早稲田大学の一般選抜入試において、「国語」はほとんどの文系学部の個別試験で受験必須となる科目。一方で、地理や歴史のように努力の結果が出やすい科目ではなく、配点の高い英語が優先され、対策が後回しになりがちです。だからこそしっかり対策しておき、ライバルに差をつけたいところ…。
現代文に劣らず難易度の高い傾向にある「古文」、他の大学・学部で出題されにくい「漢文」はそれぞれ個別の対策が重要です。
この記事では、「早稲田の国語」全体の特徴や傾向を踏まえた上で、現役早大生が受験生時代の経験をもとに、古文・漢文の勉強法を問題形式別に紹介します。ぜひ、早稲田大学志望者は入試対策の参考にしてみてください!
※この記事では主に、2024年度の高校3年生が対象となる早稲田大学一般選抜における「国語」、その中の「国語総合」「古典B」の内容について扱います。履修および大学受験時の学年についてご注意ください。
1. 出題傾向と特徴
1-1. 国語全体
早稲田大学・一般選抜入試における「国語」の大きな特徴として、文章への深い理解と速読力が高いレベルで必要とされる点が挙げられます。本文全体の内容や要点を把握しないと問題を解けないことはもちろん、紛らわしい選択肢に苦戦するという声のほか、文章自体が難解で抽象的なため理解するのにかなりの時間を要してしまうという悩みも聞かれます。
消去法などのテクニックだけでは解けない問題も多いため、問題を解く際は文章の本質的理解を第一に心がけることが、正答を導く近道です。学部によっては受験者の平均得点率が7割を超える年度もあるため、失点は最小限にとどめる必要があり、精度も要求されます。
試験内容については、問題の傾向や形式は共通する点が多いものの、試験時間や配点、大問数は学部によって異なります。受験する学部の入試要項を確認し、配点や自分の得意・不得意などによって国語にどの程度力を入れるか計画しましょう。国語全体の時間配分や過去問活用については、こちらの記事をご覧ください。
>> 【早稲田の国語・現代文編】現役早大生が解説!早稲田大学の入試傾向と問題形式別の勉強法
1-2. 古文
早稲田大学・一般選抜入試の「古文」では、情報量が多く読み応えのある文章が頻出します。出題される題材は物語や説話、日記、歌集、近世の文章など多岐にわたります。
その中でも、「源氏物語」などの有名作品は、全く知らない作品よりは読みやすい分、難易度の高い設問も登場します。ある程度作品の内容を把握し、読解のハードルを下げておくことをおすすめします。
一方でマイナーな作品も頻出するため、各時代の政治的・文化的背景など、どの作品にも通用する古典の知識を蓄えておきましょう。
出題の特徴としては、単体の文法問題以外は、知識のみで解けない問題が多い傾向にあること。文法もヒントにしつつ、文脈理解を第一に心がけるようにしましょう。単語も文脈によって意味が変わってくるなど丸暗記だけでは対応できない設問が多く、基礎知識を身につける段階から「暗記する」のみではなく「理解する」ことが重要になります。
また、文学史も細かい範囲まで頻出するので、漏れのないようにしっかり対策しておきましょう。
1-3. 漢文
早稲田大学・一般選抜入試の「国語」では、ほぼ全ての学部で「漢文」が出題範囲に含まれます。文章量、設問数ともに他分野と比べてボリュームが少なく、文法問題など基礎的な問題も多いため、短時間での解答で得点源にしたい分野です。
しばしば入試に頻出しない用語など応用的な語句が設問に含まれることがありますが、基礎に忠実に、消去法などで絞っていけば対応できる問題がほとんどです。漢文以外の大問(現代文・古文・融合文)はボリュームがあるため、なるべく漢文を短時間で解き、他の大問に余裕をもって取り組めるような時間配分を目指すのが望ましいです。
また、学部によっては漢詩が出題されることもあるため、受験学部の傾向を確認しておきましょう。問題レベルや出題傾向を把握するためにも、過去問を十分に演習することが大切です。
1-4. 現古漢融合文
現代文の中に古文、漢文が引用された文章を指します。複数の学部で出題されており、早稲田大学の国語入試特有の出題形態です。現代文、古文、漢文それぞれの読解法で解ける問題と、それぞれの文章の関連を問う問題に分かれており、それぞれの設問形式に合った解法を用いることが大切です。
1つの文章の中に複数の文体が登場し、各設問でどの分野の読解法を用いるか判断する必要があるため、このような形の文章に「慣れる」ことがとても大切になります。こちらも「漢文」と同じく、過去問演習を重ねて対策しておきましょう。
2. 【古文編】問題形式別対策
早稲田大学・一般選抜入試の「古文」でよく問われる問題形式ごとに、対策のポイントを解説します。
2-1. 和訳
純粋な和訳問題、もしくは意訳を含む和訳問題が出題されます。複数の意味をもつ単語や抽象的な単語の訳が問われることも多いため、純粋な和訳問題でも前後の文脈まで読み取る必要があります。
文脈によって単語の意味を使い分けできるような、応用的な古語の理解が大切です。古文単語を勉強する際も単語の訳を丸暗記するのではなく、その単語の全体像や使われる場面まで理解することを意識して取り組みましょう。
2-2. 傍線部説明
主語や指示語を問う問題が頻出します。省略の多い古文では問われやすいポイントとなります。時間のロスを防ぐため、省略された主語や指示語が何を指しているのか、本文を読む段階で確認しておきましょう。
また、登場人物が多くややこしい文章も頻出するため、人物関係を整理して読み進めることをおすすめします。文脈理解を問う傍線部説明問題では、よく傍線部の前後の文章がヒントになるといわれていますが、解答を絞り切れない場合は確認する範囲を広げて、傍線部と同じような表現が用いられている別の文やその前後にも着目してみましょう。
2-3. 和歌
早稲田大学の「古文」では、和歌を含む文章もよく出題されます。歌の内容を問う形が頻出ですが、解答する際には和歌そのものだけに注目するのではなく、本文との関連性を意識するようにしましょう。
和歌の中には物語の核になる重要なものも多いため、文章全体を理解する上でも助けになります。比喩などの技巧によって一見風景など別の事象を詠んでいる歌でも、本文と対応していることが多いです。詠み手の状況や人間関係、返歌であるならそれまでに登場した歌も重要な着眼点となります。
和歌独特の修辞法の知識を問う出題も多いため、枕詞、掛詞など和歌の知識ももれなく確認しておきましょう。
2-4. 文法問題
文法知識のみで解ける、比較的基礎的な内容も出題されるため取りこぼしのないようにしましょう。
一方、敬語問題も頻出ですが、主語を把握しないと解けない問題も多いため人物関係など文脈をつかむことが大切になります。主語を把握するためには、接続助詞など文法も手掛かりになるでしょう。
・「て」「で」→主語が替わりにくい
・「を」「に」「ど」「ば」「が」→主語が替わりやすい
2-5. 内容理解を問う問題
本文内容一致問題をはじめ、様々な形で内容理解を問う問題が課されるため、文脈をしっかり理解していないと解けないものが多いです。
内容理解が細かい部分まで問われる早稲田大学の「古文」では、読解力はもちろん、古文常識や時代背景を十分に理解することが助けになります。現代の価値観で読み進めると誤読してしまうことも多々あり、当時の人々の価値観を理解することが大切です。
それらが理解できていれば、文章のテーマや物事の良し悪しを掴むことができ、解答を進めやすくなります。登場人物の「事実に対する感情」を選択させる問題も頻出するため、ぜひ意識してほしいポイントです。
3.【漢文編】問題形式別対策
早稲田大学・一般選抜入試の「漢文」でよく問われる問題形式ごとに、対策のポイントを解説します。
3-1. 空欄補充
空欄に当てはまる漢字を選ぶ問題です。内容理解を問う形で出題されることもありますが、基本的には文法や漢文独特の用語について意味を問われる場合が多いです。そのため、句形だけでなく重要用語の意味も確認しておくようにしましょう。
漢詩が出題文に含まれる場合、韻などの規則を押さえておくことも重要です。
3-2. 文法問題
適切な返り点を選ぶ問題、書き下し文や和訳などが出題されます。句形や重要語をしっかりと覚えておけば解答できる基礎的な問題が多いです。ただし、1つの文に解答のポイントとなる句形が複数含まれていることが多いため、見落とさないように気を付けましょう。
選択問題だけでなく、直接解答用紙に返り点や書き下し文を記入する問題も多いため、自分の力で解けるまで文法の知識を完成させておくと良いです。
3-3. 内容理解を問う問題
傍線部説明、内容一致問題などが出題されます。基礎知識のみで解ける問題が多いですが、受験生は文法問題に気を取られて漢文の内容を把握しきれていないことがあります。読み下しの際に「現代文」や「古文」と同じく内容を理解することを第一に意識し、時間のロスを防ぎましょう。
漢文では教訓的な内容の文章が出題されることが多いため、筆者が文章を通して何を伝えたいのかを掴むことを念頭に置いて本文を読み進めていくことをおすすめします。
漢詩では特に対比が文章の核になることが多く、問われやすいポイントになります。
4.「早稲田の国語・古文漢文」対策におすすめの問題集
4-1. 国語全体(過去問系)
どちらの問題集も、演習量が不足しがちな「漢文」と「現古漢融合文」が収録されているためぜひ活用してください。
『早稲田の国語[第8版]』(教学社)
大学入試の過去問集である「赤本」の中で、早稲田大学の過去12年分の「国語」入試問題から学部問わず厳選された23題が収録されています。「現代文」「古文」「現古漢融合文」「漢文」と章が分かれており、苦手分野に重点的に取り組むこともできます。分野別の学習法も基礎から紹介されているため、本格的に過去問を解き始める準備としてもおすすめの1冊です。
『2024早大入試プレ問題集 国語』(代々木ライブラリー)
早稲田大学に特化した模試である「早大入試プレ」の過去問が、4年分収録されています。全学部の出題形式を網羅しており、早稲田大学の「国語」の傾向が反映されています。不正解の選択肢についてもどこが誤りなのか丁寧に説明されているなど充実した解説によって、国語力を鍛えることができるでしょう。問題のレベルとしては早稲田大学の実際の入試問題よりやや難しくなっているため、「国語」を得点源にしたい人に特におすすめです。
4-2. 古文編
『GROUP(グル-プ)30で覚える古文単語600』(語学春秋社)
古文単語が覚え方別に30グループに分けられており、その単語に合った効率的な覚え方が解説されています。意味だけではなくその単語の由来や、使われた際の時代背景など解説が豊富で、暗記にとどまらず本文の読解に繋がる単語力が身につきます。600語と古文単語帳の中でも収録数が多いため、単語力が求められる早稲田大学の古文対策におすすめです。
『古文上達 読解と演習56』(Z会)
入門編・基礎編・演習編の3段階で構成されており、段階的に古文演習に取り組むことができます。
入門編では文法、単語チェックや時代背景などの基礎的な知識が、基礎編・演習編には文章問題が収録されています。
基礎編では短めに抜粋された頻出古文作品に一通り触れることができます。
演習編では長文で難易度の高い問題がメインとなるので、基礎編と合わせて自分に合ったレベルの問題を選択してください。全体で56の文章問題が収録されており、古文演習の機会をたくさん確保したい人に特におすすめです。
5
『大学入試 全レベル問題集 古文(4)私大上位・私大最難関・国公立大レベル』 (旺文社)
難関私立大学、国公立大学で出題された14の文章問題が収録されています。本文全体の現代語訳をはじめ、品詞分解による説明、古文の読解ルールなど解説が充実しています。
解説で古文の読み方・問題の解き方を復習できるので、過去問に本格的に取り組む前の古文演習におすすめの1冊です。
4-3. 漢文編
『漢文道場 入門から実戦まで』 (Z会)
基礎編・錬成編・実戦編の3段階で構成されています。
基礎編では主に文法事項の解説、確認問題が中心です。錬成編と実戦編には演習問題が収録されており、段階的に問題の文章量・難易度が上がっていきます。
選択問題だけでなく、空欄補充など様々な形式の問題が出題されており、複数の問題形式が登場する早稲田大学やその他私立大学の漢文を受験する人におすすめです。
5. まとめ
早稲田大学・一般選抜入試における「古文」・「漢文」を対策する上での要点をまとめます。
古文:基礎知識も「暗記」だけでなく「理解」することが大切。作品背景の知識もヒントに内容の本質理解を第一に。和歌の対策も忘れずに!
漢文:短い解答時間で高得点を狙いやすい分野。基礎をしっかりマスターして不足しがちな演習をこなす!
難解な文章や紛らわしい選択肢が登場する早稲田大学入試の「国語」ですが、奇をてらった対策は必要ありません。まずは本記事と過去問を参考に、“早稲田大学ならでは”の出題傾向や特徴を掴んでください。
特に「古文」・「漢文」では、基礎知識を十分に自分のものにした上で、それを読解に応用する力が重要になります。「古文」・「漢文」を得点源にして、早稲田大学合格を掴みましょう!
*早稲田大学の入試対策や「古文」・「漢文」の勉強におすすめの参考書については、これらの記事も参考にしてください。
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