「地理歴史」「公民」、いずれも複数の選択肢がある高校社会の科目を、どのような基準で選びますか?
「大学受験の入試科目で選ぶ」「暗記量の負担で選ぶ」「自分の興味で選ぶ」など、科目選択の基準はさまざま。
大学受験やその後の進路を考える上で後悔しないよう、高校での社会科目の選択が大学での学びにどのようにつながるか、StudiCo大学生サポーターによるレポートもぜひ参考にしてください。
1. 高校社会科の科目選択
1-1. 科目選択時の基本的な考え方
高校社会科目の履修選択は、主に大学受験で必要となる科目を軸に決めるケースが多くなります。通っている高校のカリキュラムにも拠りますが、一般的に高校1年生の秋から冬にかけて選択科目を決め、次年度・高校2年生の履修を春までに登録することが多いでしょう。
受験する学部が理系か文系かなどで、大学受験に必要な科目が変わってきます。文系は「日本史」と「世界史」、理系は「地理」など王道の選択方法もありますが、自分自身が興味を持てたり、得意と感じたりするかなどを総合的に考慮し、科目選択を判断することをおすすめします。
また、志望大学・学部が決まっている場合は、しっかりと大学のホームページを確認し、入試に必要な科目を確認しておきましょう。例えば、2023年度〈早稲田大学・文化構想学部〉の一般選抜では、社会科目として「世界史」「日本史」のどちらかしか選択できません。一方で〈早稲田大学・法学部〉では、「世界史」「日本史」に加えて「政治・経済」で受験するという選択肢もあります。
1-2. 新課程入試における注意点
2025年度以降は、新課程カリキュラムに対応した大学入試が始まります。特に社会科目「地理歴史」「公民」には、それぞれ大きな変化があるので注意が必要です。(2023年度・高校2年生以降の受験学年が対象となります)
まず「地理歴史」では、従来の「世界史A」「日本史A」を統合した「歴史総合」科目が置かれ、履修が必須となります。大学入試においても一部〈近現代〉の分野に限りますが、「世界史」「日本史」どちらの学習も必要となりました。共通テストでの科目構成に組み入れられているため、歴史系科目を選択する場合は念頭に置いておきましょう。
また、入試で選択科目とするかどうかは別に、「地理総合」も履修が必須となります。大学入試で歴史系・地理系のどちらを選択するかは、これら「総合」科目で学習する内容を参考にするのも合理的かもしれません。
次に「公民」では、従来の「現代社会」に代わり「公共」が新設され、履修が必須となりました。共通テストでは「倫理」「政治・経済」どちらを選択する場合でも「公共」がセットとなり、「公民」科目の受験において、「公共」の内容は必ず対策が必要となります。
*新課程入試の科目体系については以下のページも参考にしてください。
>> 旺文社教育情報センター「2025年新課程入試 共通テスト科目決定!」
2. 「地理歴史」科目別のメリットと注意点
後悔しない科目選択のために、現役大学生が社会科目ごとの選択メリットと注意点を紹介します。
また、大学入学後に高校社会科の学びがどのように結びついてくるか、大学生たちの体験談も交えて解説するので参考にしてください。
*日本史・世界史選択については、こちらの記事も参考にしてください。
>>日本史・世界史、どっちを選ぶ?大学受験での選択におけるそれぞれのメリットと注意点
2-1. 世界史探究
世界史を選択するメリットの1つは、出題で問われる知識のレベルが日本史に比べて浅いことです。世界史ではさまざまな国が登場するため、それら全ての国について詳細な知識はあまり問われず、主要な部分について、比較的広範な知識を問う出題が多いです。広く情報をインプットするための勉強が必要な科目で、一度知識を覚えてしまえば確実に点が取りやすい科目だと言えるでしょう。
一方で、覚えなければならない項目数が、日本史の1.3倍ほどと言われています。また、覚えなければならない用語の多くがカタカナであることや、「ルイ14世」・「ルイ15世」など、一見区別がつきにくい人物が多く登場することで混乱しやすいのも、世界史を選択する上での注意点と言えるでしょう。
~大学での学びとのつながり~
大学では高校世界史の知識をベースに進める授業もあります。特に世界史の近代史は、現代につながる社会構造を理解することが必要不可欠ですが、高校時代に学んだ知識を応用し、大学での授業・研究でさらに深めることができます。国際関係の学部では世界史の知識が必須であるほか、他学部でも世界史に触れる機会は多くあります。
またグローバル化した昨今の社会においては、「多角的な視点」が重要になっています。世界史は、日本史と同様に時代感覚をつかむだけでなく、世界の国・地域について知ろうとする時や、自分とは異なる価値観や文化を理解する時など、大学生活の「はじめの一歩」を後押ししてくれます。さらにはその後の社会人生活でも、世界史から学んだ知識や考え方を活かすことのできる場面も多いでしょう。
(StudiCo大学生サポーター 青山学院大学 文学部史学科 M.N.さん)
*StudiCo関連記事
>> 大学受験の世界史ってどんな科目?勉強法の基本ルールと参考書・問題集の使い方
>> 世界史の大学受験対策に有効な「まとめノート」作りのポイントと注意点
2-2. 日本史探究
日本史を選択する最大のメリットは、高校入学以前の段階ですでに基礎内容の学習が終わっているということです。そのため、小・中学生の頃から社会科が得意だった人は、学習内容の下地を活かして勉強をスタートすることができるでしょう。
一方で、日本史を選択する際に注意しなければならないのは、1つの学習項目について、世界史よりも深い知識が求められるということです。実際に大学の入試問題では、ただ暗記しているだけでは対処できないような難問が出題されることも多いため、1つの学習項目をより深掘りして知識を身につけるための勉強が必要になります。また、人物名や文化財産の呼称などに使われている難しい漢字を覚えなくてはならないということも、日本史を選択する上で覚悟しておきましょう。
~大学での学びとのつながり~
大学に入学すると「〇〇史」と名の付く授業があり、また必修科目であることも多く、文系・理系問わず歴史の知識が必要になる場面が多くあります。高校時代に日本史を勉強すると時代の感覚が身につくため、大学の授業で活かすことができます。
どの学問領域を専攻しても、それぞれに必ず歴史があり、日本史とは切っても切り離せない関係にあります。歴史に触れ学ぶことは、学問を深掘りすることにもつながるでしょう。
(StudiCo大学生サポーター 青山学院大学 文学部史学科 M.N.さん)
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>> なぜ「日本史」を勉強するのか ~歴史の〈苦手〉を克服して楽しく学習!~
>>【共通テスト】日本史の勉強法と攻略におすすめの参考書 ~問題形式別の対策で得点8割以上を目指す!~
2-3. 地理探究
地理を選択するメリットは、世界史や日本史に比べて暗記量が少ないことです。また、地理では地球の資源問題や各国との貿易についても学ぶため、大学受験においては、現代文の評論文問題を解く際や、世界史の近代史を学ぶ際に役立つこともあると言えるでしょう。
一方で注意点としては、特に文系で受験する場合、入試で地理を選択できない大学・学部があることです。受験大学の選択肢が狭まってしまう場合もあるので、志望大学・併願大学の学部入試で地理を選択できるか確認しておきましょう。
~大学での学びとのつながり~
地理の学習では、日本や世界の地域区分のみならず、貿易状況や地域特性といった領域まで学ぶため、世界の国家間関係が概観しやすくなります。世界史と同様、大学入学後も、グローバル化が進む中で必要とされる知識・意識のブラッシュアップに役立つでしょう。
(StudiCoサポーター 青山学院大学 文学部史学科 M.N.さん)
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>> 大学入試の地理対策で知っておくべき効率的な勉強法と用途別のおすすめ参考書・問題集
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3. 「公民」科目別のメリットと注意点
3-1. 倫理
倫理を選択するメリットは、ある程度受験で扱われる範囲が決まっているため、暗記量が少なく、膨大な勉強時間をかけずに高得点を狙える科目であることです。倫理は基本的に暗記科目であるため、世界史や日本史と同様に、「努力した分だけ結果になる」「覚えてしまえば高得点を狙える」科目と言えるでしょう。
一方で注意点として、倫理は学習内容どうしに似た概念が多いため、うまく分類をしながら暗記していく必要があることです。共通テストでは、哲学者などの思想を知識として理解していることはもちろん、それらの思想を基に考察するような問題も課されるため、出題形式に対する解答パターンの暗記に終始しないよう、演習しておく必要があります。
~大学での学びとのつながり~
倫理は、現代の新たに生まれた諸問題(医療倫理やAI倫理、企業倫理)など、さまざまな分野に関連します。現代の社会構造や課題を理解する手助けとして、理系・文系を問わず、大学入学後も役立つ分野となるでしょう。
(StudiCoサポーター 早稲田大学 文学部 Y.K.さん)
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3-2. 政治・経済
政治・経済を選択するメリットは、日本の政治機構や国際社会の動向など、実生活に基づいた比較的身近な内容であるため、学習が進めやすいことです。
一方で、内容の類似する知識の異同を正確に問われることもあり、高得点を狙うためには、体系的に精緻な暗記を進めていく必要があるといえるでしょう。また、時事問題から出題されることもあるので、日常的にニュース番組や新聞などの情報に目や耳を傾け、アンテナを張っておくことも必要です。
~大学での学びとのつながり~
日本国憲法をはじめとする法律分野、選挙や地方自治といった現代の政治システム、核軍縮などに関する条約を学ぶ国際政治分野、資本主義や金融・財政などの経済分野など、実生活に基づいた領域を幅広く学んでいくため、政治・経済は大学入学後やその後の社会人生活にも役立つ教養となります。
ほとんどの大学において1年生で履修する「一般教養科目」にも関連する内容が多く、高校で履修する政治・経済が、大学での学びへつながる部分は大きいと言えます。
(StudiCoサポーター 上智大学 法学部法律学科 M.O.さん)
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4. まとめ
高校での社会科の学習は、大学入学後も教養や専門分野の研究を深める際に、さまざまなシーンで役立ちます。
大学受験では志望・併願大学の入試科目に注意しつつ、各科目の特徴を理解して自分に合った科目を選択しましょう。2025年度からの新課程入試では、特に共通テストをはじめとする科目構成の変化に注意が必要です。
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