センター試験では世界史を選択するけれども、英語や数学、国語などの主要教科を優先していて、世界史の対策にはあまり時間をかけられていないという人も多いのではないでしょうか。世界史の勉強に多くの時間を割けない人、これから世界史のセンター試験対策を始めるという人向けに、センター試験の世界史で8割以上の得点を確保するための勉強法を解説します。
なお、センター試験の世界史には「世界史A」「世界史B」がありますが、この記事では多くの受験生が選択する「世界史B」の内容について扱います。無駄なく確実な必勝勉強法で合格点を確保しましょう。
1. センター試験「世界史」の特徴
センター試験の世界史は他の科目と同様、マーク式の問題です。
単純な正誤判定問題、2つの短文の正誤の組み合わせを選ぶ問題、年代に関する問題、図版や地図に関する問題、グラフの問題、空欄に適する語句の組み合わせを選ぶ問題などで構成されます。
以降、センター世界史の詳しい問題形式や留意すべきポイントについて解説します。
1-1. センター世界史の問題形式
例年、センター試験の世界史では、小問9題から成る大問が4題、計36問で構成されています。
国語や数学、英語とは異なり、世界史は大問ごとの問題形式の傾向が特に決まっていないという特徴があります。各大問で1つの大きなテーマが取り上げられ、それぞれの大問(テーマ)ごとに3つのリード文があり、それらを元に様々な問題が出題されます。
2019年度の本試験を例に取れば、第1問は「歴史的建造物・遺跡」、第2問は「記録や文字」、第3問は「国際関係」、第4問は「宗教と政治」がテーマとなっていました。
問題によっては、リード文の内容がやや難しく感じられるものもありますが、各設問は教科書レベルの知識で解けるようになっています。
1-2. センター世界史の平均点・目標点
36題の各小問の配点は各2点もしくは3点で、合計で100点満点となります。平均点は実施年度によって多少のばらつきはありますが、おおむね65点前後です。
では、センター世界史の目標得点はどの程度に設定すべきでしょうか。
「90点は取りたい!」「60点取れればいいかな」など、自分の得意・不得意や志望大学のレベルによって目標は様々でしょう。しかし、結論から言えば、センター世界史は100点(満点)を目指して勉強すべき科目だと言えます。
センター試験の世界史はあくまで基礎的な知識で対応できるため、100点を狙うことは現実的に十分可能です。また、100点を目指したからといって、本番の試験で必ず満点が取れるわけではありません。逆に「60点くらい取れればいいや」という意識で勉強していては、60点すら取れないリスクが高いのです。
もし、世界史がどうしても苦手で、「どうあがいても今から100点を目指すのは無理」という人は、80点を目標にしてみましょう。
1-3. センター試験は教科書レベル
センター世界史では、基本的な知識が「広く・浅く」問われます。そのため、教科書レベルの知識がしっかり身についていれば、確実に正解できる問題がほとんどです。
教科書の内容、特に太字の語句を中心に学習することによって、センター試験レベルの知識は十分身に付くでしょう。ただし、ここで注意してほしいのは、太字の語句“だけ”を覚えたというのでは不十分だということです。
重要人物や出来事の名称の暗記はもちろんですが、それに加え、その用語の表す内容や重要事項同士の因果関係を理解しておくことが肝心です。
1-4. 正誤判定問題に注意
センター試験はマーク式なので、記述式に比べて簡単だと思うかもしれません。しかし、付け焼き刃の知識では対応できないのが、センター世界史で最も出題の多い「正誤判定問題」です。
センター試験レベルの知識は頭に入っていても、いざ模試を受けたり過去問を解いてみたりすると、あまり良い点数が取れないという人も多いのではないでしょうか。そういう人は、正誤判定問題でつまずいているケースが多いと考えられます。
正誤判定問題では、4つの文の中から正しい内容あるいは誤った内容を選択します。
例えば、次の問題を見てください。
第2問
問1 下線部①(=デンマーク)に関連して、北海・バルト海周辺の歴史について述べた文として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①イングランド出身のクヌート(カヌート)が、デンマーク王となった。
②フランドル地方の都市は、イングランドから羊毛を輸入した。
③スウェーデン王グスタフ=アドルフが、ファルツ継承戦争(ファルツ戦争、プファルツ継承戦争)に参戦した。
④ジェームズ1世が航海法を制定し、オランダの中継貿易に打撃を与えた。
(センター試験世界史B・2019年・本試験)
基礎レベルの問題ですが、知識や記憶が曖昧だと意外と回答に迷うのではないでしょうか。
①のクヌート(カヌート)はデーン人(デンマーク地方のノルマン人)の王であり、イングランドを征服し、「イングランド王」となった人物です。つまり、選択肢では事実がすり替えられています。
③のグスタフ=アドルフが参戦したのはファルツ継承戦争ではなく三十年戦争です。同じ17世紀の戦争なので、迷ったかもしれません。
④の航海法を制定したのは、ジェームズ1世ではなくクロムウェルです。17世紀のイギリスについての正確な知識があれば誤った選択肢と判断できます。
正解は②で、毛織物工業が盛んであったフランドル地方の都市はイングランドから羊毛を輸入していました。
いずれも教科書に重要事項として記載されている内容ですが、あえて紛らわしく記述された選択肢に引っかからないようにするためには、知識の正確さが求められます。
1-5. 苦手分野を作らない
先ほども触れたように、センター世界史では幅広い地域・時代が出題範囲となります。そのため、世界史がそれほど得意でなくても基礎さえ押さえておけば十分高得点を狙うことができます。
その一方、学習がおろそかになっている分野があると思わぬ失点につながりかねません。
具体的には、受験直前に習うため対策が手薄になりがちな「近現代史」や後回しにされがちな「文化史」、地域で言えば「東南アジア」や「アフリカ」は苦手意識を持つ受験生が多いのが実情です。そのため、基礎に徹しつつも、時代・地域は網羅し、穴を作らない学習を心掛けましょう。
1-6. センター世界史で必ず出題される地図・図版
センター世界史で必ず出題されるのが、地図や図版などを用いた問題です。
図版について言えば、単なるリード文の「飾り」として掲載されることも多いのですが、答えを導き出すための重要な要素となる場合もあります。
例えば、次の過去問を見てください。
第1問
問3 下線部③(=華麗なルネサンス文化が花開くことになった)に関連して、次の文章中の空欄[ア]と[イ]の組み合わせとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
ルネサンス最大の人文主義者とされるエラスムスは、[ア]を著して、堕落した教会の権威を風刺した。彼の肖像画「エラスムス像」(肖像画省略)を描いたドイツの画家[イ]は、彼の紹介でイギリスに渡り、後に宮廷画家となった。
① ア-『愚神礼賛(愚神礼讃)』 イ-ホルバイン
② ア-『愚神礼賛(愚神礼讃)』 イ-ベラスケス
③ ア-『天路歴程』 イ-ホルバイン
④ ア-『天路歴程』 イ-ベラスケス
(センター試験世界史B・2016年・本試験)
「エラスムスが『愚神礼賛(愚神礼讃)』を著した」というのは基礎知識ですが、その肖像画を描いた画家の名前まで正確に答えなければならないという点でやや難問と言えます。しかし、ルネサンス期における重要人物の一人であるエラスムスは、通常、教科書で肖像画とともに掲載されており、そのキャプションにホルバインの描いたものであることが書き添えられています。
教科書や資料集の図版にしっかり注目する習慣が身についていれば、エラスムスの名と肖像画とともに「ホルバイン」の名も何度も目にしていたはずで、その記憶からこの問題で正解できたという受験生も多かったはずです。
確かにこの問題は比較的難易度が高いと言えますが、それでも教科書に載っている知識で解けるという点に変わりはなく、日頃の学習において図版にもしっかり注意を払うことの重要性がわかります。
地図の重要性は改めて強調するまでもありません。歴史上の主要都市の位置や名前を答えさせる問題はセンター試験でも頻出です。正確に把握しておく必要があります。
2. センター試験「世界史」の対策を知る!
ここまで、センター試験の世界史ではどのような問題が出題されるのかということについて見てきました。
以降は、対策として必要な勉強法についてレクチャーします。
2-1. インプット
まずは知識の「インプット」をおこないます。
教科書・用語集・「一問一答」問題集をひと通りそろえる必要がありますが、それでも基本は教科書を読み込むことです。学校や塾の教材を受験対策のベースにしてももちろん構いませんが、それらはセンター試験で求められる力と比べて高すぎるという可能性もありますので注意してください。
まずは教科書の太字レベルの項目を中心に、重要事項を頭に叩き込んでいきましょう。分からない事柄があればその都度、用語集で確認とフォローをしておきます。
一問一答形式の問題集も暗記の大きな助けになるでしょう。一問一答の使い方についてはこちらの記事に詳しいので参考にしてください。
>> 世界史の大学受験対策に必要な「一問一答」 ~効果的な使い方とおすすめ問題集5選~
知識のインプットの際に特に注意しなければいけないのは、用語の丸暗記に終始してはいけないということです。
前述した正誤判定問題を解けるようになるためには、それぞれの知識を、時代や流れ、因果関係の中で関連付けながら記憶することが重要です。
ある人物を覚えることを例に取れば、人物名を覚えるだけでなく、いつの時代の・どこの国・地域の人物なのか、その人物は歴史にどのような影響をもたらしたのか、ということまで踏み込んで覚える必要があります。
できれば、インプットの際には資料集も手元に置いておきましょう。資料集は掲載されている情報量が非常に多く、それらをすべて暗記する必要はありませんが、地図や図版を含む問題が頻繁に出題されるセンター世界史の対策としては、普段から資料集で地図・図版、代表的な美術品・工芸品、遺跡・建造物などをチェックしておくことがきわめて重要です。
さらに、資料集では、「○世紀の世界」といったように、時代別の勢力関係などを記した世界地図が載っているものが多いのですが、これもセンター試験対策に大変役立ちます。
なぜなら、センター世界史では「この時代に起きたこととして正しいものを選べ」のように、複数の地域における同時代の歴史知識がよく問われるためです。その時代における、おおよその世界情勢のイメージを描けるようにしておきましょう。
2-2. アウトプット
インプットと並行して「アウトプット」、すなわち問題集を使った問題演習も進めます。基礎レベルの問題集・センター試験形式の問題集・センター試験の過去問に取り組みましょう。
基礎レベルの問題集である程度知識が身についていることが確認できたら、センター試験形式の問題集に進みましょう。その際、問題集を解き終えた後に「解答・解説」をきちんと読んで復習することが重要です。
特に正誤判定問題では、曖昧な知識や勘で正解してしまうこともしばしばです。選択肢の記述のどの部分が正しく、どの部分が誤っているのかを1つずつ地道に確認していくことが実力アップにつながります。
マーク模試を受けた時も同様です。点数で一喜一憂することなく、「解答・解説」を丁寧に読み、解き直しまでおこなうことによって、模試を最大限に活用することができるのです。
高校3年生の秋~冬には過去問を徹底的に解き、知識が不十分だと思われる単元についてはインプットを怠らないようにします。過去問も模試と同様、解きっ放しでは意味がありません。間違えた箇所をいかに丁寧に復習するかが本番の点数を大きく左右するのです。
3. おすすめ参考書・問題集
続いて、センター試験の世界史対策に役立つおすすめの参考書・問題集を紹介します。
『高校とってもやさしい 世界史』(旺文社)
世界史が苦手な人でも勉強を進めやすいように作られた、書き込み式問題集です。地図に色を塗ったり空欄に用語を書いたりしながら取り組めるので、「教科書の文章が頭に入ってこない」「地理に弱い」という人でも無理なく学習できます。
教科書の重要箇所を分かりやすくまとめたものなので、これ1冊でセンター試験対策を全てカバーすることは難しいですが、授業についていけず困っているという人が知識を整理するのにはおすすめです。
『みんなのセンター教科書 世界史B[改訂版]』(旺文社)
こちらはセンター試験対策を目的とする解説書です。教科書の文章が分かりづらく頭に入ってこないという人は、本書を教科書代わりに使うのがおすすめです。地図が多く掲載されているため、センター試験で頻出の地図問題対策にもなります。
『解決! センター世界史B[改訂第3版]』(Z会)
単元ごとに2つのステップで構成されています。第1ステップではセンターで必要な知識がコンパクトにまとめられており、暗記(インプット)に役立ちます。第2ステップでは過去にセンター試験で出題された正誤判定問題が掲載されています。教科書でのインプットと過去問演習でのアウトプットを同時に進められる1冊です。
『30日完成センター形式世界史問題集』(山川出版社)
「30日完成」とあるように、30項目からなるセンター試験形式の問題集です。通史部分が26項目、テーマ史が4項目あり、通史を終えていなくても既習単元から順番に解くことができます。過去に出題された問題ではなくオリジナルの問題なので、過去問題集(「赤本」)と並行して受験直前期に取り組み、単元ごとの知識の定着度を確認するのがおすすめです。
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『センター試験過去問研究 世界史B (2019年版センター赤本シリーズ)』(教学社)
センター試験の過去問集、いわゆる「赤本」です。過去25年分のセンター試験の問題が掲載されています。傾向と対策をつかむために過去問演習は必須です。取り組む時期としては高校3年生の秋~冬が望ましく、全問解くのが理想ではありますが、他教科とのバランスからそれが難しいようなら、少なくとも10年分は解きましょう。ここでも、解きっ放しではなく、解答・解説をしっかり読むことが重要です。
『ボカロで覚える高校世界史 (MUSIC STUDY PROJECT)』(学研プラス)
タイトルの通り、初音ミクなどで有名な「ボカロ」による歌と映像で世界史を学べる異色の参考書です。12曲が収録されており、なかでも中国歴代王朝史の歌と映像はスタイリッシュで、中国史に苦手意識がある受験生にはおすすめです。世界史があまり得意ではないけれどボカロやアニメーションに興味があるという人は、本書を使って楽しく勉強することができるでしょう。
4. まとめ
センター試験の世界史で8割以上の得点を獲得するためのポイントをまとめておきます。
<正確で幅広い基本事項のインプット>
・センター試験は教科書に出てくる基本事項の知識で解ける。基本は100点(満点)を目指して勉強すべき。
・全てマーク式の選択問題。だからこそ、曖昧な知識では解けない。基本事項を、時代の流れ、因果関係の中で関連づけながら記憶すること。
・苦手分野を作らない。幅広い時代・地域から出題されるため、全て網羅し穴を作らないこと。特に「東南アジア」「アフリカ」「文化史」には注意。
・歴史上の主要都市の位置は必ず地図帳で確認。美術品、遺跡なども資料集で確認しビジュアルを覚えておくこと。
・複数の地域における同時代の歴史知識が問われる。各時代における世界情勢のイメージを描けるように。
<アウトプットで知識の確認>
・基礎レベル・センター試験形式の問題集とセンター試験過去問に取り組む。
・問題集を「解きっ放し」にしない。解説を良く読み込んで必ず解き直しもおこなうこと。
世界史で身につけた知識は大学入学後も役立つものばかり。ぜひセンター試験での得意科目にして、志望大学合格をぐっと引き寄せましょう。