大学入試における一般選抜の併願校選択は、志望校選びと比べると情報収集などを後回しにしがちですが、実は志望校選択と同じくらい重要なテーマ。自分にとって最適な併願校を選択することができれば、結果的に第一志望大学の合格にも近づきます!
「どのように併願校を決めたらよいかわからない」「一般選抜の中でも入試方式が多様化しており、どれを使えばいいのかわからない」――このようなお悩みを解決する、併願校選択のポイントやロールモデルを紹介します。ぜひ併願校選びのヒントにしてください。
1. 併願校はどのように決める?
1-1. 難易度
併願する大学を決めるにあたり、まずは自分の実力と照らし合わせて、「チャレンジ校」「実力相応校」「安全校」といった3段階のレベルの大学を、ひと通り網羅してリストアップすることが、大学受験でのセオリーとされています。
チャレンジ校については必ずしも受験する必要はないですが、自分の実力よりも一段階上を目指すことで学力の底上げにつながるため、目標に置いておくことをおすすめします。
「チャレンジ校」のめやすは「実力相応校」の偏差値+5以内、「安全校」は偏差値-5以内と言われています。
1-2. 志望校との相性
併願校選択にあたって、難易度と同じくらい「第一志望校との相性」は非常に重要なポイントです。
入試の出題傾向が大きく異なる場合、併願校の対策が勉強時間を圧迫してしまうことも……。
大学受験の最終目標は、あくまで第一志望校に合格することです。入試問題の傾向をはじめ、入試科目・配点などが志望校と重なるかどうか十分に比較した上で、受験する併願校を検討しましょう。
1-3. 入試科目
特に理科・社会といった選択科目については、同じ大学でも学部によって受験可能な科目が異なるケースが多いです。
例えば、同じ早稲田大学でも個別入試の社会科目について、法学部は日本史・世界史・政治経済を選択できるのに対し、文学部等では日本史・世界史のみの選択に限られます。
大学だけでなく、必ず学部・専攻単位で情報収集をおこなうようにしましょう。
1-4. 受験日程
併願校をある程度決めたら、各大学の受験日を確認して入試期間のスケジュールを立て、入試日・時間の重複がないか確認しておきましょう。
入試日程が連続する場合は、そのぶん体力的・精神的な負担が増えるため、「試験日の連続は最大3日まで」などと自分の体力・集中力と相談して調整しましょう。
反対に、志望校の受験日まで期間が空く場合は、試験慣れのために受験校を追加するのも良いでしょう。「大学入試」という雰囲気に慣れて本番で緊張し過ぎないようにするためにも、志望大学・志望学部の受験日前に1~2回、本番で実力を発揮できなかった時のことも考えて、後に1回程度併願校を用意できると理想的です。
また、併願校に合格できた場合、入学金を支払う必要があるケースも出てきます。入学金の支払い期限が第一志望校の合格発表以降の大学・学部を併願できると、経済的にも安心です。
1-5. 併願校の数
受験する併願校の数は人によってさまざまですが、第一志望校を含めて4~8校の受験が一般的です。併願校を増やす場合は、デメリットについても十分に確認しておくようにしましょう。
●メリット
・受験のチャンスを増やすことができる
・安心感を得られる
●デメリット
・対策に時間が奪われる
・受験費用がかかる
・結果によっては精神的負担が生じることもある
2. 一般選抜の入試方式
特に私立大学においては入試方式も多岐にわたり、1大学・1学部に対して複数の入試方式で併願することも可能な場合があります。
多くの大学で採用されている代表的な入試方式を3つ紹介します。
・個別入試
学部ごとに問題が異なる一番オーソドックスな入試方式です。他の入試方式と比べ募集人数も多いので、志望度が高い場合は優先的に受験することをおすすめします。
そのぶん個別の対策が必要になるため、志望校以外はどの大学を個別入試で受験するか優先順位をつけるのがよいでしょう。
・共通テスト利用入試
共通テストのみで合否が決まる単独型と、共通テストに加えて個別入試を課す併用型があります。
単独型の場合、「受験校に出向かなくてよい」「個別に入試の対策をしなくてよい」という点がメリットですが、そのぶん倍率が高くなる傾向があります。
共通テストの受験を必要とする国公立大学を志望する場合に親和性が高いと言えますが、この入試方式を主軸に置く場合、共通テストでうまくいかなかった場合のリスクも考えておく必要があります。
・英検利用入試
利用できる級や出願基準は大学や学部によって細かく異なりますが、英検2級もしくは準1級を基準としている大学が多いです。
個別入試における「英語」が免除、あるいは得点換算されるなどの優遇があり、英語以外の受験科目に注力できるといったメリットがあります。
3. 【私立大学】先輩の体験談
一般的に私立大学の場合、同じ大学・学部でも、入試方式を変えて複数回受験できることが多いです。そのため、志望度が高い大学は複数回の受験も視野に入れてみましょう。
3-1. 「多様な入試方式を最大活用!」(Y.K 早稲田大学文学部)
(1)利用した入試方式
個別入試・英検利用型入試・共通テスト利用入試・全学部統一入試・得意型入試
(2)進学先以外の受験校
明治大学、中央大学、立教大学、法政大学、國學院大學、東洋大学
(3)受験校・入試方式をどのように決めたか
浪人はしないと決めており、また大学の志望順位を決め切れていなかったため、興味のある大学はなるべく受験することにしました。大学7校につき入試方式を変えて各校平均2~3回 受験しました。
例:個別入試、共通テスト利用入試、英検利用型入試併願など
(4)受験校の対策について
受験校が多かったので、秋以降の勉強はほぼ毎日過去問演習がメインになりました。各大学の過去問は、少なくとも5年分ほど解いたと思います。
土日は難易度が高い志望校の過去問、平日はそれ以外の大学の過去問といったサイクルを、9月頃から繰り返していました。
12月頃から共通テスト対策もおこないましたが、個別入試の方が定員数が多く、そのぶん倍率が低かったので個別入試の対策として各大学の過去問演習を最優先にしていました。
(5)併願・入試方式のよかった点
「たくさん受験のチャンスがある」ということで精神面のお守りになりました。同じ大学でも複数の入試方式で受けたため、受験1回ずつの精神的プレッシャーが和らいだと思います。
(6)併願・入試方式で後悔した点・注意点
かなりの回数受験したため、受験費用がかさんでしまいました。また、最大3日連続で受験することもあったため、計画段階で体力面を考慮することも大切だと感じました。
勉強面においては、複数の大学を受ける場合、それぞれの過去問をしっかり解く時間を確保しないと共倒れするリスクがあると感じました。
私の場合は受験校が多く過去問演習にかなりの時間をとられたため、夏までには基礎を固めておく必要がありました。
3-2. 「大学でやりたいことを軸に志望校を決定!」(K.S. 早稲田大学スポーツ科学部)
(1)利用した入試方式
個別入試、共通テスト利用入試
(2)進学先以外の受験校
青山学院大学、立教大学、明治大学、日本大学、帝京大学
(3)受験校・入試方式をどのように決めたか
大学で競技チアリーディング部に所属すると決めていたため、競技チアリーディング部が存在する大学を調べました。また、現役で進学したかったため、安全校も含めてどの大学も共通テスト利用と個別試験を両方受験し、受験枠をできるだけ増やしました。
(4)受験校の対策について
多くの大学を受験しましたが、第一志望以外に熱意があまりなかったため、第一志望の対策がほとんどでした。
他の大学は各受験日の2週間前から過去問を解き始め、それぞれ5年分の過去問を解きました。
(5)併願・入試方式でよかった点
受験校が多かったため、精神的に安心できました。
(6)併願・入試方式で後悔した点・注意点
受験費用がかなり高くなってしまったことです。また、受験日が続くことがあり、体力的に後悔しました。
4. 【国立大学】先輩の体験談
一般的な国公立大学入試では、5教科7科目の共通テストと記述がメインの二次試験が課されます。
私立大学とは大きく試験傾向が異なるため、併願校に特化した別の対策が必要になります。そのため、併願校については志望校との相性を考慮して数を絞る戦略をとるケースが多いでしょう。
4-1. 「第一志望の大学に集中!!」(I.T 東京大学理学部)
(1)利用した入試方式
個別試験・共通テスト利用入試・一般入試(国立前期)
(2)進学先以外の受験校
慶応義塾大学、東京理科大学
(3)受験校・入試方式をどのように決めたか
国立大学の第一志望は決めていたので、私立大学は自分の得意科目を使うことができる大学を選びました。私大受験の負担が少なくなるように、私立一般は1校のみに決めていました。共通テスト利用での受験は各大学の受験会場に行かなくても受験できるのがメリットだと感じ、受験しました。
(4)受験校の対策について
東京大学は二次試験の配点が高く、共通テストではある程度点数が取れればよいと考えていたので、なるべく二次試験のための勉強に時間をかけるようにしていました。
共通テスト対策を始めたのは秋頃で、本格的に対策をしたのは共通テスト直前の1~2週間だけです。
二次試験対策は、苦手な英語と高得点を取るのが難しい理科を重点的に勉強していました。
私立大学はいくつか受験する大学・学部に候補がありましたが、過去問の難易度や合格点を考慮して受験校を決定しました。秋頃に候補の私大の過去問を解いてみて受験校を決定して、直前に2~3年分の過去問を解きました。
(5)併願・入試方式でよかった点
第一志望校の対策に時間をたっぷりかけられたことが良かったと思っています。
地方の高校から都内の大学を受験すると前日に近くのホテルに泊まらなければならず、私大をいくつか受験する場合はホテルで長く過ごすことになる場合もあるでしょう。慣れない土地で、しかも受験を控えた状態で緊張したまま過ごすのはとても大変だと思うので、受験校は慎重に選ぶと良いと思います。
(6)併願・入試方式で後悔した点・注意点
私立大学について調べる時間をもっととっておけばよかったと後悔しています。受験生になる前から自分の興味分野について詳しく勉強しておいて、受験校を選ぶ際にはそれぞれの学部・学科でどんな研究をしているかまで調べておくと、受験勉強のモチベーションにも繋がるでしょう。
また、東京大学は二次試験で使う科目が多いことが私大受験でも強みになったのですが、第一志望の大学の受験科目が少ないと同じような戦略で受験をするのは難しいです。自分の第一志望の大学・学部の受験科目や配点に合わせた戦略を立てるとよいと思います。
5. まとめ
大学入試の一般選抜における併願校は、結果的に第一志望校の合否にも影響を与えることがあるため慎重に選択するようにしましょう。
「一般入試」とひとくくりで言っても、入試の種類や方式はさまざま。同じ大学のなかでも学部によって出題傾向が異なるといったケースもあります。しっかりと情報収集をおこない、地に足ついた併願対策を進めることが大切です。
先輩からのアドバイスも参考にしつつ、自分にとって最適な受験計画を立てましょう!
*志望校選択や受験生活については、これらの記事も参考にしてください。