令和3年度から始まった大学入学共通テスト(以下、共通テスト)。国公立大学を一般入試で受験する場合はほぼ必須で、「共通テスト利用方式」という形で私立大学も一部導入している、受験生にとって大変重要な試験です。では、共通テストを受験するにあたって、どのような対策に取り組めば良いのでしょうか?
やみくもに各科目の過去問を解く前に、共通テストで高得点を取るためには、いくつか注意しなければならない点があります。まずは、共通テスト対策にあたって知っておきたいポイントを押さえておきましょう。
※この記事は2021年12月に書かれた内容を一部最新の情報にリライトして投稿したものです。紹介するレポートには旧版のものも含まれています。
1. 共通テストで押さえるべきポイントは?
1-1. 共通テストの“クセ”を知ろう
共通テストには他の試験とは異なる特徴があり、点数を取るためにはそれらに慣れることが必要になります。その共通テストの“クセ”とも言える特徴には、主に《選択肢・解答の導き方》と《出題形式》の2つがあります。
まず《選択肢・解答の導き方》の特徴については、共通テストの解答方法が選択式のマークシートであることに由来します。選択式の解答方法である以上、やはり記述式とは異なったアプローチをする必要があるでしょう。
特に「数学」や「理科」の問題では、数式や計算を用いて正答を導くという点は記述式と同様ですが、最終的には選択式あるいは穴埋めの形で解答することになります。それには、出題側が提示する解法や立論に則らなければならないという制約があります。
また《選択肢・解答の導き方》としてもう1つ、選択解答式の試験であれば共通の注意点ではありますが、特に共通テストの「英語」「国語」「地歴公民」科目の選択肢は、消去法でしっかりと見極める必要があります。
共通テストの選択肢は巧妙に作られているので、限られた時間の中で“ひっかけ”の選択肢に騙されないようにしなくてはなりません。特に「正しいものを選べ」なのか「誤っているものを選べ」なのかには気をつけたいところです。解答する時には「なぜその他の選択肢ではないのか」を明確に意識しましょう。
《出題形式》の特徴としては、「数学」の問題選択や「地歴公民」科目の問題文読解など、共通テストを戦略的に解く上でポイントとなるものが挙げられます。
各科目別の特徴については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、合わせて参考にしてください。
>> 共通テスト対策《科目別》の攻略法! ~各科目の“クセ”を掴んで得点力を磨く~
1-2. 時間配分に注意しよう
共通テストの試験時間は以下の表の通りです。
教科 | 科目 | 試験時間 |
国語 | 「国語」 | 90分 |
地理歴史 | 「地理総合、地理探究」、 「歴史総合、日本史探究」、 「歴史総合、世界史探究」、 「地理総合、歴史総合、公共」 |
1科目:60分 2科目:130分 (解答時間120分) |
公民 | 「公共、倫理」、「公共、政治・経済」、 「地理総合、歴史総合、公共」(再掲) |
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数学1 | 「数学1A」、「数学1」 | 70分 |
数学2 | 「数学2BC」 | 70分 |
理科1 | 「物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎」 | 1科目:60分 2科目:130分 (解答時間120分) |
理科2 | 「物理」、「化学」、「生物」、「地学」 | |
外国語 | 「英語」【リーディング】 | 80分 |
「英語」【リスニング】 | 60分 (解答時間30分) |
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「ドイツ語」、「フランス語」、「中国語」、「韓国語」 | 80分 | |
情報 | 「情報I」 | 60分 |
※2025年度からの変更点・「国語」の試験時間が60分から70分となり10分延長。現代文2問(100点)、古文1問(50点)、漢文1問(50点)から現代文3問(110点)、古文1問(45点)、漢文1問(45点)に配点・構成が変更。
・「数学2BC」の試験時間が60分から70分となり10分延長。4問から6問に解答問題数が増加。
・「情報I」が新たに追加。
教科 | 経過措置科目 | 試験時間 |
地理歴史 | 「旧世界史A」、「旧世界史B」、 「旧日本史A」、「旧日本史B」、 「旧地理A」、「旧地理B」 |
1科目:60分 2科目:130分 (解答時間120分) |
公民 | 「旧現代社会」、「旧倫理」、「旧政治・経済」、 「旧倫理、旧政治・経済」 |
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数学1 | 「旧数学1A」、「旧数学1」 | 70分 |
数学2 | 「旧数学2B」、「旧数学2」、 「旧簿記・会計」、「旧情報関係基礎」 |
70分 |
情報 | 「旧情報」 | 60分 |
問題を解く時間のみならず、見直し・マークシート記入の確認時間も取りたいところなので、大体5分くらい余らせることができれば精神的にも余裕ができます。
過去問や模試を使って練習する時には、大問ごとに時間を設定する、自分が解きやすい順番で大問を並べ替えるなど、試行錯誤しながら自分の最適な解答ペース・手順を決めておくと、本番でも大きなミスをしにくくなります。
1-3. マークミスをしないために
共通テストは導入が決定した当初、「国語」と「数学」の一部に記述式解答の問題を課すという構想がありましたが、そのどちらもが取りやめになり、従来のセンター試験と同様にマークシートによる選択式解答の問題のみになりました。
マークシートを用いた共通テストの解答では、マークミスに気をつけなければなりません。たとえ正しい解答を導くことができていたとしても、マークをする時に間違えてしまえば、それは誤答になってしまいます。また、マークする場所が1列ずつズレてしまっていた……なんてことも絶対に避けなければなりません。時間的な制約のあるテストの中で、いかに正確に速くマークすることができるかがキーになります。
そこで、マークミスを防ぐためにおすすめの方法を紹介します。
- 大問ごとなど数問まとめてマークする。
- まとめてマークしたら、最後にマークした問題番号と解答用紙の番号が合っているか確認する。
- 解答する問題を飛ばして空欄にする時は、指を使うなどしてどの欄を空けておくのかしっかり確認しながら、続きをマークする。
この方法であれば、「解く」作業と「マークする」作業を分けられるのでマークがズレにくくなります。解く問題を飛ばす時には、特にミスが起きやすくなるので注意が必要です。最初は時間がかかってしまうかもしれませんが、問題演習と一緒にマークシートを使った解答にも慣れておきましょう。
1-4. 受験全体のことを考えて計画を立てよう
共通テストでは、多くの人が複数科目を受験しますが、得意・苦手どちらの科目も含まれていることが多いでしょう。その場合、科目全体の合計得点でいかに最大の点数を出すかが大切になってきます。
また、大学によっては配点に偏りがあるところもあります。国公立大学の二次試験や私立大学入試と科目が重複する・しないも重要なポイントとなります。そういった受験全体のことも考えて計画を立てることが、志望校合格を掴み取る上で重要になるでしょう。
共通テストを他の試験と切り離して考えるのではなく、共通テスト対策の勉強で得た基礎的な学力の上に、二次試験や私立大学入試で必要となる応用力を積み重ねていくイメージで学習しましょう。
2. 参考書を使った学習で力をつけよう
共通テストで高得点を目指すためにまず必要となるのが、教科書レベルの基礎的な知識と解答力です。参考書はその知識と技能を磨き、共通テスト本番で発揮できるようレベルアップするために使います。
また、共通テスト対策用の参考書には、解答に必要な知識を獲得することを目指すものと、本番の形式で練習を積むことを目的にしたものがあります。
共通テストに必要な知識を獲得するための参考書には、例を挙げると、『共通テスト 一問一答』シリーズ(ナガセ)などがあります。
『共通テスト 日本史B一問一答【完全版】』(ナガセ)
『生物基礎 一問一答【完全版】』(ナガセ)
本番の形式で練習を積むことのできる参考書の例には、『大学入学共通テスト 実戦対策問題集』シリーズ(旺文社)などが挙げられます。
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『大学入学共通テスト 英語 リーディング 実戦対策問題集 改訂版』(旺文社)
これらの参考書は、過去問や予想問題集などと異なり、単元・ジャンルごとに内容が分類されているため、自分が必要な分野をピックアップして学習できます。苦手単元の集中的なトレーニングなどにも有効でしょう。
高校で使用していた参考書なども活用しつつ、共通テスト対策に関しては自分に足りていない部分を補う形で参考書を購入・活用しましょう。
3. 共通テストの過去問・予想問題を使った対策について ~いつから?何回分?~
3-1. 共通テストの問題演習は「いつから?」
共通テストの過去問は、基本的には受験学年(通常であれば高校3年生)の夏〜秋あたりから始めることをおすすめします。
多くの場合、いきなり過去問を用いた対策をするよりも、ある程度まで知識を得てから過去問の演習に移るほうが得策です。ただ、現時点でどのくらい点数が取れるのかを知るために、学習が未完成の状態で、一度過去問を解いてみるのもよいでしょう。自分に何が足りないのかを最初に知っておくことで、その後の勉強を効率的に進めることができます。
対策が遅すぎて間に合わなかったり、あまりに早すぎて本番前に感覚を取り戻すのに時間がかかってしまったり、知識不足で過去問を使った学習による効果が上がらなかったり、――他の試験の対策に影響が出ても良くないので、各科目で「共通テストの過去問がある程度解ける」ような力がついていたら、本格的に過去問の演習を始めましょう。これはつまり、各科目の得意・不得意によって、過去問を使った対策を始めるべき時期が異なることもあるということです。
3-2. 共通テストの問題演習は「何回分?」
共通テストの過去問は科目にもよりますが、5〜8回分くらい解いておくと安心です。
「国語」や「数学」のように解くのに慣れが必要な科目や、時間配分に気をつけたい「英語」などはそれより少し多くても良いかもしれません。数だけこなして復習を怠っては意味がないので、5〜8回分を2周3周する気持ちで取り組みましょう。
共通テストの過去問は、「赤本」と言われる『共通テスト過去問研究』(教学社)シリーズの他、「大学受験パスナビ」※などの受験情報サイトでも手に入れることができます。
4. まとめ
共通テストに向けて知っておきたいポイントを紹介しました。
共通テストの基本情報や全体的な攻略法に関しては、以下の4点を押さえておきましょう。
- 共通テスト特有の“クセ”を知った上での対策が必要。選択肢に注意。
- 時間配分に注意する。
- マークミスをしないための工夫をおこなう。
- 受験全体のことを考えて計画を立てる
これらのポイントは共通テスト対策の基本となるので、過去問や参考書で各科目の勉強を本格的に始めた後でも常に頭に入れておいてください。
次に参考書と過去問を用いた勉強のポイントを振り返っておきましょう。
- まずは教科書・参考書で解答に必要な知識を獲得し、本番形式で練習を積むことのできる参考書で問題演習をおこなう。
- 共通テストの過去問演習は受験学年(通常であれば高校3年生)の夏〜秋あたりから始める。
- 共通テストの過去問は「追試」を含めて5〜8回分を2周3周する。
共通テスト各科目別の特徴と対策法については、こちらの記事でまとめています。
>> 共通テスト対策《科目別》の攻略法! ~各科目の“クセ”を掴んで得点力を磨く~
科目別の対策を進める時にはぜひ参考にしてください!