多くの大学に存在しており、受験生の立場では、大学選びや学部検討の際に目にする機会も多い「教育学部」。
「教育学部って学校教員になるための学部でしょ?」「私は教師になるつもりはないし関係ない」と思っていませんか?――実は「教育学部」の進路には、学校教員以外の選択肢もたくさんあります。学科や専攻によっては、意外にも教員免許の取得を課していないところも。
教育学部ひとつとっても多様な学問や研究分野があり、卒業後の進路も人によってさまざま。また、文系・理系問わず進学できる大学が多く、間口が広いことも魅力のひとつです。
実際に教育学部に通う現役大学生が、大学での学びや学生生活・進路状況などを、実際に通っているからこそ分かる視点で紹介します。現時点で教育学部への興味がある・ないにかかわらず、この記事を読んで、ぜひ学部選択の検討候補に入れてみてください!
1. 大学の教育学部とは?
一般的に「教育学部」に対しては、どのようなイメージが持たれているでしょうか。教育学部は文字通り「教育」について学ぶ学部です。ただ、この「教育」という言葉の捉え方は、一般に思い浮かぶであろう「教えること」だけではありません。
教育学部に対する思い込みを解くところから始め、大学の教育学部で学ぶことのできる内容をのぞいてみましょう。
1-1. 教育学部=将来は教員とは限らない
「教育学部を卒業したから教師になれる/教師にならなければならない」といったことはありません。教育学部は大きく分けて教員養成課程と、教員免許取得を必須としない課程(いわゆる“ゼロ免課程”)の2つがあり、前者は教員免許取得が卒業要件となっていますが、後者はそうではありません。
“ゼロ免課程”で卒業すると、教員免許を改めて取得しない限り、学校教員になることはできません。一般的なルートで就職をするか、大学院に進学するかといった選択になります。
また、教員養成課程から卒業したとしても全員が学校教員になるわけではなく、就職の道を選ぶ人もいます。
では具体的に教育学部ではどのようなことが学べるのでしょうか?
1-2. 教育単科大学と総合大学の教育学部
教育学部を有する大学の中には、一般的にイメージされる総合大学に加え、教育学部しか存在しない「教育単科大学」と呼ばれるものが存在します。教育単科大学はほとんどが国公立大学ですが、私立大学も一部存在します。国公立大学は以下の11校となっています。
〈国公立教育単科大学〉
・北海道教育大学
・宮城教育大学
・東京学芸大学
・上越教育大学
・愛知教育大学
・京都教育大学
・大阪教育大学
・兵庫教育大学
・奈良教育大学
・鳴門教育大学
・福岡教育大学
教育単科大学は教育学部に特化した大学のため、総合大学の教育学部に比べ、より「教育」という専門に特化した授業を受けることができます。ただ、教育学部しか存在しないため、教育以外のジャンルを扱った授業は総合大学に比べて少なく、学びの範囲が限定的になるという面があります。
「教育という分野以外にも関心がある」「まだ学びたい分野が漠然としている」という場合は、総合大学の教育学部をおすすめします。
ひとつ注意しておきたいことは、「教員養成課程が存在するか」ということです。学校教員・教師の道を志している人は教員養成課程への進学が必要となっています。特に総合大学の教育学部の中には、教員養成課程を設置していない大学もあります。
総合大学の教育学部にしろ、教育単科大学にしろ、自分の興味や将来を見据えて大学・学部を選ぶことが重要です。
2. 東京学芸大学 教育学部の課程・専攻
教育単科大学の一例として、「東京学芸大学 教育学部」の課程・学科・専攻について紹介します。
東京学芸大学は、学校教員の養成を旨とした東京の「師範学校」系を前身とした国立大学で、教育について専門的かつ幅広い学問領域を掌る、日本の教育大学を代表する学府です。学部は現在「教育学部」のみですが、学部を構成する「課程」以下さまざまな学科に分かれており、多種多様な学びが展開されています。
学部は大きく分けて(1)「学校教員養成課程」と(2)「教育支援課程」(いわゆる“ゼロ免課程”)に分けられます。それぞれの特徴について説明します。
2-1. 学校教員養成課程
学校教員養成課程では、幼稚園・小学校の教員を目指す「初等教育専攻(A類)」、中学校・高校の教員を目指す「中等教育専攻(B類)」、特別支援学校の教員を目指す「特別支援教育専攻(C類)」、養護教諭を目指す「養護教育専攻(D類)」の4つの学類からなります。A・B類はその中でも「国語」「理科」などといった科目別に学科が分かれています。
教員免許取得が卒業要件となっており、授業研究や指導法、教育理論に至るまで教育者のエキスパートを育成する学科となっています。
2-2. 教育支援課程
「教育支援課程(E類)」は教員以外の立場や視点から教育を学ぶ学科です。
7コースあり、原則教員免許を取得することはできません。
●生涯学習・文化遺産教育コース
社会教育・地域教育などの「生涯にわたる学び」や文化財保護などについて学ぶ
●カウンセリングコース
公認心理師、学校カウンセラーなどを目指す
●ソーシャルワークコース
ソーシャルワーカー・スクールソーシャルワーカーを目指す
●多文化共生教育コース
異文化理解、マイノリティ支援について学ぶ
●情報教育コース
情報教育、ICT教育活用について学ぶ
●表現教育コース
学校教育現場における表現(音楽、演劇、美術など)を学ぶ
●生涯スポーツコース
スポーツを通して教育支援をおこなう人材の育成を目指す
7つのコースに分かれてはいるものの、「教育支援課程」という1つの組織として共通の授業があることも多く、様々な専門を持った人と関わる機会も多いです。
3. 教育学部生の卒業後の進路
気になる教育学部生の進路について紹介しましょう。さまざまな選択肢があるとは思いますが、大きく3つの方向に分けることができます。
3-1. 学校教員
教員採用試験を受けて学校の教員となることは、教育養成課程の学生が第一に選択する進路です。ただ、教員免許を取得してもこの道を選ばない学生も一定数存在します。
3-2. 企業就職
教育関連企業への就職や、ゼロ免課程でも専門性を活かし、企業へ一般就職するという道もあります。
大学の公式ウェブサイトなどで教育学部卒業生の就職状況を見ても、他大学・他学部と遜色ない結果であることが多いため、「教育学部は就職に不利」ということもないでしょう。ただ、教育単科大学の場合は他の大学に比べ、就職活動の情報が入手しにくいという欠点はあるかもしれません。
また、教員養成課程の学生が就職活動をおこなおうとすると教育実習の時期に重なってしまうため、両立がかなり難しいようです。ゼロ免課程であれば教育実習がない分、就職活動やインターンシップに時間を掛けることができます。
3-3. 公務員・国際機関
地方・国家公務員やNGO、JICAなどの国際機関に就職する人も多いです。
特にゼロ免課程は国際系や心理系の学科を有している大学が多いため、これらの専門職を選ぶ人も多いようです。
4. 教育学部の受験
教育学部の受験について他学部と大きく異なることはありませんが、大学によっては少し異なる対策が必要なところもあります。注意すべきは以下の2点です。
(1)二次試験の専門科目の配点が高い/二次試験が専門科目1教科のみのケースがある
特に教員養成課程は募集も教科別に分けられている学科が多いです。その科目が得意な受験生が集まってくるので、専門科目を極めることが大切です。
国公立大学を受験する場合はもちろん共通テストも必要。対策の両立が重要になってくるといえるでしょう。
(2)二次試験に面接が実施されるケースがある
将来の教育者を育成する教育学部では、学生の人柄を重視している大学も多いです。二次試験で面接を実施している大学もあるので、その場合は別途対策をしましょう。
対策自体は共通テスト後からでも問題ないとは思いますが、学校や塾の先生に対策への協力をお願いしておくと良いでしょう。
5. まとめ
教育学部には多様な学問領域や進路があるということを、わかっていただけたでしょうか。
ただ「教える」だけでなく、文系・理系問わず、教育に対するアプローチ方法はさまざまです。
この記事で少しでも興味が出てきたら、各大学のウェブサイトや大学受験情報サイト「パスナビ」などをのぞいてみましょう!
大学には他にもさまざまな学部があります。学部についてもっと知りたい方は、これらのStudiCo記事も参考にしてください。
>> 「経営学部」ってどんな学部?経営学部に関する疑問に現役大学生が回答!
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