文系の受験生が難関国公立大学を受けるにあたり、鬼門となるケースがあるのが「文系数学」です。共通テストとは異なり記述式で解答が求められることも多く、問題も難解な場合もあることから、苦手としている受験生も多いようです。しかし苦手な人が多いからこそ、得意科目にすることができれば、その分大きなアドバンテージになるとも言えるでしょう。
「文系数学」の特徴を分析し、時期別にどのような対策をすれば良いか徹底解説します!また、レベル別におすすめの参考書を4冊紹介しますので、あわせて参考にしてください。
1. 「文系数学」とは?
「文系数学」は難関国公立大学の二次試験で課されることが多く、大学によって出題形式もさまざまです。全ての大学の文系学部・学科が「数学」を課しているわけではないため、志望大学の募集要項等をチェックしておきましょう。
1-1. 理系数学との違い
一般的に、理系学部・学科で入試科目となる数学と「文系数学」には、いくつかの違いが見られます。
理系数学の出題範囲は「数学I・数学A」「数学II・数学B・数学C」「数学III」となる場合が多いですが、「文系数学」の範囲は「数学I・数学A」「数学II・数学B・数学C」までとなる場合が多く、「数学III」は範囲とならないことがほとんどです。高校でも文系クラスでは「数学III」の授業がない学校も多いでしょう。
このように出題範囲は理系に比べて狭いですが、問題自体が簡単になるというわけではありません。難関大学の「文系数学」問題は、場合によっては理系よりも難しいと言われることもあります。油断せずにしっかりと対策をおこないましょう。
1-2. 二次試験で「文系数学」が課される大学
現在文系の学部・学科で二次試験に「数学」を入試科目としている大学は40校ほどあります。
詳しく対象の大学を調べたい場合は、旺文社の「大学受験パスナビ」を利用すると便利です。二次試験などの教科を絞って検索できます。大学の実施要項などと合わせて参考にしてください。
*参考:「旺文社 大学受験パスナビ」
数学が入試科目となる学部としては、教育学部や経済・経営学部などが多くなっています。
教育学部は、例えば小学校課程であれば全ての科目を理解しておく必要があるため、理系でなくても「数学力」を求められるでしょう。同様に経済・経営学部もデータ分析や計算などを必要とするため、近年二次試験で数学を課す大学が増加しています。
文系であったとしても、後の大学の学びに繋がるという意味で、「数学」が重要であると位置づけられるケースがあるのです。
2. 「文系数学」時期別の対策法
「文系数学」の対策について、時期別にどのような勉強計画を立てれば良いかモデルとなる例を紹介します。
2-1. 高校1・2年 ~基礎固めの時期~
数学は暗記教科ではないため、日々の勉強の積み重ねが重要です。
特に苦手意識がある人は早め早めの対策を心がけましょう。1・2年生の内に習った内容をしっかりと定着させておくことで、受験期になってはじめからやり直すといったロスを防ぐことができます。余裕のある内に授業内容を振り返ったり、参考書で問題をいくつか解き直したりしておきましょう。
(1・2年生の内にもっと基礎演習をしておけば良かった…と後悔している先輩は多いです)
1・2年で基礎を固めておけると、周りとの差を大きく広げることができ、問題演習や過去問対策にもスムーズに移行できるはずです。
2-2. 高校3年夏まで ~基礎を固めつつ問題演習を進める~
高校3年生になり受験学年に突入してからは、夏までを一区切りとして考えてみましょう。1・2年の内に対策しきれなかった苦手分野を、ここまでで少しでも克服できていると良いです。
他教科との兼ね合いもあるので、数学だけに時間を使うことはできません。模試などを活用して自分の苦手分野・得意分野を理解し、効率よく勉強を進めましょう。
特に夏休みは自由に使える時間も増えるので、多くの問題にあたることのできるチャンスです。共通テストを見越して過去問等を解いてみるのも良いでしょう。
2-3. 共通テスト前 ~演習を重ねつつも共通テスト優先で~
夏休みが終わった後、10月ぐらいからは、1月に迫る共通テストを意識しましょう。
共通テストの配点割合が高めな大学もありますので、自分の受験する大学に応じて共通テストの勉強と二次試験の勉強の割合を考えながら対策を進めることが大切です。
二次試験に関しては、この時期過去問に挑戦できるくらいが望ましいかもしれませんが、数学が苦手な人にとっては余裕があまりないかもしれません。共通テストの対策をしつつも、過去問を見て「こんな問題が出るんだな」と認識しておくだけでも良いので、志望校が決まったら過去問は早めに入手しておきましょう。
2-4. 共通テスト後 ~過去問演習や苦手克服に努める~
共通テストが終了したら、後は二次試験の対策を進めるのみです。
基本は過去問演習で、答案を作成したら学校や塾の先生などに添削をお願いしてみましょう。
二次試験は記述式解答であることが多く、答案に対しては細かな採点基準が設けられています。最終的な解答が合っていたとしても要素を満たしていなければ減点されてしまうことがあるため、答案を精査してもらうことが大切です。
過去問をやり尽くしてしまったら、同じレベルの他の大学の問題を解いてみるのもおすすめ。
二次試験までの間が受験期の中で最も苦しい時期かもしれませんが、演習を着実に繰り返すことで自信を持って本番に臨むことができるはずです。
3. 「文系数学」おすすめの参考書4選
「文系数学」の対策におすすめの参考書をレベル別に4種類紹介します。
3-1. 基礎固めにおすすめ
まずは教科書レベルから理解し、コツコツと数学の基礎を積み上げていきましょう。
基礎固めにおすすめしたいのがこのシリーズです。
・『やさしい高校数学(数学Ⅰ・A)改訂版』(Gakken)
・『やさしい高校数学(数学Ⅱ・B)改訂版』(Gakken)
・『やさしい高校数学(数学C)』(Gakken)
「数学I・A」「数学II・B」「数学C」の科目別に分かれており、教科書レベルから詳しく説明されていて初心者におすすめの参考書です。
普段の授業等と合わせて活用することで、より数学への理解が深まるでしょう。つまずきやすいところがわかりやすく説明されているため、数学に苦手意識を持っている人にも適した1冊となっています。
3-2. 基礎定着後の問題演習におすすめ
基礎がある程度固まったら問題演習に取り組み、数学力を磨いていきましょう。
基礎定着後の問題演習におすすめの参考書は以下のシリーズです。
・『数学I・A 基礎問題精講 六訂版』(旺文社)
・『数学II・B+ベクトル 基礎問題精講 六訂版』(旺文社)
・『数学Ⅲ・C 基礎問題精講 五訂版』(旺文社)
「基礎問→精講→解答→ポイント→演習問題」で1つのテーマを解説しており、解法の流れがわかりやすくなっています。
多くの良問が収録されており解説も丁寧なので、基礎固めと演習を両立できる参考書となっています。
『文系の数学 重要事項完全習得編』(河合出版)
文字通り文系数学に特化した参考書となっています。
重要テーマの解説に加え、演習問題が115題も掲載されており、この1冊をやりこめば数学力は格段にアップするでしょう。重要項目ごとに「必勝ポイント」がまとめられていたり、解答解説には陥りやすいミスや注意点などが詳しく書かれていたりなど、本質的な理解を深めることができ、応用力も鍛えられる1冊です。
3-3. 受験に向けたレベルの高い問題演習におすすめ
数学の理解をさらに深めたい、難関大学に挑戦したいといったケースにぴったりな、レベルの高い参考書も紹介します。過去問演習が優先ですが、余裕があれば利用してみてください。
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『入試精選問題集 文系数学の良問プラチカ 数学1・A・2・B・C 四訂版』(河合出版)
難関大学の入試問題が多数収録されており、解きごたえのある1冊となっています。
解答解説が実際の入試問題を意識した構成となっており、別解も提示されていることから、自学自習にも適しています。
図を多用しているためわかりやすく、視覚的にも理解しやすいでしょう。基礎をマスターした上で更に力をつけたいといった受験生におすすめしたい1冊です。
4. まとめ
文系受験生にとって「数学」は苦手意識を抱くケースが多いかもしれませんが、地道にコツコツと基礎を積み上げていくことで、確実に応用力を鍛えることができる科目でもあります。数学を得意科目にすることは難しくとも、足を引っ張らない程度まで伸ばすことは十分可能。まずは毎日少しでも数学に触れるところから始めましょう。
自分の実力を模試などで把握し、参考書のどれか1冊を完璧にやりきることを目標にしてみてください。苦手な人ほど1冊に頼ることに不安を覚えるかもしれませんが、自分のレベルにあった勉強の完成度を着実に磨いていくことが何より大切です。
1冊完璧にできた頃には、あなたの数学力は確実に身についているはず。「数学」を味方につけて受験を乗り越え、志望校合格をつかみましょう!
*文系の数学対策についてもっと知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてください。
>>【共通テスト】数学が苦手な人のためのモチベーションの高め方と共通テスト対策法
>>東大生に学ぶ大学受験「数学」の勉強法 ~「できない・わからない」を解決する苦手からの脱出ルート~