大学入試を意識したその日からコツコツと勉強を重ねることが大切ですが、特に入試本番の半年前、一年前からは、一気に受験モードを〈強〉レベルに切り替えることも必要です。
この記事では、受験勉強にこれから本腰を入れようという受験生、あるいはすでに本格的な受験勉強を始めている受験生に向けて、普段の生活から心と体を「受験モード」に切り替えるヒントを紹介します。
1. 大学受験でのモチベーション維持・向上
「あの大学に絶対に通いたい。合格したら、あれもできる、これもできる…。だから今は頑張ろう!」
長期にわたる受験勉強を乗り切るには、目標に向かって自分を鼓舞し続けることが欠かせません。しかし、このモチベーションを長い間、同じモードで維持し続けるのは難しいことですよね。志望校を決めた当初はやる気に満ちていたのに、だんだんと勉強が辛く感じてしまったり、勉強の進捗も滞り気味になったり、投げやりな気分になったり…。
そこでまずは、自分の将来のために、どのようにすればモチベーションを維持し高めていくことができるか、ということについて考えてみましょう。
1-1. 受験における目標を明確に定める
大学受験を成功させるには、「絶対に合格したい」という強いモチベーションが必要です。そのモチベーションを長期間にわたって維持するために、「明確な目標」を立てましょう。
受験において「明確な目標」を立てるというのは、自分の志望校を設定することにほかなりません。志望校が決まらないと受験勉強が始められないということはありませんが、志望校を早く決めた方が、勉強計画が早く立てやすく、日々の実行やその効果に大きな差が出てくると考えられます。
人間は、自分がどこに向かって進んでいるのかわからない状態ではモチベーションを保つことが難しく、逆に明確に方向が定まっていれば動きやすくなります。合格を実現するまで、受験生は自分で自分に指令するようなイメージを持つと良いでしょう。
したがって、できるだけ早い段階で、志望校の検討を開始し、模試などの結果も参考にしながら、目標となる志望校を決定しましょう。一度決めた後に、模試の結果や自分の気持ちの変化などに応じて目標を変更するのは、選択肢の多い大学受験においてそれほど問題にはなりません。
「あの大学に行きたいなあ」と自然と心に湧き上がるまで待つのは、あまり得策とは言えません。どの大学でどんなことが学べるのかなど、各大学の情報を積極的に調べて、まずは自分の目標を明確に定めることからスタートしましょう。戦略を練るのはそれからです。
1-2. 目標を実現するための計画を立てる
さて、目標が定まったなら、次はそれを実現するための計画を立てます。
計画作成の基本的な手順は、
- 目標(志望校合格)を定める
- その実現のためにおこなうべきこと(=タスク)を知る
- 期限までに残された日数で、タスクを分割する
というものです。
そして、このような長期にわたる「プロジェクト」では、まずおおまかな計画を考え、それを細かいプランに分割していくというのが鉄則です。
まずは「月単位」くらいの大きなまとまりで計画を立て、それを「週単位」、「1日単位」へと細分化していきましょう。それが終わったら、今度は「1日単位」の学習プランを見て、量的に実現可能かを考えます。
ここで注意したいのは、最初に立てる計画は、たいてい「詰め込み過ぎ」になってしまうということです。
日々の生活では、思わぬ急用が生じたり、体調を崩したりして、プランの進行が妨げられることがしょっちゅうあります。今までの定期試験対策などで経験したことを振り返ってみましょう。「今日計画していた勉強が全て終わった。しかもあと2時間余っている」なんてことはまれで、「今日やろうと思っていたことが全然終わらなかった…」ということの方が断然多かったのではないでしょうか。
しかし「計画はちょっとしたことですぐに狂うものだ」ということを知っていれば、あらかじめ予備日や復習日を盛り込んで、計画に余裕を持たせるという発想が生まれます。これは、効果的な計画作成の上で欠かせない知恵です。
1-3. 受験生活でスランプの時は…
長い受験生活においては「どうもやる気が出ない」「模試の成績が上がらず、勉強をするのがつらい」など、途中でスランプに陥る時期は、誰にでもあります。そのような時には、もう一度自分の目標を見つめ直してみましょう。
なぜ自分はその大学に行きたいと思ったのか、その大学に行ってどんなことをやってみたいのかなど、志望校を決めた当初の心境を思い返してみましょう。これは、長期間にわたってモチベーションを維持するのに大いに役立ちます。
「○○大学合格!」という目標そのもののみならず、それを目指す動機やその目標達成後の未来など、ポジティブな側面に意識をフォーカスすることで、「よし、もう一度頑張ろう」という気持ちが高まります。
モチベーションの低下や不安との向き合い方については、こちらの記事も参考にしてくださいね。
>> 受験勉強のモチベーションが下がったら・・・ ~身につけておきたい成功へのアティチュード~
2. 受験勉強環境の見直し
今まで、自分が勉強するための「時間」や「環境」には、さほど注意を払ってこなかったという人も多いかもしれません。しかし、受験勉強では、「いかに時間を捻出するか」「自分が一番集中できる時間帯はいつか」「自分が一番落ち着いて勉強できるのはどこか」といった、勉強のための時間や環境に意識を向けることも重要です。
2-1. 時間は自分でつくるもの
受験勉強が本格化し、少しでも勉強時間を増やしたいと思っても、1日が24時間であることに変わりはありません。
「時間は自分でつくるもの」とよく言います。
「時間がない!受験に間に合わない!」と焦る前に、自分の生活の中からなんとか勉強時間を捻出できないか、つぶさに検討してみましょう。
まず「朝の時間」。
午前中は集中しやすいため、勉強するのに向いています。「朝に強い」という朝型の人は、睡眠不足にならない範囲で起床時間を早め、家を出る前に1時間程度勉強してから学校へ行くというのもおすすめです。
次に「通学時間」。
電車やバスに乗って通学する人は、その待ち時間や乗車時間にちょっとした勉強ができます。また、徒歩で通学している人も、イヤホンで英語を聞くことなどが可能です。
学校にいる間も、工夫次第で自分の勉強時間を増やすことができますね。
普段から少し早く登校して教室で勉強するのもよいですし、「学校の休み時間」に勉強することも、日によって試してみてはいかがでしょう。
もちろん、休み時間は本来休憩のための時間ですから、しっかり休むことが大切ですが、例えば40分ある昼休みのうち5分を勉強時間に充てる、あるいは授業間の休み時間でも、ほんの2、3分だけ割いて英単語や古文単語の暗記に充てる、といったことは可能です。
このように、「限られた時間の中でいかに勉強時間を最大化するか」ということを常日頃から意識するようにしてみましょう。
なお、受験勉強における時間の上手な活用法については、こちらの記事も参考にしてみてください。
>> 限られた時間を最大限に活かすには? 大学受験生のための時間活用術
2-2. 受験勉強の「環境」を整える
勉強しやすい「環境」を整えることも、充実した受験生活を送るには欠かせない条件です。
ポイントは、「場所」そのものだけでなく、周囲に人がいるかどうか、騒音はないか、明るさは十分か、温度は適切かといった、さまざまな要素を含む「環境」をトータルで考えることです。
勉強に集中しやすい環境は人によってさまざまです。全くの無音状態がよいという人もいれば、周囲に適度な雑音があった方がよいという人もいます。個室に1人きりがよいという人もいれば、かえって周りに家族がいるリビングの方が捗るという人もいます。温かい室温が好みの人もいれば、少し涼しいくらいの方が頭が冴えるという人もいるでしょう。
「自分にとって一番集中できるのはどのような環境なのか」を知ることが肝心です。
「今日は特に勉強が捗ったな」と思った日は、その環境を見回してみてください。場所はどこか、明るさや気温、音、時間帯、そのときの自分の体調などをよく覚えておくようにしてください。これを何度か繰り返すと、自分が集中しやすい環境の条件が見えてきます。
そして、そうした条件がわかるようになると、いつでも自分の集中しやすい環境を再現できるようになります。あるいは、自宅以外の場所でも、どのような場所なら自分が集中できそうかを予測しやすくなります。
勉強場所に関するアドバイスや環境を整えるヒントについては、こちらの記事も参考にしてください。
>> 勉強場所、どうしてる? 自宅・図書館・カフェ…それぞれの意外なメリットとデメリット
2-3. その場でベストを尽くす
勉強のための「環境」にこだわるのが大切である一方、「こだわりすぎ」は逆効果をもたらす可能性があるので注意しましょう。ほんの些細なこと(かすかに人声が聞こえる、ちょっとだけ寒く感じる、など)でも、「勉強の邪魔だ」とイライラして勉強が進まなくなってしまっては本末転倒です。
多少の騒音なら耳栓をしてやりすごす、少し寒いなら上着を着るなど、ちょっとした工夫でそれらを許容できる環境にまで改善できるようであれば、必要以上に場所を変えるのは避けた方がよいでしょう。場所を移動すること自体がタイムロスになるためです。
さらに言えば、入試本番は、必ずしも自分にとって理想的な環境で実施されるわけではありません。たとえ理想の時間帯や環境が確保できなかった場合でも、その時その場でできるベストを尽くす。そうした柔軟な姿勢が、最終的にはより多くの収穫をもたらしてくれるはずです。
3. 「休む」ことの大切さ
入試本番までの長丁場を戦い抜くには、心身を適宜休ませることも大切です。目の前のタスクだけにとらわれることなく、受験生活をより長いスパンで俯瞰的にとらえ、日頃から自分の心と体のコンディションに気を配る習慣をつくりましょう。
3-1. 十分な睡眠時間を確保する
人間にとって一番重要(にもかかわらず軽視されがち)な休息が「睡眠」です。睡眠不足は、人体にさまざまな悪影響を及ぼします。
注意力や集中力が低下し、気分や食欲も落ち込みます。疲れも溜まりやすくなり、慢性化すると免疫力が低下して病気にかかるリスクも増します。
また、受験勉強において非常に重要な、脳の「記憶」のメカニズムにおいても、記憶がしっかり定着するのは、睡眠中だということがわかっています。
受験勉強はもちろん、その後の人生においても、長い目で見れば睡眠不足は何のメリットももたらしません。必ず十分な睡眠時間を確保するように心がけましょう。
3-2. 「勉強」と「休憩」を交互に
人間の集中力には限度があり、通常40~50分程度で集中は切れ、長くても90分が限界と言われています。したがって、3時間も4時間も連続で勉強し続けるのは、効率的な学習という観点からすれば逆効果でしかありません。
1日に長時間、集中力をキープしたまま勉強するには、適宜休憩を挟んで、脳を休ませる必要があるのです。
学校の時間割を考えてみてください。
授業50分⇒休憩10分⇒授業50分⇒休憩10分・・・・・・
このように、必ず休憩が挟まれています。受験勉強でも、勉強と休憩を交互に繰り返すリズムを意識しましょう。
3-3. 積極的にリラックスする
何もしない・何も考えない、ただぼーっとする「休憩」も大切ですが、積極的に心身をリラックスさせる方法も知っておいて損はありません。
例えば、手軽にできる「ヨガ」です。特別なウェアや本格的なレッスンは不要で、思いついたらすぐに実践でき、心身をリラックスさせる効果があります。自分の部屋はもちろん、椅子に座りながらできるメニューもあるため、学校の教室でもできます。気張らず、手軽にできるヨガを紹介した、『自律神経どこでもリセット! ずぼらヨガ』(飛鳥新社)といった書籍も出ているので、興味があれば手に取ってみてください。
他にも、外の空気を吸い、体を軽く動かすジョギングや散歩もリラックス効果があります。少し汗ばむくらいの軽い運動であれば、心身共にリラックスすることができます。1日に何時間も机に向かう姿勢のままでいると、首や腰に負担がかかるので、こういった運動で体をほぐすのもよいでしょう。
入浴にもリラックス効果があります。シャワーだけで済ませるのではなく、浴槽でお湯に浸かり、しっかり体を温めることで、体の冷えが改善し免疫力も高まります。風邪などにもかかりにくくなるため、入試直前期は特におすすめです。
このような方法でリラックスしたあとに勉強を再開すると、再び高い集中力を発揮することができます。ただ「ダラダラする」のではなく、積極的に心身の緊張を緩める方法を身につければ、学習効率のアップにもつながるでしょう。
4. まとめ
普段の生活を見直して、より効率的に受験勉強を捗らせるための方法を3つの観点から見てきました。最後にそれぞれのポイントを振り返っておきましょう。 (1)モチベーションの維持・向上 (2)「時間」と「環境」を意識しよう (3)「休む」ことの大切さ
・目標を明確に設定しよう。志望校はできるだけ早い段階から検討を始めるべき。
・目標を実現するための計画を立てよう。ポイントはあらかじめ余裕を持たせること。
・スランプのときは、目標を見直してモチベーションを高めよう。
・勉強に活かせる時間は、日々の生活のそこかしこにある。スキマ時間を活用しよう。
・自分が最も集中できるのはどんな環境であるかを知り、それを整えるように努めよう。
・神経質になりすぎるのは禁物。その時々でベストを尽くせるように心がけよう。
・十分な睡眠時間の確保は必須。睡眠不足は「百害あって一利なし」。
・集中力には限界がある。勉強時間と休憩を交互に繰り返すリズムが大事。
・ヨガや軽い運動、入浴などで積極的に心身をリラックスさせよう。
志望大学に合格したいと決意したその日が、受験生活の開始日です。限られた時間と体力を本番までにどう使うかは工夫次第。目標に向かって、ひたすらまっしぐらに進めるのもこの時期にしか経験できないことです。
日々自分が合格に近づいている前向きなイメージを抱きながら、やるべきことをコツコツと実行していきましょう!