勉強した分だけ身近な例と結びつけることができ、より勉強が楽しくなる分野なので、余裕があれば日常生活に関わる応用問題についても考えてみましょう。入試対策のヒントになるかもしれませんし、何より物理の問題を解く実力がつくはずです。
「波動」の単元をマスターして、物理を大学入試での得点源にしましょう!

StudiCoサポーター I.T.
東京大学理科一類 合格