この参考書のレポート
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- わかりやすさ
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- 見やすさ
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- 使い勝手
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- 使い始めた時期
- 高校卒業後 ・4月
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- 使用期間
- 1年以上
使い方レポート
“まずまず”の網羅性と精選性を持った「ハイレベル問題集」
本書は、一言でいえば、「ハイレベルな網羅系数学問題集」です。これ一冊を“完璧” に仕上げれば、文系生はもちろん理系生も、確実に数学を得点源にできます。
ただ、実際に本書にじっくりと取り組んで様々な分野を眺めてみますと、問題の選択や解説内容について、「皆さんにおススメです!」とはどうしても言いにくい特性がいくつも浮かび上がってきます…。
以下では、その内実を詳しく見ていきましょう。
1.問題・解説のレベル ―本書の使用対象者を検討しながら―
端的に言うと、あべの考える本書の使用対象者は、「現時点で数学が一定程度でき(=大手予備校の全国模試で偏差値60程度)、数学を得意教科として入試の武器にしたい」という学習者です。
それは、
① 入試問題の中でもそこそこなレベルの問題が取り上げられている。
② 全般的に問題の配列が「学習標準レベル」から「入試一般レベル」へとスムーズに誘導されていない。(分野によって差があり。例:〇→図形と方程式、指数・対数関数、△→三角関数、×→数列)
③ 解説の中で途中式や論理的な部分での説明が省かれているところが散見し、本書の使用に数学への“慣れ”が求められる。
④ 「研究」欄に採用される、公式の証明法や発展的内容に高度・抽象的な内容が適宜盛り込まれており、学習者が理解するには相応の困難が予想される。
という4点が主な理由。
そして、この4点から、「“入試レベル”(※「学習上」ではない)の初・中級者から使えて、この一冊であらゆる皆さんをバッチリ合格レベルまで導きます」というコンセプトではないことは、本レビューを読んでいる皆様もお気づきの通りです。
正直、この問題集をざっと見ていた時期は、「チャート式にかわりうる期待の良書現る!」と心躍らせていたのですが、しっかり腰を据えて取り組むにつれて上述のような現実がわかってきて、私(あべ)は期待が大きかった分、ショックも大きいものでした…。
ただ、「ハイレベル・難関大向け」というのは、問題集でよくあるコンセプトであり、それ自体が悪いわけではありません。
とはいえ、このタイプの本は「使う人を選ぶ」ことになります。そのため、「みんなが使いやすい全受験生必携の一冊」とはなりにくく、本書についても「誰でもこれを使えば安心です」とは言えません。
今後他のレビューで紹介していきますが、たとえ目標地点が「ハイレベル・難関大学」であっても、「学習者のレベルを問わず使える一冊」は存在するものです!
そういう観点からみると、玄人目には、この問題集はどうしても「解説の難しさ」からマイナスな印象が払拭できないのが本音ですね。
2.掲載される問題の“まずまず”の網羅性と精選性
とはいえ、本書は「網羅性」・「精選性」という意味では「まずまず」の出来。十分に合格点です。
前段から垣間見えたかもしれませんが、あべは、クリアすべき問題数が“かなり”多くて本当に重要な問題がぼやけがちな「チャート至上主義」には懐疑的立場です。
それは、「より精選された問題をより洗練された緻密な配列で構成することで、より効果的に数学を楽しんで学習できる」と思っているためです。
その意味では、本書は「チャート」に殴り込みをかけうる一冊です!
例えば、文理問わず最頻出の「数列」分野を取り上げてお話ししましょう。
チャートでは、例題だけでなんと「約50問」あるのですが、本書では、それが20問弱まで圧縮されています。単純計算で4割に削減されていますね。
しかし、ここでしっかりとプロの予備校講師の技が光っており、ただ問題を削るのではなく、「本当に必要な入試頻出の問題」はきちんと網羅しつつ、「一問で多くのことを吸収できる良問」を並べるという精選を行うことで、効率的かつ実践的に入試対応力をつけることができるよう配慮されています。
とはいえ、今挙げた「数列」など分野によっては、「この問題も頻出なのに…」といった問題が落ちてしまっていたり、「(入試レベルの)初級が省かれすぎ!」という事態が発生していたりします。
また逆に、「三角関数」などでは「これは優先度が低いよ…」といった問題が入ってしまっているのは看過できないポイントです。
そのため、近年の入試動向に鑑みると、“まずまず”の網羅性という評価になる訳なんですよね!
ただ、繰り返しになりますが、チャートの例題数「350弱」に比べて、本書では例題数が「165」ですから、単純計算でも「50%」削減。加えて、必要事項は及第点のクオリティできています。すなわち、問題はしっかりと精選されているということですね!