「高校数学」は「中学数学」と難易度が大きく異なり、その違いに苦労することが多くあるでしょう。「これから数学1Aを勉強するけど不安だらけ…」「数学1Aの成績が上がらない…」――そんなお悩みをこの記事で解消しましょう!
数学1Aの基礎を理解するために学ぶ上で意識すべきことや、基礎固めにおすすめの参考書を紹介します。
※この記事では主に、2022年度の高校1年生から移行が開始された〈新課程〉における「数学」の内容について扱います。
それ以前の〈旧課程〉の内容についても一部触れますが、履修および大学受験時の学年についてご注意ください。
1. 【現行課程→新課程】「数学」履修内容の変更について
この記事では2022年度の高校1年生から順次移行となる、〈新課程〉の「数学」について扱います。2018年3月30日に文部科学省が告示した「高等学校学習指導要領」に則り、2022年度の高校1年生から「数学」の履修内容が変更されますが、「数学1」について大きな変更点はありません。
一方「数学A」については、現行課程の「整数の性質」で学習する内容が、新課程では一部「数学1」の「数と式」と「数学A」の「数学と人間の活動」という単元に分かれて移行します。(変更内容の詳細については、本記事の3章で取り上げます)
共通テスト(2022年度の高校1年生以下が対象)の出題分野の構成変更についても注意が必要です。[数学①]教科からは、「数学I」「数学I、数学A」の2科目のうち最大1科目選択となります。「数学A」について、現行課程では3分野(「場合の数と確率」「整数の性質」「図形の性質」)の出題から2分野を選択解答(つまり大問3問から2問を選択)することになっていますが、新課程では2分野の内容(「図形の性質」「場合の数と確率」)をすべて解答する(予定)となっています。
以上のことを把握し、新課程入試に臨むイメージを持って、今後の学習を進めましょう。
2. 数学1Aを勉強する上で大切なこと
2-1. 中学数学の基礎を本質的に理解する
「中学数学」と「高校数学」の違いは何でしょうか。
「高校数学」では「中学数学」に比べて、理解しなければならない公式の量が多くなり、内容も複雑になっていきます。さらに扱う内容が抽象的・概念的になり、問題の条件に対する本質的な理解が必要となります。したがって、公式を丸暗記して、個々の問題に当てはめて考えるといった、「中学数学」である程度通用した解き方では太刀打ちできなくなる場面が増えてくるでしょう。
しかし、その「高校数学」で学ぶ内容は、「中学数学」が土台となり、そこからより応用的・発展的な内容へと踏み込むといったものです。したがって、「高校数学」を学ぶ前に「中学数学」の内容を理解することが、「高校数学」を理解するための近道と言えるでしょう。「中学数学」の内容で疑問が残っている単元があれば、まずはそこを解決することが必要です。
2-2. 基礎の積み重ねで応用問題に対応する
「数学1A」は「中学数学」が基礎となっていますが、「高校数学」全体でみると「数学1A」は、今後学習する「数学2B」「数学3C」の基礎となります。このように、「高校数学」で新たに学習する単元では、それまでに学んだことが土台となって授業が展開されます。
後から前の単元に戻って、自分が理解していないところを探すのはとても大変です。学習する中で疑問点があればそのままにせず、その都度解消するようにしましょう。
※「高校数学」を学習する上で大切なポイントは、これらの記事でも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
>> 【苦手克服は基礎固めから!】数学2B(数IIB)の効果的な勉強法とおすすめ参考書4選
>> 数学3(数III)の苦手意識を克服!着実に成果が上がる勉強法とおすすめ参考書4選
3. 【新課程】数学1Aの全体像 ~各単元の特徴~
「数学1」では大きく分けて、(1)数と式(2)図形と計量(3)2次関数(4)データの分析の4つの単元を学習します。
「数学A」では、(5)場合の数と確率(6)図形の性質(7)数学と人間の活動の3つの単元のうち、2つの単元を学習します。
各単元を学習する上でのポイントについて簡単に紹介しますので、ぜひ勉強計画に役立ててください。
3-1. 数と式
「式の計算」「実数」「1次不等式」「集合と命題」の4つの分野を扱います。
「式の計算」では展開や因数分解について、「実数」では有理数や平方根について扱います。「式の計算」「実数」「1次不等式」では中学数学の範囲が基になっているため、しっかり復習してから臨みましょう。
「集合と命題」では必要十分条件や背理法などを扱います。新たな用語が登場するため混乱しがちですが、「1次不等式」までの内容と用語の定義をしっかりと押さえていれば、特につまずくことなく問題を解き進めることができるでしょう。
3-2. 図形と計量
正弦(sin)余弦(cos)正接(tan)といった「三角比」や、それらを応用した「正弦定理」「余弦定理」について扱います。特に「三角比」の考え方は、数学2の「三角関数」や数学C(現行課程では数学B)の「ベクトル」、数学3Cの「複素数平面」「微分法」「積分法」で利用するため、しっかり理解しておきましょう。
「数と式」の内容がしっかり頭に入っていれば、スムーズに習得できるでしょう。
3-3. 2次関数
「2次関数」は数学1の中で最も問われることの多い単元であり、数学2B、3Cにも直接的につながる内容であるため、とても重要です。中学数学の「2次関数」の内容に加えて、「2次関数の最大と最小」「2次関数の決定」「2次不等式」などを扱います。
中学数学では「2次関数のグラフに関する三角形の面積を求める」など幾何学的に解くことが多かったですが、高校数学では係数や定義域(変数 x のとりうる範囲)を変数として動的に考える問題が増えてきます。したがって、問題の条件を頭の中でイメージするのが難しいと感じることも多くなるでしょう。
中学数学の「2次関数」や数学1の「数と式」の内容をしっかり理解してから、取り組みましょう。
3-4. データの分析
「分散と標準偏差」「データの相関」に加え、新課程では「仮説検定」「外れ値」の考え方も扱います。他の単元に比べて内容量が少なく、他の単元との結びつきも薄いです。
一方で共通テストなどではしっかり出題されるため、抜けがないように学習しましょう。
中学数学(現行課程では高校の数学1)で扱う「四分位範囲」「箱ひげ図」の考え方を復習してから臨みましょう。
3-5. 場合の数と確率
「場合の数」では「順列」「円順列」「重複順列」「組合せ」などを扱います。これらを応用して、「確率」では「独立な試行の確率」「反復試行の確率」「条件付き確率」などを扱います。
数学Bの「数列」につながる内容であり、受験においても難関大学を中心によく問われる単元です。
学習を始めるにあたり中学数学の「確率」を復習するとともに、数学1の「数と式」で学習する「集合と命題」の分野について理解を深めておきましょう。
3-6. 図形の性質
「三角形の重心・内心・外心」「チェバの定理」「メネラウスの定理」「方べきの定理」などを扱います。平面図形での考え方を応用して、空間図形に関する問題も扱います。
中学数学の幾何分野を基に、新たな定理や公式を学ぶといった流れであるため、中学数学の図形問題を復習してから臨みましょう。
また、他の単元に比べて証明問題が多いため、各用語の定義や公式の使いどころなど丁寧に理解する必要があります。
3-7. 数学と人間の活動
新課程で新設された「数学と人間の活動」では、現行課程の「整数の性質」から移行した「整数の約数・倍数」「ユークリッドの互除法」「n進法」などの内容に加え、「座標の考え方」「ゲーム・パズルの中の数字」といった内容についても扱われています。
扱う内容としては整数に関する内容が大部分を占めているため、大学入試でも「整数」の分野が多く問われるでしょう。
数学1の「数と式」で因数分解や不等式といった基本的な計算をマスターしておきましょう。
4. 【新課程】数学1Aの基礎固めにおすすめの参考書4選
「数学1A」の学習内容の理解や基礎問題の解法習得に役立つ参考書・問題集を、厳選して4冊紹介します。
『高校 とってもやさしい数学I 新課程版』(旺文社)
数学で出てくる用語の定義や公式の使い方などについて、イラストを交えつつ解説しています。特に大切なところは強調して書かれているため、各項目の要点を抜けなく押さえることができます。
要点の説明に沿った穴埋め形式の確認問題が収録されており、基本事項を定着させるのに有用です。
「数学A」科目も同じシリーズに、『高校 とってもやさしい数学A 新課程版』が刊行されています。
「教科書の内容を理解するのが難しい」「学校の授業についていけない」といったケースにおすすめです。
『数学I・A 入門問題精講 改訂版』(旺文社)
各単元の公式や問題の考え方について、初めから丁寧に説明しています。
教科書に載っている内容に加えて、問題を解く上でのテクニックや「どのように解の公式が導けるか」「なぜ90°より大きい角の三角比を考えることができるのか」といった、数学を勉強していると生じる疑問についても解説しています。扱っている問題数は少ないため、基本的には参考書として使用し、他の問題集も併用しましょう。
「基本は理解できているけれど、成績が伸び悩んでいる」「数学が単なる公式の丸暗記になっている」と感じている場合におすすめの1冊です。
『数学I・A 基礎問題精講 六訂版』(旺文社)
数学1Aで押さえておきたい基本問題を厳選して約300題扱っており、教科書から入試問題を解くための橋渡しとなるような問題集です。そのため、学校の定期試験から標準レベルの国公立・私立大学入試の対策にまで使用できます。
問題を解くための方針やポイントが掲載されており、各問題の解説は見開き1ページまでと、とてもコンパクトにまとまっています。そのため、学校の授業進度に合わせて使用したり、短期間で基礎を復習したりするのにもおすすめです。
この問題集で基礎が身についてきたら、同じシリーズで1つ上のレベルの問題集である『数学I・A 標準問題精講 改訂版』にチャレンジしてみましょう。
『高校数学公式活用事典 第五版 』(旺文社)
「高校数学」(数学1A2B3C)における重要公式・基本事項について広く扱った事典型の参考書です。
見開き左ページに公式や重要事項がまとまり、右ページに公式の解説や活用方法がまとまっています。そのため、演習を進めていく中で分からないところがあれば、辞書的に調べて抜けているところを探すといった使い方もできて便利です。
「公式の使い方を簡潔に理解したい」「受験勉強まで使える参考書が欲しい」といったケースにもおすすめです。
5. まとめ
2022年度の高校1年生からスタートした新課程の「数学1A」。細かい単元内容の変更はありつつも、勉強する上で大切なことは変わらず以下の2点となります。
- 中学数学の基礎を本質的に理解する
- 基礎の積み重ねで応用問題に対応する
「数学1A」は「中学数学」に比べて難度が上がりますが、決して尻込みする必要はありません。つまずいた時には、今まで学習した内容を丁寧に復習しましょう。
「数学1A」の内容が、高校2年生で学ぶ「数学2B」や「数学3C」にもつながっていきます。基礎固めにおすすめの参考書も有効に利用しつつ、問題を解ける楽しさを知って「高校数学」を今から得意にしましょう!