多様化する大学入試において、入試方式の決定は高校生にとって関心の高いテーマのひとつ。
一方で、種類や情報の多さから、「そもそもどのような入試方式があるのかわからない」「いつまでに、どのように決定すればよいのだろう?」といった悩みも多く聞かれます。
本記事では、各入試方式の種類やメリット・デメリット、入試方式を選択する上でのポイントや注意点を解説します。
※後編記事では、各入試方式で大学受験に挑んだ現役大学生の体験談を紹介しますので、こちらもあわせて参考にしてください。
>> 【入試方式選択・後編】いつ・どのように決めた?大学受験における入試方式選択の先輩体験談
1. 大学受験における入試方式の種類
各入試方式の概要をはじめ、実際に選択した際のメリット・デメリットを紹介します。
一般選抜以外の入試方式について、スケジュールなど詳しい概要については、旺文社が運営する大学受験生向けサイト「大学受験パスナビ」の記事も参考にしてください。
*大学受験パスナビ:総合型選抜・学校推薦型選抜〈合格ナビ〉
1-1. 一般選抜
◎概要
基本的に学力を測るペーパーテストのみで合否が決まる入試方式です。試験の種類としては、共通テストや大学ごとの個別入試が挙げられます。
私立大学であれば、日程がかぶらない限り複数の大学を併願可能であることも特徴です。
【メリット】
・学力のみで評価されるため、対策方法が比較的シンプル(勉強量や成績など)
・共通テスト利用、外部試験導入型などさまざま受験方法を利用でき、併願もしやすい
・他の入試方式とは異なり、模試などで合格可能性や自分の実力を把握することができる
【デメリット】
・他の入試方式と比べ、併願が重なると受験費用が高くなりやすい
・他の入試方式と比べ、受験日が遅いため対策期間が長期化しやすい
・本番一発勝負の試験が多いため、特にプレッシャーがかかる場合もある
1-2. 学校推薦型選抜/指定校推薦
◎概要
大学が指定した高校のみから出願ができる推薦型選抜です。対象となる大学・学部・人数の枠は学校・年度によって異なり、自分の通っている高校・受験年度に、志望する大学の推薦枠がある場合のみ応募することができます。
出願にあたり「評定平均4以上」など、成績に一定の基準が設けられるケースが多いです。その大学に出願するには、まず校内選考を突破して学校からの推薦をもらうことが必要です。
校内選考において主な評価方法は内申点で、面接対策、志望理由書の作成も必要となります。
【メリット】
・進学先が一般選抜よりも早く決まるため時間に余裕ができる
・校内選考を突破すると、合格がほぼ内定する
・一発勝負ではなく、高校生活での成績を評価してもらえる
【デメリット】
・自分が行きたい大学・学部の推薦があるとは限らない
・その年の受験枠の数・他の応募者の内申点といった、不確実な要素に合否が左右されるケースもある
・合格してからの過ごし方によっては、他の入試方式での受験者と入学後の学力に差がついてしまう場合もある
・もし推薦枠を獲得できなかった場合、他の入試方式に切り替える必要がある
1-3. 学校推薦型選抜/公募推薦
◎概要
大学が指定する基準を満たしていれば出願できるため、指定校推薦と異なり高校における人数制限はありません。
選考では主に、高校での内申点、志望理由、面接が課されます。加えて、大学によっては小論文、プレゼンテーション、学習計画書等が課される場合もあります。その他、共通テストなどの学力試験を課す大学もあります。
総合型選抜との共通点が多く、学校推薦型選抜の指定校推薦との区別が紛らわしいため、各入試方式との違いという観点から、メリット・デメリットを整理します。
◎指定校推薦との違い
【メリット】
・指定校推薦は私立大学からの募集が中心であるのに対し、公募推薦は国公立大学でも実施されている
・高校内での枠の争いはないため、近くのライバルとのしがらみや精神的負担は少ない
【デメリット】
・高校単位での選考がない分、一般入試と同じように倍率が高くなる傾向にある
◎総合型選抜との違い
【メリット】
・総合型選抜よりも倍率が低い傾向がある
【デメリット】
・総合型選抜よりも、内申点等の出願条件が厳しい傾向がある
・合格したら必ずその大学に入学しなければならない場合もある(併願や滑り止め受験などが難しい)
・出願条件で内申点が必要になることが多い
【その他】
・通っている高校の学校長の推薦が必要
1-4. 総合型選抜
◎概要
大学が求める学生像(アドミッション・ポリシーを参照)に合う受験者を選抜する入試方式です。
評価基準は、基本的には志望理由書・小論文・面接からなりますが、大学によって基準や選考方法が異なり、その組み合わせも多岐にわたります。
文科省により、旧AO入試から総合型選抜への移行にあたり、評価基準において、少なくとも1つは共通テスト、英検のスコアなどの学力要素が要件となりました。
【メリット】
・進学先が一般選抜よりも早く決まるため時間に余裕ができる
・競技経験やプレゼンテーションなど、学力以外の実績や能力を生かすことができる
・小論文や面接などが課されるため、対策過程で大学で学びたいことを明確にすることができる。(入学後も目的をもって勉学に取り組みやすい)
・他の入試方式との併願も考慮することで、受験の機会を増やせる
【デメリット】
・大学間の併願が不可能な場合がある。可能な場合でも、各大学のアドミッションポリシーや受験方法が異なるので、大学ごとに独自の総合型選抜対策を進める必要がある。
・資格や実績が必要な場合があり、高校1年生やそれ以前から受験計画を立てることが必要になる場合もある
・面接やプレゼンテーションなど、必要な対策が多岐にわたる
・入試に失敗したら一般選抜に切り替えなくてはいけない
2. どのように・いつ入試方式を決める?
2-1. どのように入試方式を決める?
入試方式を決めるにあたり、まず以下の点を押さえておきましょう。
・志望大学や学部を決めてから入試方式を検討する
・各入試方式と自分の相性を確認する
そもそも大学によって入試方式の選択肢が異なるため、自分の志望を定めた上でその大学の入試情報を調べることが大切です。
例えば、国公立大学においては、一般選抜の枠が多く、その他の入試方式は枠が狭いケースが多いです。私立大学でも、学部・学科によって受験可能な入試方式が異なる場合もあるため、必ず大学だけでなく、学部・学科単位まで入試情報を確認するようにしましょう。
また、自分と各入試方式との相性を確認することも大切です。
各入試方式の特徴(受験科目数・入試時期・面接や小論文の有無など)と自分の個性や得意・不得意を照らし合わせ、「自分の力を最大限発揮できる入試方式はどれか」を念頭に置いて戦略を立てましょう。
ここで注意するべきポイントは、「この入試方式なら志望校ではなくとも合格できそう」と、「志望校」ではなく単に「大学」に合格すること自体を目的として、入試方式を決めないことです。
例えば、学校推薦型選抜の指定校推薦において、志望校ではないものの、推薦が取れる見込みが高い大学に決めてしまうというケースが挙げられます。
志望校ではなかった大学に進学すると、「入学後になってから学びたいことが学べなかった」「大学の雰囲気と合わなかった」など、ギャップを感じてしまうことが多いです。せっかく努力して入学したのに、意欲を持って大学生活を送ることができないのはつらいですよね。
どの入試方式を使うかは志望校に合格するための手段の1つに過ぎないので、その入試方式で合格することが目的にならないように気をつけましょう。
2-2. いつ入試方式を決める?
複数の現役大学生に入試方式を決めた時期を聞いたところ、「2年生の春」「2年生の夏」「3年生の夏」など複数が挙がり、中には「もっとさまざまな入試方式について調べておくべきだった」という後悔も聞かれました。
必ずしも早いうちから1つに絞る必要はなく、低学年時から各入試方式の情報収集をして、選択肢を広げておくことが大切です。
一方で、入試方式によっては、内申点や特定の資格をはじめとした実績など、低学年時からの活動が必要になることもあるため、長期的な計画を立てたほうが良い場合もあります。
自分が興味のある大学の入試方式については、早いうちに一度逆算して計画を立ててみるのが良いでしょう。
3. 現役大学生に聞いた!入試方式選択のヒント
各入試方式での大学受験を経験した現役大学生の先輩たちから、大学生になった今だから感じる、各入試方式の利点について聞きました。各入試方式での経験が大学生活にどのようにつながっているのかも聞いてみましょう。
後半では、どの入試方式がどのような受験生に向いているかについてもアドバイス!
3-1. 大学受験で身についた力・大学生活に活きていること
〈一般選抜〉
他の入試方式と比べて入試の実施時期が遅いので、学力だけでなく継続して勉強する力や精神力も鍛えられます。年単位の勉強となるため、目標に向けて長期的な計画を立てる力も身につくでしょう。
大学生活においても、資格取得や就職のための筆記試験など、試験に向けて長期的に勉強をする機会があります。一般選抜での経験や、受験勉強を経て身についた学力が直接役に立つでしょう。
〈学校推薦型選抜〉
大学入試期以前から高校の定期テストを副教科までまんべんなく対策する必要があるため、幅広い範囲に対しコツコツ計画を立てて勉強する力が身につきます。また、低学年時からの成績も評価対象になるため、部活等ほかの活動と並行して勉強するといった“両立”のためのバランス能力もポイント。
大学に入っても学期ごとに定期試験があり、レポートやテストが課される授業がほとんどなので、複数の授業についてバランスを取りながら、コツコツ努力する能力が役立つでしょう。
〈総合型選抜〉
プレゼンや小論文が課されることが多く、自己表現力が身につきます。
大学では高校のように授業を一方的に受けるような学習よりも、レポートや発表をはじめ、自らの考えを表現するような能動的な学習が中心となります。そのため、総合型選抜で身についた力は大学での学びをはじめ、その後の就職活動でも役立つでしょう。
3-2. 各入試方式、どのような人におすすめ?
〈一般選抜〉
他の入試方式と異なり、評価基準が学力のみに絞られているため、「1つの物事に集中して取り組みたい」という人におすすめです。
また、合格最低点や模試の判定など、評価基準が比較的はっきりしているため、対策する上でわかりやすい指標が欲しい人にもおすすめです。
〈学校推薦型選抜〉
内申点のように過去の実績が考慮されるため、一発勝負でなく長期的な努力の過程も評価対象になります。
そのため、コツコツ積み重ねるのが得意な人、低学年時から学校の授業をしっかり聞いて、定期テストでの成績を高くキープしてきた人におすすめです。
〈総合型選抜〉
課外活動など学業以外の経歴も生かしたい場合におすすめです。
また、大学の理念や特色について理解した上で、自分をアピールする機会が多いため、行きたい大学、大学でやりたいことがはっきりと決まっている人におすすめです。
4.まとめ
大学受験における各入試方式のポイントをまとめます。
◎一般選抜
学力テスト一発勝負の、評価基準が一番シンプルな入試方式。
◎学校推薦型選抜/指定校推薦
低学年時からの頑張りが評価される、積み重ね型の受験スタイル。
◎学校推薦型選抜/公募推薦
総合型選抜、指定校推薦との共通点・相違点を比較して検討するのがおすすめ。
◎総合型選抜
志望大学とのマッチングが重視される入試方式。大学によって評価基準もさまざま。
入試方式が多様化する現在において、どのように大学の受験方法を決めていくかは、志望校合格に向けて重要な選択になります。
大学入学後の自分をイメージしながら、この記事や周りの先輩の声も参考にしつつ、自分にとって最適な入試方式を選びましょう!