国公立大学や難関私立大学での入試で出題される英作文。志望大学で英作文の出題傾向があるなら、対策が必要となります。
とはいえ、英作文・ライティングは英語の技能の中で独学が難しい分野。「プロ」に直接添削してもらうといった選択肢に加え、英作文対策に役立つスマホアプリを利用することも考えてみてはいかがでしょうか。
この記事では、大学受験の英作文・ライティング対策にも有効なアプリとその効果的な使い方を紹介します。
なお、別の記事では、英作文の添削サービスについても紹介しています。こちらも合わせて参考にしてください。
>> 大学受験の英作文・ライティング対策に不可欠な添削指導 ~おすすめサービスと利用上の注意点を解説!~
1. 英作文・ライティング対策の“プラスα”として
英作文は独学するのが非常に難しい分野です。なぜなら、自分では正確な採点をすることが難しいからです。
「問題集を解いて模範解答を見ればよいのでは?」と思うかもしれませんが、英作文問題の模範解答はあくまでひとつの解答例に過ぎず、採点にあたっては部分的にしか役立ちません。
そのため、和文英訳、自由英作文を問わず、英作文の上達には英語のプロにチェックしてもらうことが必要不可欠です。
学校や予備校の英語の先生に見てもらえるならそれが一番ですが、自分1人で先生を頻繁に独占するのは実際難しいですよね。そこで、インターネットやスマホを使って、何とか自力で英作文の力を伸ばせないものか、有効なツールを検討してみましょう。
実はこれらのツールを上手に活用すれば、効率的に英作文を独学するのも不可能ではありません。
2. 大学受験の英作文・ライティング対策にも効果的なアプリ
2-1. 『Duolingo』
まずは、英語学習用アプリとして世界的な人気を誇る『Duolingo』(デュオリンゴ)を紹介しましょう。
『Duolingo』は英作文に特化したアプリではなく、英文法やリスニング力など、語学としての英語を総合的に学べるようにデザインされたアプリで、英文を和訳したり、日本語を英訳したり、流れてくる英語音声を書き取ったりといった、さまざまな課題に答えていくうちに自然と英語への理解が深まるという仕組みになっています。
利用者の英語力がアップしていくにつれ、問題のレベルも上がっていきます。そのプロセスの中で、楽しみながら基本的な英作文の力が身につきます。マルチな英語技能が問われるこれからの大学受験対策にも、もちろん有効となるでしょう。
『Duolingo』は英語に苦手意識があったり、勉強になかなか集中できなかったりする人が、ゲーム感覚で英語になじむというのに適しています。文脈に合わせて適切な単語を選んだり、名詞や動詞を正しい形で運用したり、時制を使い分けたりといった、英語を組み立てるための基礎的な訓練はひと通りこのアプリでカバーすることができるでしょう。
これだけ多くの機能を搭載していながら、基本機能を無料で利用できるというのも『Duolingo』の大きな魅力です。
(※学習回数などの制限が解除される『Duolingo Plus』の利用には月額料金がかかりますので、注意してください)
【ダウンロード】
・Apple端末(iPhoneなど)向け⇒『Duolingo』
・Android端末向け⇒『Duolingo | 英語を無料で学ぼう』
価格:無料(『Duolingo Plus』の利用は月額課金)
2-2. 『添削つき英作文アプリ ベストティーチャー』
続いて紹介するのは『添削つき英作文アプリ ベストティーチャー』です。
Webサービス『「書いて、話す」オンライン英会話ベストティーチャー』のアプリ版で、外国人講師と文章(最大100単語)でメッセージのやりとりを数回(最大5回)交わし、やりとりの終了後、利用者が作成した英文を添削してくれるというものです。
レッスンは、1つのトピックをめぐって文字で会話する形で進行します。トピックは「趣味について話してみよう」「今日あったことについて話してみよう」「週末に何をしたかについて話してみよう」など、多数の選択肢から自由に選ぶことができます。
こちらがメッセージを送ってから先生の返信が届くまでに、数分~数時間の時間がかかりますが、スキマ時間を使って利用することにしておけば気になりません。
やりとりが終了すると、こちらが送った英文が細かく添削されて返ってきます。ただ誤りが訂正されるだけでなく、なぜそうなるのかという説明までついてきます。
唯一の難点は、この説明が英語で書かれているということです。英語が苦手な人にはハードルが高く感じられるかもしれません。
大学受験対策に活用する際には、「自由トピックで会話しよう」を選び、大学入試で狙われやすいテーマで会話する「英語エッセイを添削してもらおう」を選択して、自分の作成した英文をチェックしてもらう、といった利用法がおすすめです。
アプリでは3回分が無料で利用できますが、これは「お試し期間」で、それ以降の利用には有料会員になる必要があります。内容が充実している分、料金設定もやや高めです。価格詳細についてはこちらのサイトで確認してください。
「通常英会話コース」「試験対策コース」「英検®対策コース」の3つが用意されていますが、このうちの「試験対策コース」に「TEAP」と「GTEC CBT」が含まれています。大学入試でこれらの試験を利用する人は、このアプリの利用を検討してみてもよいかもしれません。
【ダウンロード】
・Apple端末(iPhoneなど)向け⇒『添削つき英作文アプリ ベストティーチャー』
・Android端末向け⇒『添削つき英作文アプリ ベストティーチャー』
価格:アプリのダウンロードおよびお試し3回分の利用のみ無料。以降はコースによって月額12,000~16,200円の有料会員になる必要がある。
2-3. 『Grammarly Keyboard』
3つめに紹介するのは、自動校正ソフト『Grammarly Keyboard』です。
校正とは、書かれた文章に間違いがないかチェックして修正すること。もともと日本人向けに開発されたものではなく、説明書きなどもすべて英語なのでやや上級者向けと言えますが、自分では気づかない盲点(文法知識の穴やスペルの間違い)に気づくきっかけを作ってくれるので、大いに利用価値のあるアプリです。主に以下のような機能を搭載しています。
・英文法のチェック機能
・文脈に応じたスペリングチェック
・句読点の訂正
・より適した単語を提案したり、同義語を表示したりする機能
たとえば、She is married with a American.という誤りを含んだ英文を入力してみると、前置詞withをtoに変えるべきであること、冠詞aをanに変えるべきことが指摘されます。
使い方についても簡単に説明します。
まずアプリをダウンロードし(無料)、アプリを開くとキーボードへのアクセス許可が求められるので、許可を選択します。するとメールアプリやLINEの入力キーボードの言語選択に「Grammarly」が追加される(画像参照)ので、これを選択します。あとは英文を入力するだけです。
自分で作成した英作文をスマホに入力するだけでチェックできるので、手軽さという点で非常に優れたアプリです。「入力するのに時間がかかるのでは?」と思うかもしれませんが、その場合は音声入力を活用するといいでしょう。正しい発音でなければ正しく認識されないので、発音の訓練にもなり一石二鳥です。
【ダウンロード】
・Apple端末(iPhoneなど)向け⇒『Grammarly Keyboard』
・Android端末向け⇒『Grammarly Keyboard — Type with confidence』
価格:無料
3. 英作文・ライティング対策にアプリを利用する上での注意点
3-1. 試験本番に「予測変換」はない
スマホでは単語の一部を入力した時点で「予測変換」が表示されます。この機能は英語で入力する際にも適用されます。
つまりスマホでは、スペリングを正確に知らない単語でも予測変換を利用すれば入力できてしまうことになります。大変便利な機能ではありますが、受験勉強という観点から見れば、スペリングの暗記を阻害するリスクもあるため、注意すべき点と言えるでしょう。
当然、入試本番に「予測変換」はありませんから、普段の勉強でアプリを利用するとしても、それと併せて「自分の力だけで書く」練習も積んでおくようにしましょう。
3-2. 技術的な指導までは受けられない
ここで紹介したアプリは、大学入試対策の“プラスα”、すなわち補助的な役割を果たすには十分ですが、本格的な対策そのものとしては、不十分な部分があることも意識しておきましょう。
これらのアプリやサービスは、文法や語法のミスを指摘し、適切な表現に直してはくれますが、英文エッセイのスタイルとして適切か、あるいは本当に説得力のある文章が書けているかといった点までは添削してもらえません。
また、特に無料アプリでは、英文の誤りが見落とされてしまうこともしばしばあります。英作文は正しく採点するのがきわめて難しい分野ですので、それをアプリだけで補完しようとしても、どうしても限界があるというのが実情です。アプリに頼り過ぎるのではなく、サービスの特性に留意しながら賢く利用するというのが、アプリを使って英作文対策の勉強を進めていく際のポイントです。
3-3. 人によって向き・不向きがある
受験勉強にアプリを利用する、つまりスマホを利用するのは、人によって向き・不向きがあります。
例えば、電車やバスでの通学時間が長いため、その時間を有効活用するという用途であれば、大いに役立つ可能性を秘めています。
一方、四六時中メールやSNSの通知が表示されるような状態では、勉強には集中できません。仮にメッセージアプリの通知を表示しない設定にしても、勉強中につい魔が差してネットの動画などを見始めてしまうかもしれません。
スマホは勉強の役に立つ一方で、集中力を阻害する要因にもなり得ます。しっかり自分で自分のスマホの使い方に注意した上で、受験勉強に活用しましょう。
4. まとめ
最後にこの記事のポイントを振り返りましょう。
英作文の上達には自分の答案を英語のプロにチェックしてもらうことが必要不可欠ですが、対策の“プラスα”としてスマホアプリの活用も有効です。次のようなアプリの利用も検討してみましょう。
●『Duolingo』
・基本的な動詞や名詞の運用、時制の選び方などが学べる。
・英語が苦手な人でもゲーム感覚で楽しみながら勉強できる。
・基本的に無料での利用が可能。
●『添削つき英作文アプリ ベストティーチャー』
・外国人講師による英文添削サービス。
・細かな添削に加え、なぜ間違っているかという理由も説明してくれる。
・有料サービスなので利用開始前に料金の確認・検討が必要。
●『Grammarly Keyboard』
・自動校正アプリ。自分の入力した英語のスペリングや文法の誤りを指摘してくれる。
・英文法知識の穴やスペリングの間違いなど、自分の弱点に気づける。
・基本的に無料での利用が可能。
また、スマホを使って勉強するにあたっては、次の点に注意してください。
・スマホには「予測変換」機能があるため、スペリング暗記の妨げになるリスクがある。
・アプリによる添削には限界があり、誤りが見落とされてしまうこともある。
・メッセージアプリの通知などで気が散らないよう工夫が必要。
なお、英作文対策の有効な勉強法については、これらの記事でも紹介しています。
>> 英作文対策・スタートガイド ~これだけは知っておきたい基礎知識~
>> 大学受験の英作文対策で陥りがちなNG例4パターンと成果を出すための基本戦略
>> 英作文対策・中級編 ~和文英訳攻略のための3つの視点~
また、英作文の添削サービスについては、こちらの記事で紹介していますので、合わせて参考にしてください。
>> 大学受験の英作文・ライティング対策に不可欠な添削指導 ~おすすめサービスと利用上の注意点を解説!~