毎年1月に実施される共通テスト。2025年度の新課程入試より、国公立大学の受験生にとっては標準で6教科8科目の対策が必要となっています。
その中でも「理科基礎」科目は1時間で2科目を解く必要があり、点数の割に受験生の負担が大きい科目といえます。「どの科目を選択するべきか」「どのように勉強した方が良いか」「どれくらい時間をかけるべきか」など、特に文系学部を志望している場合は悩むことも多いのではないでしょうか。
本記事では「地学基礎」にスポットを当て、徹底解説します。また、共通テストにおける特徴を他の理科基礎科目と比較しながら紹介。「地学基礎」攻略へ向けた効率的な勉強法や、使っておきたいおすすめの参考書も時期別に4冊紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1. 共通テスト「地学基礎」の概要
まずは共通テストの地学基礎について、他の「理科基礎」選択科目とも比較しながら見てみましょう。
1-1. 問題構成・傾向
近年の地学基礎は主に4つの大問から構成され、50点満点となっています。各大問や配点は以下の通りです。
○共通テスト「地学基礎」問題構成(2024年度本試験より)
大問 | 分野 | 配点 | |
---|---|---|---|
1 | 地球 | 地球・地層・岩石・火山など | 20 |
2 | 大気と海洋 | 天気・海流など | 10 |
3 | 宇宙 | 太陽系・銀河系など | 10 |
4 | 環境 | 自然災害・環境資源など | 10 |
各分野から満遍なく出題されていることが分かります。全ての分野をさらっておく必要がありますが、「地球」分野は配点の割合も高いため、特に対策が求められます。(それぞれの特徴については後述)
また、共通テストの特徴として、基礎的知識に加え思考力を問われる問題が増加していることが挙げられます。地学基礎も例外ではなく、図や表を読み取り分析して答える問題も必ずと言っていいほど出題されています。そのため、ただ知識だけを頭に入れるのではなく、「それがどのような仕組みになっているのか」という理論を関連付けて学習することが大切です。
1-2. 試験時間・受験者数・平均点
地学基礎に限らず、理科基礎科目の試験時間は30分となっています。
各科目の受験者や平均点は以下の通りです。
○共通テスト「理科基礎」科目別の受験者数推移(2021年度~2023年度)
科目2021年2022年2023年
科目 | 2023年 | 2022年 | 2021年 |
---|---|---|---|
地学基礎 | 44,320 | 43,943 | 43.070 |
生物基礎 | 127,924 | 125,498 | 119,730 |
化学基礎 | 103,074 | 100,461 | 95,515 |
物理基礎 | 19,094 | 19,395 | 17,978 |
*参照:大学入試センター「受験者数・平均点の推移(本試験)大学入学共通テスト」
○共通テスト「理科基礎」科目別の平均点推移(2021年度~2023年度)
科目2021年2022年2023年
科目 | 2023年 | 2022年 | 2021年 |
---|---|---|---|
地学基礎 | 67.04 | 70.94 | 70.06 |
生物基礎 | 58.34 | 47.80 | 49.32 |
化学基礎 | 49.30 | 55.46 | 58.84 |
物理基礎 | 75.10 | 60.80 | 56.38 |
*参照:大学入試センター「受験者数・平均点の推移(本試験)大学入学共通テスト」
「生物基礎」や「化学基礎」と比べると受験者数が少ないため現役生からは敬遠されがちですが、平均点を見てみると、地学基礎の平均点は7割前後と高い水準です。時間をあまりかけられない受験生にとって、地学基礎は短期間の対策でも高得点を取りやすい科目と言えるのではないでしょうか。
理科基礎科目は得点調整(※)される可能性が低いので、安定して平均点の高い科目を選択するというのも1つの手かもしれません。
※得点調整……理科・社会の各科目間で、原則として20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合におこなわれる調整措置
2. 地学基礎の各分野
地学基礎における4つの分野について詳しく紹介します。
2-1. 【大問1】地球(配点約4割)
4題のなかで最も配点の高い大問です。特に地層や岩石・鉱物などはほぼ毎年出題されており、対策は必須です。
また、「地球史」の問題も出題されることがあるため、地質年代や生物などの暗記が大切になります。
計算問題は少なめですが、地震の計算はマスターしておきましょう。
思考力を問う問題として、過去には「柱状図」の読み取り問題が出題されています。
2-2. 【大問2】大気と海洋(配点約2割)
天気や海流の問題が必ず出題されます。高気圧・低気圧の特徴、海流の動きなどしっかり暗記しておくことが大切です。
また、津波の到達時間や海面の高さなどを問う計算問題が出題されることが多いため、計算問題が苦手な場合は類題を解いて対策しておきましょう。
2-3.【大問3】宇宙(配点約2割)
太陽系・銀河系・地球の誕生の過程など、宇宙分野における知識が総合的に問われます。
計算問題は少なめですが、覚えていなければ解くことのできない暗記ベースの問題が多いため、用語の名称や特徴などをしっかり押さえておきましょう。
過去には教科書の本文外に掲載されている「星団・星雲」が問われた年もあります。細かいところまで知識が必要なこともあるため、教科書や参考書などをしっかりと読み込んでおきましょう。
2-4.【大問4】環境(配点約2割)
身近な自然災害や環境資源についての出題が大半です。感覚で解くことができてしまう問題も多い分野ですが、知識が問われる問題もあるため、最後まで気を抜かずしっかりと対策しましょう。
図表の読み取り問題が出題されることがあるため、問題演習を多くこなし、出題形式に慣れておくことが大切です。
3. 地学基礎おすすめの勉強法
共通テストの地学基礎で8割の得点を獲得するためには、どのような対策をおこなえば良いでしょうか。夏までの対策と秋から共通テスト直前期までの対策の、2つの期間に分けて解説します。
3-1. 夏までの勉強法
国公立大学を受験するとなれば、多くの場合6教科8科目の勉強が必要となります。それに加え、学校の定期テストや課題なども当然あるため、地学基礎の勉強だけに時間をかけることは難しいでしょう。
高校3年生の夏までは週1回程度の対策で十分だと思います。使用する参考書は1冊程度に留め、国語・数学・英語などの他の教科に時間を回した方が賢明です。
1点、少ない勉強時間の中でもおすすめするのが、「まとめノート」を作ることです。教科書や参考書を読む中で大切だと思ったところや、問題を解いたり模試を受けたりした際に間違えた箇所を、ミニサイズのノートに書き留めておきましょう。これは「共通テスト当日にこれ1冊だけ持ち込んで直前見直しができる」ように意識して作成することが大切です。
▼まとめノートの一例。
(ページの下に余白を作っておき、テスト後や復習の際に追記しながらバージョンアップしていくとさらに良い)
自分の勉強した軌跡をノートとして残しておけば、入試本番も自分が間違えやすいところに絞ってポイントを確認できますし、これだけ勉強をしたのだという自信にも繋がります。適宜ノートを振り返ることで、自分が見落としていた箇所を再確認することができ復習にも役立つでしょう。
3-2. 秋~入試直前の勉強法
秋~冬にかけては共通テストに向けて、本格的に問題演習や過去問演習を始めると良いでしょう。その際、数学や英語など時間をかけなければならない教科の合間に取り組むことをおすすめします。共通テスト地学基礎の試験時間は30分ですので、良い息抜きになるでしょう。
直前期になったとしても、地学基礎の対策ばかりに注力することは危険です。あくまで共通テストの得点源は国語・数学・英語ですので、時間をかける割合を自分で調整しながら学習することが大切です。
地学基礎の問題を解く上では、間違えた問題には印をつけて再び解けるようにしておくと、効率よく学習できます。
4. 地学基礎おすすめの参考書4選
共通テスト「地学基礎」の対策におすすめの参考書を紹介します。
勉強する時期ごとに分けて紹介しますので、ぜひ受験対策の参考にしてください。
4-1. 夏までの勉強におすすめの参考書
まずは夏までに有用な参考書です。
この時期はとにかく知識をインプットすることが大切。要点がわかりやすくまとめられた参考書を使用すると良いでしょう。おすすめは以下の2点です。
計12チャプターで構成されており、地学基礎の全範囲を網羅して学習することができます。共通テストに出題されるところを中心に要点がしっかりとまとまっており、まとめノートを作る際にも効果的です。
1つのテーマごとに確認テストがあるだけでなく、複数のテーマに「CHECK POINT」がついているため、理解しているかを確認した上で次の章へ移ることができます。
地学基礎を全く学んだ事がない状態でも、この1冊で学習が可能なほど充実した内容と言えます。
『共通テスト 地学基礎の点数が面白いほどとれる本』(KADOKAWA/中経出版)
語り口調の解説が読みやすく、平易で分かりやすいことが特徴のシリーズの1冊です。
項目ごとに重要事項がポイントとしてまとめられているので、覚えなければならない知識を一目で理解できます。
演習問題も共通テストに準じて難易度が細かく設定されており、解説もわかりやすいです。インプットのみならず、アウトプットの学習にも十分使用できるでしょう。
4-2. 入試直前におすすめの参考書
知識がある程度インプットできたら、次は問題演習に移りましょう。多くの問題をこなし、共通テストの傾向を知ることが大切です。
過去問集や共通テストに準じたオリジナル問題が掲載されている参考書を紹介します。
0
共通テストの過去問からセンター試験時代の過去問まで、17回分の問題が収録されています。
センター試験と共通テストで問題形式は若干異なっていますが、参考にできる問題は多くあるため、解いておいて損はありません。まずは過去問を解くことで出題方式を理解することが大切です。
『短期攻略 大学入学共通テスト 地学基礎』(駿台文庫)
過去問を通してある程度問題に慣れたら、入試本番までの間で問題演習を重ね、実力完成を目指しましょう。
本書はオリジナル問題がレベル別に62問収録されており、文字通り短期集中で攻略を実現できるとされています。選択式の問題では、正解だけでなく不正解の選択肢にも解説がしっかりと付いており、独学にもおすすめの1冊です。
5. まとめ
共通テスト「地学基礎」は少ない勉強時間で高得点を目指せる科目です。対策の時間をかけ過ぎず、いかに効率的に勉強できるかが受験成功へのカギとなります。夏までの期間は他教科を優先しつつインプットに注力し、夏以降から問題演習に移り、少しギアを上げていくと良いでしょう。
共通テスト1,000点満点のうち、地学基礎は50点と全体の5%程度に過ぎないかもしれませんが、入試では僅かな差が勝負を分けるポイントになります。文系でも理科基礎科目をしっかり対策すれば必ずアドバンテージになるはずです。
記事で紹介した勉強法や参考書を通して、共通テストの地学基礎をぜひ攻略してください!
*理科基礎科目についての選び方や他の科目の勉強法などは、これらの記事も参考にしてください!
>> 共通テスト「理科基礎」はどれを選ぶ? 各科目の特徴とおすすめ組み合わせ4パターン
>> 【共通テスト】理科基礎科目の勉強におすすめの参考書・問題集を紹介!
>> 【厳選】理科基礎(化学基礎・生物基礎・地学基礎・物理基礎)参考書の「使い方レポート」傑作セレクション