大学受験の「漢文対策」には、どのように取り組めばよいのでしょうか?この記事では、漢文初心者のための基礎的な勉強法ポイントのおさらいから、共通テスト、難関大学対策まで、それぞれのレベルに合ったおすすめの参考書・問題集を紹介します!
1. 大学受験における漢文対策の必要性
共通テストの国語における漢文の配点は、200点満点中50点と、決して小さくはない割合を占めています。
そのため、対策の必要性が高いのは言うまでもありません。ただ、共通テストのみで漢文を受験すればよいという人には、それほど深い知識は求められません。
一方、東京大や京都大を含む最難関国立大学の二次試験や、早稲田大や法政大をはじめとする一部の難関私立大学の文系学部でも漢文が課されますが、これらの大学の受験者は、知識と合わせて読解力を問うような試験内容への対策が必要となります。
2. 漢文の勉強法 ~基本ポイントと注意点~
大学受験の漢文対策を進めるにあたり、まずは基本となる勉強法をおさらいしておきましょう。
2-1. 〔基礎レベル編〕押さえておくべき3つのポイント
次の3点は漢文の対策に取り組む上で、目標とするのがどのレベルであっても必ず押さえておきたいポイントです。
【1】返り点と再読文字をマスターする
返り点と再読文字は漢文を読む順序を明確にするためのものです。
このルールがわからないと句法・句形の学習に入れませんので、必ず覚えておきましょう。
【2】句法・句形は音読して学習する
句法・句形というのは漢文での文法のことです。漢文の読み方や訳し方には、この句法・句形によって指定される使役や受け身といったルールがあります。
これら句法・句形の学習には「音読」が有効です。音読すると漢文の並びのパターンが頭に入りやすくなり、句法・句形を要領よく理解できるようになっていきます。
句法・句形が正しく習得できないと、いくら時間をかけても漢文の点数は上がりませんので、しっかり力を入れましょう。
【3】漢字・単語を習得する
漢文の基礎として習得すべき単語はせいぜい150から200程度です。その中でも現在とほぼ同じ意味を示すものもありますから、プレッシャーを感じずに手早く済ませてしまいましょう。
実際に漢文の参考書には、単語(漢字)だけをマスターする目的の本はほとんど存在しません。つまり、漢文対策で学習すべき単語(漢字)の数は、句法の付録という位置づけ程度の暗記量と考えてよいということです。
参考書を読んだ際に知らなかった、または自信がない単語については、ノートや単語カードに書き写して、通学時などのスキマ時間に復習しておきましょう。
2-2. 〔応用レベル編〕難関大入試に臨む際の注意点
難関大学(特に東京大や京都大)の入試問題では、漢文の基礎的な知識に加え、読解力が要求されます。
この読解力を身につけるためには、漢文読解に特化した参考書1冊で対策を完結させるのではなく、多くの参考書をこなすことをおすすめします。
また、漢文にはある程度ストーリー展開に共通性があることを覚えておきましょう。
例えば、「よこしまな心を持つ王がいる国は繁栄しない」といった話は定番ですね。このような「パターン」に慣れていけば、読解するまでの時間はかなり短縮できます。
なお、漢詩が出題された際には「訳さなくてもよい」ことを心がけるのも大切です。
漢詩は訳すことに集中し過ぎると、問題に解答する時間がなくなってしまうので、全訳にはこだわらないようにしましょう。設問から概要を理解する程度で十分です。
また、漢詩には韻を踏む習慣がありますから、それを忘れずに試験へ臨むと、空欄補充問題での大きなヒントとなり、正答率アップにつながります。
3. 漢文対策におすすめの参考書
漢文対策の習熟度合いや目指すレベル別に、おすすめの参考書を一挙紹介します!
3-1. 漢文の基礎力に自信がない人におすすめの参考書
『漢文のヤマのヤマ 共通テスト対応版』 (学研マーケティング)
基本である句法をわかりやすく基礎から学ぶことができます。解説が簡潔で親切なことも魅力です。
以下の流れで勉強すると、効率的に覚えることができるので、ぜひ実践してみてください!
<1> まず、見開きページにある説明を音読します。次に右ページの句法を暗記、左ページの問題を解く、という流れを66例題分おこないます。
<2> 1周目で引っかかった問題を重点的に再度解き直すという流れを繰り返し、引っかかる部分がなくなるまで演習を繰り返します。
<3> 例題を解き終わったら、後半の共通テスト過去問を1年分ずつ解き、答え合わせ、復習の流れで進めていきましょう。
ここでは無理に暗記するのではなく、解説の内容や漢文のパターンを頭に入れることに力を入れてください。
『基礎からのジャンプアップノート 漢文句法・演習ドリル〔改訂版〕』(旺文社)
書いて覚えるノートタイプの1冊で、漢文句法の基礎力をしっかり磨くことができます。
「基礎演習ドリル」のページでは、上段に「句法解説」、下段に「基礎演習ドリル」が掲載されているので、理解できているかどうかをその場で簡単にチェックすることができます。
漢文に不安や苦手意識がある人は、まずはこの1冊で基礎を固めましょう。
3-2. 共通テスト対策におすすめの参考書
『漢文早覚え速答法 共通テスト対応版』(学研マーケティング)
要点が濃縮されていて、本のタイトル通り早々と漢文に慣れることができます。
10の句形と100の漢字を習得する前提で漢文を読み進めていきます。苦手な人でも漢文に触れながら少しずつ慣れていくことができるので、比較的進めやすいでしょう。ただ、あくまでも「時間をかけずに漢文を早覚えする」ということに特化した参考書なので、漢文の基礎がしっかりと説明されているものではありません。
早ければ3日程度でこの本を仕上げ、別冊の『センター漢文攻略マニュアル』に取り組んでください。
『極める漢文 センター試験編』(スタディカンパニー)
わかりやすいビジュアルと音声による解説がこの問題集の特徴で、本としての分量が少ないので短時間で1周できます。センター試験時代に刊行された問題集ですが、共通テスト対策としても使用することができます。とても丁寧に内容がつくりこまれており、漢文をどのように読めばよいのか、という点がビジュアルで理解できるので、読み取る力と点数を上げるスキルが同時に身につきます。
3-3. 難関大対策におすすめの参考書
『得点奪取 漢文 記述対策[改訂版]』(河合出版)
記述問題で間違いやすい部分について、要素を分解した例題を使って解説しているので、記述問題に取り組むには非常に親切な参考書です。
記述式の対策が必要な難関大の受験に向けて、現代語訳や解釈の方法、説明問題への取り組み方などがしっかり身につきます。
『難関大突破 究める漢文』(中経出版)
基礎を既に習得し、難易度が高い問題に取り組む人におすすめの参考書です。
ハイレベルな問題を扱っていますが、解説はわかりやすくまとまっています。
4. まとめ
漢文は、まず基礎となる以下のようなポイントを押さえつつ、学習に取り組みましょう。
- 返り点と再読文字をマスターする
- 句法・句形は音読して学習する
- 漢字・単語を習得する
また、漢文が共通テストのみで必要な人と、国立大の二次試験などで必要な人では、その学習の範囲や深さが大きく異なります。記事で紹介したラインナップを参考に、自分自身の目指すところを意識して、適切な参考書や問題集を選びましょう。