大学受験の学習計画は、定期試験対策で通用してきたような2週間程度のものとは異なり、期間が大幅に長いという特徴があります。目標達成までの期間が長期にわたる場合、計画の作成とその着実な実行が成功のカギとなります。
同時に、計画とは思い通りにはいかないことが多いのも事実。その現実を受け入れ、どのように修正・対処していくかという柔軟な姿勢を身につけることも大切です。
長期戦となる大学受験の勉強プランについて、“リアル”な戦術と最後まで継続して走り抜くためのコツを紹介します。
1. 大学受験合格のための計画を立てる
大学受験の勉強計画に限らず長期的なプランを遂行するには、「計画を立てる」ことと、「計画通りにはいかなかった時に臨機応変に対応する」ことの2つの行動を両立させることが肝要です。
まずはオーソドックスな「計画の立て方」を学び、その上で「勉強は計画通りにはいかない」という現実を前提に、そのことにどう向き合い対応すればよいのかという、より実践的な戦術を身につけるとよいでしょう。
では早速、大学受験勉強における「計画の立て方」から見ていきましょう。
1-1. 大学受験における目標を設定する
まずは、最終的なゴールである「目標」を設定します。受験勉強においては、「志望校の合格」ということになるでしょう。それが決まれば、その大学の入試日(や大学入学共通テスト)が計画の期限となります。
ただ、そもそも「自分の志望校」がまだ明確に決まっていない場合もあることと思います。志望校選びには、受験生向けに各大学の特徴を紹介しているようなWebサイトを活用するのがおすすめです。
例えば「大学受験パスナビ」では、全国の大学を対象に、自分の希望する条件を入力してそれに合致する大学を検索したり、さまざまな特徴(例えば「海外への留学生数」など)をもとに比較検討したりできるので、自分にぴったりの志望校を見つけるのに便利です。
1-2. 今の自分の実力=現在地を知る
さて、ゴールが定まったなら、次は現時点での自分の実力を把握することです。
その際には、直近で受けた模試での「偏差値」が参考になります。ただし、受験まで半年以上ある時期に受けた模試の偏差値については、あくまでも「今時点」の大まかな位置として捉えておきましょう。
偏差値は、その時の模試を受けた集団全体の中での自分の相対的な位置を示しているに過ぎません。入試直前までは偏差値が良くても悪くても必要以上に気にかけず、自分がなすべきことの実行に専念しましょう。
ここではあくまで、「自分の今の実力=現在地」を知るために、模擬試験の結果という客観的なデータを用いることができる、という認識ができればOKです。
1-3. 目標実現のためのタスクを決める
さて次は、「何をすべきか」を具体的に決める段階です。
基本的には、「目標を達成するのに必要な力」から「今の自分の実力」を引き算すれば、やらなければならないことが沢山あることに気づくはずです。
具体的な勉強法は、まさに今も読んでいるこの「StudiCo」でも、様々な記事を紹介しています。どんな参考書や問題集をどんな時に使うべきか、どんな勉強法が有効かなど、効率的な学習のヒントとなる情報をキャッチして、今後の受験生活にぜひ役立ててください。
さて、「やるべきこと=タスク」が沢山あることに気が付いたなら、今度はそれを入試までの期間に割り振ってみましょう。その際、優先順位を慎重に考慮するのがポイントです。
先におおまかな計画を立てて、それを細分化していくという順序で決めていきましょう。
まずは1ヵ月ごとの計画を立て、それを1週間ごとに学習する内容に割り振り、さらにその内容を1日ごとの課題に振り分けていきます。この作業を経て、「学習計画」が“完成”します。
なかなか大変かもしれませんが、受験勉強のスタートには不可欠なプロセスですので、まずは自分の受験計画を立ててみてください。
2. 大学受験成功のための計画を実行する
計画が固まったら後は実行あるのみ・・・ですが、受験勉強は“長期戦”です。
通常、受験のための学習計画は半年~1年くらいになることが多く、スタートを切るのが早い人で2年越し程度のプラン、部活などの都合でスタートが遅くなる人でも、最低でも3~4カ月のプランは必要です。つまり、どんなに短くても受験勉強は数カ月には及ぶものだということです。
この期間に複数の科目を同時進行で勉強するわけですから、初めに立てた計画通りに進まないといったことは往々にして発生します。
受験勉強は、計画通りにいかなくて当然。まずはこの現実を受け入れましょう。
重要なのは、
- 計画にあらかじめ余裕を持たせておくこと
- 計画の修正の仕方を知っておくこと
この2点に尽きます。
2-1. 計画通りにいかない2つの要因
学習が計画通りに進まないとき、その原因は次の2つに大別できます。
要因(1)急な用事・病気などやむを得ないこと
要因(2)タスク消化に要する時間の見積もりの甘さ
要因(1)はほぼ不可抗力で、また影響も軽微です(受験直前を除く)。
仮に、急な用事で丸1日勉強できなかったとしても、それは単に「計画が1日分遅れた」という影響しか与えません。1日くらいならそのまま計画を進め、どこかのタイミング(あらかじめ設けておいた予備日など)で調整すれば済む話です。
注意しなければならないのは、要因(2)の方です。
こちらの例を挙げれば、「英単語を1日に50語覚えられると思ったが15語が限度だった」「1週間でヨーロッパの中世史を復習するつもりだったが終わらなかった」「数IAの問題集を2週間で解き終えるつもりだったが半分にも達しなかった」などです。
たいてい人は計画を立てる際、できるだけ多くのことを短時間でこなしたいという願望から、全てが順調に進むことを前提にして過密なスケジュールを組み立てがちです。
しかし、計画が過密であればあるほど、ほんの些細な要因によって計画が狂い、その立て直しが必要になり大きなタイムロスが発生します。
したがって、最初はむしろ、計画にある程度余裕をもたせ、進めていくうちに「もっと早くできる」「もっとたくさんできる」ということがわかってきた時点でペースを早めたり、演習量を増やしたりといった調整を図るのが合理的です。またその方が、気持ちの面でも焦らずに済みます。あらかじめ計画に「復習のための時間」や「計画の遅れを取り戻すための予備日」を盛り込んでおくのは、長期プランの設計においてきわめて重要です。
2-2. 計画が狂ってしまった時にすべきこと
計画が予定通りに進まず遅れてしまうことがわかった時、主な対処法が2つあります。
1つは直ちに計画を立て直すというもの。
例えば、「英単語を1日に50語覚えられると思ったが実際には10個が限界だった」など、自分の見積もりが大きく外れていた場合は、直ちに計画を練り直す必要があります。
一方で、ひとまず静観する(=特に何も変えない)という方法も有用です。実は、これこそが長期プランを遂行するためのカギなのです。
再び英単語を例に取れば、「1日に30語覚える計画だったが、月曜日は25語しか覚えられず、火曜日は26語、水曜日は20語で、木曜日は29語だった」と仮定しましょう。確かに4日とも目標を下回っているので、自分の実力を超えた計画を立ててしまったのは事実です。しかし、それほど大きく外れているわけではありません。
多少計画より遅れてはいるものの、そのズレがさほど大きくない場合、ひとまず1日単位での遅れは気にせず、「月間目標に対してどのくらい遅れているか」「最終的なゴールに向けて間に合いそうかどうか」のように、より長期的な視野に立って冷静に見つめてください。その上で、そのズレが大して重大ではないと判断したら、あまり神経質にならずにそのまま継続するのが賢明です。
なぜなら、計画を立て直すこと自体が相当な時間と手間のかかる作業(=勉強時間のロスにつながる)であることに加え、勉強とは、習熟度が深まるにつれ、より短時間でできるようになるものだからです。
先ほど挙げた英単語の暗記などはまさにその例で、語彙が増えれば増えるほど新しい単語を覚えるのが楽になりますし、暗記作業そのものにも慣れていきます。当初は1日に30語暗記するのが無理だったとしても、1カ月後には、1日に30語以上覚えられるようになっている可能性も十分にあります。もしそうなれば、最初の軽微な遅れは後の段階で挽回できることになります。
このことは、他の科目にも当てはまることです。
2-3. 計画通りにいかない時に「すべきでない」こと
思うように自分の計画通りに進まない場合でも「計画通りに進まないのは私がだらしないからだ」と落ち込む必要はありません。「受験勉強は、計画通りにはいかなくて当然」ということを思い出しましょう。
気分が沈むと、学習効率の面でもネガティブに作用し悪循環が始まります。
しかし、それ以上にすべきでないことがあります。「私は何としてでもこの計画通りにやるんだ」と頑張り過ぎて、睡眠時間や休憩時間を削ってまで勉強をすることです。
睡眠時間を削って朝方まで勉強していると、なんとなく「いかにも受験生っぽい!」という感覚が味わえ、奇妙な喜びがあるかもしれませんが、体には悪影響しかもたらしません。睡眠不足は、日常生活における注意力や記憶力を低下させ、気分を落ち込ませ、将来的には病気のリスクを高めることにもつながります。睡眠を削るくらいなら、計画を多少遅らせる、あるいは見直すことを強くおすすめします。
また、適切な休憩時間は、集中力の維持に欠かせないものです。休憩を取らずに勉強し続けても、効率の悪い学習がだらだらと続くだけで、かえって逆効果です。休息のための時間は適宜確保するようにしましょう。
3. 最後までやり抜くための3つのコツ
自分で立てた計画を、少しでも楽な気持ちで最後までやり抜くためのコツを3つ紹介します。
3-1. スケジュール管理を楽しいものに
長い受験生活では、ちょっとした楽しみ・喜びを自分で積極的に見つけていくことが大切です。
スケジュール管理も、自分が少しでも楽しめるように工夫してみましょう。
手帳が好きな人なら、雑貨店に行ってお気に入りのデザインの手帳を探してみましょう。その手帳を見たり、予定を書き込んだりするだけで、元気が出るようなものを選ぶのがおすすめです。計画の達成度などに応じて、いろいろなシールを貼り分けるのも楽しいでしょう。
パソコンが得意な人なら、エクセルなどを使って計画表を作成してみるのもよいですし、修正の必要が生じた際にも、楽にスケジュールの調整が可能です。
そしてもちろん、スマートフォンでスケジュールを管理するのもおすすめです。
スケジュール管理や、そのためのモチベーションアップに役立つアプリはたくさんあります。次の2つは特におすすめです。
●『Studyplus』
勉強のスケジュール管理機能や仲間同士で励まし合うSNS機能などを備えた、学習管理アプリの中で最も人気のあるアプリの1つです。
学習状況の記録や管理ができるのはもちろん、それを仲間と共有したり、Twitterと連携させたりという使い方もできます。
【ダウンロード】
・Apple端末(iPhoneなど)向け⇒『Studyplus』
・Android端末向け⇒『Studyplus 勉強を習慣化 無料アプリ スタディプラス』
価格:インストール無料・アプリ内課金あり
●『みんチャレ-ダイエットや筋トレ、運動、勉強などの習慣化アプリ』
「同じ目標の仲間とチャットで習慣化を目指す三日坊主防止アプリ」と銘打たれたこちらのアプリは、目標は共通でもお互いに素性の知らない5人でチームを組み、励まし合い、目標達成に向けてタスクを継続できるようにデザインされています。モチベーションアップを目的として、多くの受験生に愛用されています。
【ダウンロード】
・Apple端末(iPhoneなど)向け⇒『みんチャレ-ダイエットや筋トレ、運動、勉強などの習慣化アプリ』
・Android端末向け⇒『みんチャレ-ダイエットや勉強、ヘルスケアなどの習慣化・目標管理に人気の三日坊主防止アプリ』
価格:インストール無料・アプリ内課金あり
3-2. 日々の進捗状況を可視化する
時には立ち止まって、これまで自分がやってきた軌跡を振り返ってみるのもよいでしょう。例え前途は遠くとも、既に進んできた道のりがあるのも事実です。
そして、このことを日々、自分に言い聞かせておくことも大切です。なぜなら、入試当日、試験を前にして緊張している時、大きな心の支えとなるのは、「私はあれだけ勉強してきたんだ」という自信にほかならないからです。
毎日、計画の達成度をチェックし記録しておくことで、自分がどれだけ頑張ってきたかが可視化されます。たとえ計画通りに進んでいなかったとしても、何かしらの勉強をしていれば、その分は身になっているはずです。
3-3. ポジティブな側面に注目する
努力が偏差値に表れるまでには時間がかかるかもしれませんが、今までは知らなかったことを知ることができたり、少し前までできなかった問題が解けるようになっていたり、日々確実に一歩一歩前進している事実を、その都度噛みしめて勉強に臨むようにしましょう。
むしろ、そのような小さな前進の積み重ねでしか、大きな目標の達成は期待できないと言っても過言ではありません。
偏差値という目で見える形に表れる、周りの人に褒められるといったことは嬉しいものですが、「今日も単語帳を1ページ覚えた」「今日取り組んだ数学の問題がすんなり解けた」など、自分だけが知っているような小さな前進を、自分で認められるようになれば、より強く大学受験に立ち向かうことができるようになるでしょう。
4. まとめ
この記事では、「志望校合格」という目標に向けたプランニングと、それを遂行するための心構えを紹介しました。
重要なのは計画することと、その計画に対する柔軟な修正能力です。時には振り返り、自分がこれまでやってきたことを再確認しましょう。
また、意識的にポジティブな側面に目を向け、「自分はこれだけの勉強をしてきたんだ」と自分が日々実行・継続できたことに自信を持つようにすることが、モチベーション継続のカギとなります。
この積み重ねこそが、試験本番で落ち着くための支えにもなることを信じて、長い受験生活を走り抜きましょう!