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【単元総まとめ】「力学」分野の勉強法とレベル別おすすめ参考書7選

2024.04.12

高校物理で最も重要な分野とも言われるのが「力学」です。他の単元を学ぶ上での基礎ともなる、まさに高校物理の根幹を成す分野と言えるでしょう。
「物理の基本からつまずいてしまっている…」「力学が苦手で点数が取れない…」――そんなお悩みをこの記事で解消しましょう!
「力学」の特徴と勉強法、各単元のポイントをわかりやすく解説し、あわせて各学習段階に応じたおすすめ参考書も紹介します。

※この記事は2024年4月に書かれた内容を一部最新の情報にリライトして投稿したものです。

1. 「力学」の全体像 ~苦手にしないコツ~

まず「力学」に苦手意識を持たないために、〈できる人〉がどういう考え方をしているか解説しましょう。
最初に意識してほしいことは、図を描いたり、日常の現象に落とし込んだりして具体的にイメージすることです。特に日常生活の例でイメージすることは重要なので、この記事でも具体例を交えて各単元の内容を解説します。自分で具体例があまり思い浮かばなければ、教科書にたくさん例が載っているのでまずは教科書をよく読んでみましょう。
他にも、問題を解く上での条件・要素を減らしてシンプルに考えたり、極端な例(例えば質量がとても大きい、または小さい場合)で考えたりするのも非常に有効です。
また、公式の暗記に自信がない時や計算結果を確かめたい時に使えるのが、「次元解析」というテクニックです。特に共通テストや私立大学の個別試験などで、正しい選択肢を導く際に役に立ちます。
*「次元解析」についてはこちらの記事で詳しく解説しているので要チェックです。
>> 【共通テスト】物理のおすすめ勉強法と参考書 ~高得点を狙うコツと実戦テクニック~

1-1. 運動の表し方

いくつかの公式が登場しますが、軸の取り方・力の向きに注目することで、直線上(一次元)の運動の公式は「変位」「速度」の2つの式にまとめることができます。
また、詳しくは数学Cの「ベクトル」で学習することになりますが、ベクトルを分解したり合成したりすることに慣れておくとよいでしょう。例えば、速度を鉛直方向と水平方向に分解すれば、平面上(二次元)の運動もシンプルに考えることができます。
三角比(三角関数)も数学より先に物理で習うことになりますが、難しく感じる必要はありません。三角比とは、文字通り三角形の辺の比のことです。有名角(0°、30°、45°、60°、90°)の三角比の値は特に完璧に覚えておくと、問題を解いていて不安になることが少なくなります。

1-2. 運動の法則

作用反作用の法則・慣性の法則・運動方程式は忘れてはならない大原則です。まずは教科書をよく読んだ上で基礎的な問題を解き、どこかで勘違いをしていないかしっかり確かめましょう。
「摩擦力」「圧力」「浮力」など、「力学」の名前の通りさまざまな「力」が登場しますが、問題での応用理解や他の分野との関連知識の中でマスターを目指しましょう。
考え方のコツとしては、剛体にはたらく力を作用線上で移動させても、その効果は変わらないことを頭に入れておいてください。力の作用線上なら、問題を考えやすいように力を移動させてもよいということです。また、重心を基準にして運動を考える方法も問題によっては非常に有効です。
てこの原理の支点・力点・作用点という考え方は、「力のモーメント」のことです。大きい箱を引きずって運ぶ時に、下の方を押すと倒れにくいが上の方を押すと倒れやすいというのも応用例の1つでしょう。
質点・剛体どちらであっても、はたらいている力を図示するところから始めて問題を解きましょう。特に垂直抗力や摩擦力といった抗力は、見落としがちなので気をつけてください。

1-3. 仕事と力学的エネルギー

実際の大学入試で仕事を求める問題は頻出ですが、仕事について勘違いしている受験生は少なくありません。仕事の定義をよく確認しておきましょう。ここで他の受験生と差をつけることができます。
例を挙げると、大きい箱を押して運ぶ時、垂直抗力は移動する方向と垂直にはたらくので仕事をしません。箱にはたらく摩擦力は移動する方向と逆向きにはたらくので負の仕事をします。
力学的エネルギー保存則はとても便利な法則ですが、位置エネルギーの基準面を必ず1つに定めることと、保存力以外の力が仕事をする際はその仕事の分だけ力学的エネルギーが変化することに注意しましょう。

1-4. 運動量の保存

速度を成分ごとに分解し、定石どおりに計算することが一番の近道です。定石とは、運動量保存則の式と、弾性衝突では力学的エネルギー保存則の式、非弾性衝突では反発係数の式の連立方程式を解いて速度を導出する方法です。
他の分野に応用されることもあり、入試での出題頻度が高いです。必ず“定石”の計算はできるように、問題演習で反復練習しましょう。
運動量保存則を「ニュートンのゆりかご」という装置でイメージする、説明する人が多いと思います。同じ大きさの金属球をいくつか並べて吊るした装置で、それぞれの球がどういった動きをするかこちらの動画を見ておくとわかりやすいでしょう。

ニュートンのゆりかご/Newton’s Cradle

実は、球どうしは静止した状態でぴったりくっついているのではなく、微小な隙間が空くようになっています。隙間が空いていると、1個目の球が2個目の球に運動量をそのまま伝え、2個目から3個目…といったように端の球までそのまま運動量を伝えることができます。球どうしがくっついていると、二体問題ではなく多体問題になってしまい、異なるふるまいをしてしまいます。

1-5. 円運動と万有引力

円運動で見落としがちな部分を振り返っておきます。
静止している観測者から見て円運動の加速度は常に円の中心を向いていて、この加速度を発生させる中心向きの力を「向心力」円運動する物体とともに回転する観測者から見て中心から遠ざかる向きの慣性力を「遠心力」といいます。
「慣性力」を考える例としては、加速している電車の中でつり革や風船がどんな動きをするか考えてみましょう。
単振動では、振動の中心からどれだけ離れているかを意識すると問題をシンプルに考えられることが多いです。また、数3で三角関数の微分を学習した後に振り返ると、更に理解が深まるでしょう。
万有引力の式を見て最初は戸惑うかもしれませんが、位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)は距離を積分して求めることができるので、万有引力(距離の-2次)の次数が上がって万有引力の位置エネルギーは距離の-1次になると覚えるとよいでしょう。
なお、万有引力のポテンシャルエネルギーは基準点を「無限遠」としている場合が多いので、その点も要注意です。無限遠は万有引力の位置エネルギーをわかりやすくするための条件設定で、無限遠では万有引力の位置エネルギーはゼロとなります。日常生活からは離れますが、地球の周りをまわる人口衛星が具体例です。

2. 力学の勉強におすすめの参考書7選

2-1. 定期テスト対策レベル

宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版 宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版
理科
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宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版
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鯉沼拓 為近和彦
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宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 改訂版』(学研プラス)

公式を分かりやすく説明するために図やイラストがふんだんに使われており、「力学」を初めて勉強する段階でも楽しく取り組めるようになっています。
別冊で問題集が付いていますが問題数自体は少ないため、物理現象や公式を理解するための参考書として使用しましょう。

 

漆原晃の物理基礎・物理〈力学・熱力学〉が面白いほどわかる本 : 大学入試 漆原晃の物理基礎・物理〈力学・熱力学〉が面白いほどわかる本 : 大学入試
理科
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漆原晃の物理基礎・物理〈力学・熱力学〉が面白いほどわかる本 : 大学入試
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漆原晃
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改訂版 漆原晃の物理基礎・物理〈力学・熱力学〉が面白いほどわかる本 : 大学入試』(KADOKAWA/中経出版)

公式の導出過程から問題を解くためのポイント、さらに演習問題を解説した構成になっています。特に問題を解くためのポイントは、座標系の取り方やどの目線から運動を観察するか等の、力学を押さえる上で重要な視点が簡潔にまとまっていて、問題を解けるようにする参考書としておすすめの1冊です。

2-2. 大学入試 基本問題レベル

良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版 良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版
理科
物理
良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版
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浜島清利
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良問の風 物理 頻出・標準 入試問題集 三訂版』(河合出版)

教科書や『物理のエッセンス』レベルの参考書で基礎がある程度身についた段階で、私立大学の個別試験対策ができるレベルの参考書です。
問題のタイプを小単元ごとに細かく分けており、苦手な分野をピンポイントで対策できるのがおすすめポイントです。

2-3. 大学入試 応用・発展問題レベル

名問の森 物理[力学・熱・波動I] -四訂版- 名問の森 物理[力学・熱・波動I] -四訂版-
理科
物理
名問の森 物理[力学・熱・波動I] -四訂版-
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浜島 清利
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名問の森 物理[力学・熱・波動Ⅰ] -四訂版-』(河合出版)

物理のエッセンス』『良問の風』等の参考書で基礎がしっかり身についた段階で、難関国公立大学の二次試験対策ができるレベルの参考書です。
難しい問題が多く収録されていますが、順序立てて解説されているので分かりやすく感じるはず。問題ごとに書かれているヒントは重要なポイントとなるので、解けなかった問題だけでなく解けた問題もよくチェックしておきましょう。

その他に大学入試対策レベルの問題集として、次の3冊をおすすめします。

物理のエッセンス力学・波動 物理のエッセンス力学・波動
理科
物理
物理のエッセンス力学・波動
4.5
浜島清利/著
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物理のエッセンス力学・波動-五訂版-』(河合出版)

大学受験Doシリーズ 漆原の物理 明快解法講座 五訂版 大学受験Doシリーズ 漆原の物理 明快解法講座 五訂版
理科
物理
大学受験Doシリーズ 漆原の物理 明快解法講座 五訂版
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漆原晃
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大学受験Doシリーズ 漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座 五訂版』(旺文社)

物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版 物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版
理科
物理
物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版
0
中川雅夫 為近和彦
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物理[物理基礎・物理] 標準問題精講 七訂版』(旺文社)

これらの参考書は以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
>> 【単元総まとめ】「電磁気」分野の勉強法とレベル別おすすめ参考書6選

3. まとめ

高校物理「力学」の特徴と各単元のポイントを解説しました。
「力学」では、どれだけ頭の中で物理現象を正確にイメージできるかが非常に大切ですが、これはセンスではなく演習の繰り返しで身に付けることができる能力です。
「力学」は他の分野にも応用されることの多い、物理の最も重要な分野なので、ここを押さえれば総合的な点数アップも狙えます。「力学」をマスターして、物理で他の受験生と差をつけましょう!

StudiCoサポーター I.T.
東京大学理科一類 合格