この参考書のレポート
- 総合満足度
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- わかりやすさ
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- 見やすさ
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- 使い勝手
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- 使い始めた時期
- 高校卒業後 ・6月
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- 使用期間
- 1年以上
使い方レポート
“語源・語根”を意識しつつ、各単語の意味の派生を秀逸に解説!
学参研究家の筆者としては、この『望月光の古文単語333 (超基礎がため)』が、古文単語集部門第一位。旺文社さんはHPでは公式に謳っていませんが、人気の「教室シリーズ」の中でも注目の『望月光の古文教室 古典文法編 改訂版』の姉妹本です。
1.概要
この単語集の最大の特徴は、「語句解説における意味派生の説明が秀逸で、ストーリーに無理がなくて腑に落ちやすい」こと。見出し語として“333語”とまずまずの語数を収録しながらも、一つ一つの語句解説が非常に丁寧で、紙面における説明の割合が類書に比しても高いです。
2.古文単語集選定の基本方針
古文単語の学習では、
・「語源・語根」を意識して単語そのものの「コアな意味」をつかみ、それがいかに派生した(と考えられる)のかという“ストーリー”を理解する。
ことが大切です。
つまり、「かなし=かわいい・いとしい」などと機械的に覚えるだけではダメということ。「語源・語根」を意識して、丁寧に語句解説がしてある単語集こそ利用価値が高いのです。
そして、そのポイントを押さえた上で“選ばれし良書”になるためには、
・いかに意味派生の過程をわかりやすく=覚えやすく説明しているか
と言うことが大切です。
この「意味派生の過程」を筆者は“ストーリー”と読んでいるのですが、望月先生はこの描き方がため息が出るほどお上手なのですよね…。同業者として、あべは足元にも及びません。(望月先生と比べるのが恐れ多いですが…。)
3.類書の現状
類書では、 同じように“語源・語根からの意味派生”を説明していても、古語辞典に見られるような硬派で(一見)学術的な過程説明が多いです。
執筆態度としては、それ自体はもちろん素晴らしいのです。しかし、有名古語といえども日本語学・国語学の分野ではまだまだ未解明な部分が多いのが実情なんですよね。
それゆえに、論理的に未整備な部分も多くて、硬派でもっともらしい説明をしていても、「この説明本当かなあ?」と疑ってしまうものや「この説明では、派生にあたっての意味の乖離が激しすぎて、効果的に覚えられないよ…」と思うものも散見されます。
これが、歴代の受験生を結果的に「古文単語=とにかく意味を丸暗記するしかない」という思考回路に陥らせる原因になっていたと筆者(あべ)は考えているのです。
4.本書の特徴①―覚えやすい意味派生の「ストーリー」
そんな中、望月先生は、自身の有する高い国語学の学術的蓄積を考慮しながらも、そこに縛られすぎない、“あえて大胆に”受験生ファーストの思想で貫徹された「ストーリー」で語句解説を行っています。学習者の日常に寄り添った説明などを多分に盛り込み、身近な出来事から楽しみながら学んでいけるので、類書に比べても覚えやすくなっているんですよね。
5.本書の特徴②―意味用法の掲載数・掲載法への行き届いた配慮
その上で、意味派生の「ストーリー」については、採用する意味用法を絞りすぎることなく、幅をもたせて「過不足ない」いい塩梅で掲載。意味用法の選定では、巨匠望月の技が光っています。
さらには、それらの意味用法の一部に限って(赤シートで隠せるように)赤字にするのではなく、全ての用法を赤字掲載してくれているので、「赤字の用法だけ覚えたけど全然古文が読めない」という学習者が発生することを防いでくれる、より良い効果が期待できますね!
その上さらに、「漫然とすべての意味を覚えさせる」のではなく、それぞれの赤字の訳の隣に「1と2を優先して覚えて、3・4は後回し」とか「2の意味がよく出る」などといったように、「その中でより大切な意味はどれなのか」や「どう学習を進めるべきか」ということがよく分かる記述になっているのだから、驚くほどに学習者ファーストが貫かれています!
6.使用上の注意点
ただし、「派生語」の掲載が少ないので、センターにせよ国公立二次にせよ、これ一冊で臨むことは筆者(あべ)は推薦しません。
題名に「超基礎がため」とうたっているところや書籍の解説に鑑みて、旺文社さんも望月先生も次に別の単語集を利用してくれることを意図しているのではないでしょうか?
7.次のステップを目指して
こちらの単語集の使用後に関しては、時間の余裕を見つつ、二冊目の単語集に取り組みたいところです。
もう少し詳しく言えば、次の一冊では、
・見出し語の語数がもとから確保されたものに取り組む
のがgoodですね!
具体的には、
・富井健二(東進)著『古文単語FORMULA600【改訂版】』(東進ブックス)
等が良いでしょう。(より詳しい話は、また上記の書籍等のレビューにてご説明しますね。)