「日本史探究」の分野のなかで特に苦手意識を持ちやすいのが「近代史」ではないでしょうか。大学受験における日本近代史は、歴史の流れをつかみづらく、暗記項目も多くなっています。一方で、近代史をマスターすれば志望校合格に大きく前進できます!
この記事では、日本近代史の勉強法とおすすめ参考書を紹介します。しっかりと近代史の対策をして、成績アップにつなげましょう!
1.日本史における「近代」とは?
日本史における「近代」とは、いつからいつまでの時期のことを指すか答えられますか?教科書を開いてみると、その答えがわかるはずです。だいたいの教科書では、ペリー来航(1853年)あたりから、日本の第二次世界大戦敗戦(1945年)までが「近代史」として扱われています。つまり、およそこの100年ぐらいの期間を「近代史」と呼んでいるのです。
日本近代史は、100年たらずの期間しかないにもかかわらず、受験頻出の時代でもあります。たとえば、2025年度共通テスト「日本史探究」では、大問1・2・6で近代史の知識が問われていました。日本近代史はしっかり対策することで、確実に成績向上に直結します。
2.なぜ近代史は難しい?——日本近代史を苦手な理由
出題頻度が高いにもかかわらず、日本近代史に対して苦手意識をもっている受験生は多いです。
まずは、なぜ日本近代史が苦手な受験生が多いのか4つの要因を挙げます。自分が日本近代史を不得意としている理由を分析してみてください。のちほど、それぞれの理由に合わせた勉強法を紹介します。
2-1. 対策にかける時間が足りない
日本史探究を通史として「原始時代」から学んでいる場合、カリキュラムの関係上、近代史の対策が手薄になることが多いです。「古墳時代や奈良時代はゆっくりと時間をかけて対策できたのに、他の受験科目の勉強をしながら近代史の対策にかける時間が足りない…」というケースもあるのではないでしょうか。
ただでさえ難しい日本近代史を限られた時間でマスターするには、効率的な学習が必要不可欠です。
2-2. 複数分野で急激な変化が起きる
日本近代史では、「近代国家」を形成するために各分野で急激な変化が起こります。とりわけ、明治維新においては、政治・外交・教育・産業・文化などさまざまな分野で近代化が進みます。
変化が大きく急激で、しかも多岐に渡っているため、歴史の流れを整理することが難しくなります。
2-3. 外交が複雑化
近代史では、対外諸国との外交も複雑になります。江戸時代は鎖国制度のもとで、日本は特定の国家・地域のみと外交関係を結んでいました。
しかし、近代日本の対外関係は、ペリー来航から始まり、列強諸国との不平等条約改正や、周辺諸国への進出、第一次世界大戦・第二次世界大戦への参戦などさまざまな動きを見せます。
近世から近代へかけて外交が複雑化するため、日本近代史では世界史の知識も必要になります。世界と日本の歴史的な関わり合いは「歴史探究」で学習することになっています。日本国内だけではなく、世界を見渡す幅広い視点をもって勉強に臨みましょう。
2-4. 暗記事項が多くなる
さらに近代史の対策を難しくしている点が、暗記事項の多さです。
歴史は一般的に現代に近づくほど保存されている史料・資料が増えますよね。そのぶん明らかになっている歴史の内容は「深く」なります。したがって、受験生の覚える用語も増えてしまうのです。
2-5. 日本近代史が苦手な理由
日本近代史は以上のような理由で、マスターすることが難しいとされます。それらを踏まえると、近代史が苦手な理由は大きく以下の2つに大別されるでしょう。
- 歴史の流れがつかめていない
- 暗記が間に合っていない
これらのマイナスポイントを克服し、近代史を得意分野にするための適切な勉強法を紹介します。
3. 日本近代史の勉強法~タテの流れとヨコのつながり~
3-1. 「タテの流れ」と「ヨコのつながり」
まずは、「歴史の流れがつかめていない」人に向けて、日本近代史の効率的な勉強法を紹介します。
近代史の流れを掴む上で重要なことは、まず「タテの流れ」をおさえてから、「ヨコのつながり」を意識することです。
「タテの流れ」とは、政治・経済・産業など各分野の歴史の時間的な流れや変化のことです。たとえば、1900年代、1910年代、1920年代、1930年代と、政治史や経済史などの分野がそれぞれどのように変化していったかということになります。
「ヨコのつながり」とは、歴史的な出来事の同時代性のことです。たとえば、1930年代前半の政治・経済・産業・文化などがどのように関連しているかということになります。
タテの流れをおさえるためには、各分野がどのように変化していったかを意識してください。
特に、政治史の総理大臣からおさえるとよいでしょう。総理大臣の覚え方については、こちらの記事も参考にしてください。
>> 日本史の「総理大臣」を攻略!各時代のポイントとおすすめ勉強法
タテの流れを掴めたら、知識をヨコにつなげましょう。分野別の知識を5年ごとに整理してください(どの総理大臣の時にどうだったか、先ほど覚えた総理大臣をキーにすると比較的わかりやすくなります)。
さらに、それぞれの5年がどのような時代であったのかについて簡単に説明できるようにしておきましょう。
たとえば1930年前半は、「満州への進出と軍部の台頭」「高橋財政にともなう恐慌の脱却と、軍需増大にともなう重化学工業の発展」などと説明できるのではないでしょうか。ここでは、「満州への進出」=外交、「軍部の台頭」=政治、「高橋財政と昭和恐慌」=経済、「重工業の発展」=産業 といったように、各分野のタテの歴史が同時代の出来事としてつながったことがわかりますね。
3-2. おすすめ参考書
タテの流れとヨコのつながりを整理するのにおすすめの参考書を紹介します。
『攻略日本史 近・現代史 整理と入試実戦』(Z会)
本書は、日本近代史を勉強する上で特におすすめの参考書です。政治史・経済史・文化史など分野ごとの歴史の流れを確認できます。したがって、「タテの流れ」を整理して「ヨコのつながり」をおさえるためには必携の1冊となっています。
『タテヨコ 日本史 総整理 テーマ史 改訂版』(旺文社)
この参考書は、政治史、社会経済史、外交史といったテーマごとに歴史の知識を整理するのに役立ちます。コンパクトなサイズで持ち運びやすく、通学中にパラパラ目を通すのにも向いています。
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- ほしい (11)
- おすすめ (3)
『名人の授業シリーズ 金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】 近現代史』(ナガセ)
日本史の因果関係に重点を置いて執筆されており、日本史の流れを整理するのに有用な1冊となっています。経済史や外交史をテーマとして扱っているので、「タテの流れ」を整理するのに役立ちます。
また、2025年3月には、同書の三訂版も発売予定となっています。三訂版のポイントは、新課程の「日本史探究」に完全対応している点です!ぜひチェックしてみてくださいね。
『日本史の論点-論述力を鍛えるトピック60-日本史の論点』(駿台文庫)
この参考書は、特に難関大学志望者で論述問題に挑戦する受験生向けです。入試問題で頻出の日本史の「論点」に焦点を当てて、知識の整理をおこなっています。
明治憲法下の政治史や経済史といったトピックを扱っているので、「タテの流れ」を「ヨコにつなげる」上で役立つ参考書となっています。
4. 日本近代史の勉強法~効率的な暗記~
4-1. とにかく暗記
さて、タテの流れとヨコのつながりを意識できたら、あとは「暗記が間に合っていない」ことへの対策だけです!
日本近代史は暗記事項が多いので、重要度順に知識を押さえていくことが効率的な学習につながります。繰り返し教科書や問題集を見返すことで知識が定着していきますが、文章が多めの教科書では、うまく用語が頭に入らない場合は、「一問一答形式」の問題集に取り組んでみましょう。
日本近代史は、受験頻出にもかかわらず苦手分野とする受験生が多いです。しっかりとした知識をつければ、必ず受験本番でライバルに一歩先んじることができるはずです!
4-2. おすすめ参考書
用語の暗記におすすめの参考書を紹介します。
『日本史一問一答 : 完全版』(ナガセ)
用語の暗記に便利な1冊です。用語の重要度がわかるマークがついているので、入試頻出の事項から知識を定着させることができます。
一問一答形式の問題集はさまざまなバリエーションがあります。以下の記事は、いくつかの一問一答形式の問題集の紹介と、効率的な使用方法をレクチャーしています。ぜひ参考にしてください!
>> 日本史「一問一答」問題集の効果的な使い方 ~勉強法のコツとおすすめ問題集6選~
5.まとめ
日本近代史は、受験生にとってなかなか手強い分野です。しかし、しっかりと対策をすれば確実に他の受験生と差をつけることができます。この記事で紹介した勉強法を実践して参考書を効果的に駆使し、日本近代史をマスターしてください!