共通テスト「数学I,数学A」は理系学部志望の受験生のみならず、国公立大学を受験する文系の受験生にとっても重要な科目となっています。近年は思考力を問う出題も増加し、幅広い対策が求められます。
また、2025年度より開始される新課程でのテストからは、出題形式が大きく変わることも要注意。センター試験の時代から続く傾向として「選択問題」の存在がありましたが、2025年度からは廃止され、「数学A」分野の問題が全て必答となります。つまり、2025年度の共通テストからは不得意な分野や相対的に難解な問題を、避けることができなくなってしまうということです。全ての分野を満遍なく理解しておくことが重要となるでしょう。
本記事では共通テスト「数学I,数学A」の中でも〈確率〉分野にフォーカスし、過去問を分析した上で効果的な対策法を紹介します。新課程移行のポイントやおすすめの参考書情報も、あわせて参考にしてください。
1. 新課程共通テスト「数学I,数学A」について
2025年度から開始となる新課程の共通テスト「数学I,数学A」において、大学入試センターが公表している方針や問題改訂のポイントについて解説します。
1-1. 共通テスト「数学」における新課程の方針
大学入試センターが示した、数学における問題作成の方針は以下の通りです。
「数学の問題発⾒・解決の過程を重視する。事象を数理的に捉え,数学の問題を⾒いだすこと,解決の⾒通しをもつこと,⽬的に応じて数,式,図,表,グラフなどの数学的な表現を⽤いて処理すること,及び解決過程を振り返り,得られた結果を意味づけたり,活⽤したり,統合的・発展的に考察したりすることなどを求める。
問題の作成に当たっては,数学における概念や原理を基に考察したり,数学のよさを認識できたりするような題材等を含め検討する。例えば,⽇常⽣活や社会の事象など様々な事象を数理的に捉え,数学的に処理できる題材,教科書等では扱われていない数学の定理等を既習の知識等を活⽤しながら導くことのできるような題材が考えられる。」
*参照:令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針
整理すると、大学入試センターが受験生に求める能力や共通テストで問いたい内容は、以下の通りであると予想できます。
<受験生に求める能力>
・ただ答えを出すだけではなく、解決の過程も重視する
・計算だけではなく表やグラフなどを用いた総合的な判断を求める
<新しい共通テストで問われる内容>
・日常生活で生じる事象を数学的に考える問題が出題されやすい
・教科書外の知識を、既習事項の応用により導かせる問題が課される可能性がある
センター試験から共通テストに移行する過程でも、総合的判断や応用力といった指標は重要視されていましたが、新課程の共通テストからはよりその傾向が高まるといえます。
特に「教科書で扱われていない定理を問う可能性がある」と発表されている以上、教科書内容をたださらうだけでなく、定理や数式の本質まで理解しておかなくてはなりません。授業で習う公式は出題される問題に応じて機械的に当てはめるものではなく、新たな定理を導くものとしているのが大学入試センターの方針です。
共通テストを受験する上で、もちろん過去問を解くなどテストに向けた対策は必要ですが、日頃の授業から「本質を理解する」ための努力をしておくことで、テスト問題に大きなギャップを感じるケースも少なくなるでしょう。
1-2. 共通テスト「数学I,数学A」新課程のポイント
共通テスト「数学I,数学A」が、新課程でどのように改訂されるのか説明します。
まず、特筆すべき事項として、「選択問題の廃止」があります。これまで共通テスト「数学I・A」は「数学I」分野である大問1・2は全問必答、「数学A」分野である大問3・4・5は3問から2問を選択するといった形式でした。2025年度の新課程からはこの「選択問題」が廃止され、全問必答の形式となります。
事前に発表された共通テスト「数学」の試作問題をみると、「数学I」分野は大きな変更がなさそうですが、「数学A」分野は〈図形〉分野と〈確率〉分野が必答問題として出題されていることが分かります。
なお、試験時間は70分と変化はありません。
○旧課程共通テスト「数学I・A」(~2024年度)
問題 | 解答方法 | 分野 | 配点 |
---|---|---|---|
1 | 必答 | 数I「数と式」 数I「図形と計量」 |
30 |
2 | 必答 | 数I「二次関数」 数I「データの分析」 |
30 |
3 | 選択 | 数学A「確率」 | 20 |
4 | 選択 | 数学A「整数の性質」 | 20 |
5 | 選択 | 数学A「図形の性質」 | 20 |
○新課程共通テスト「数学I,数学A」(2025年度~)
問題 | 解答方法 | 分野 | 配点 |
---|---|---|---|
1 | 必答 | 数I「数と式」 数I「図形と計量」 |
30 |
2 | 必答 | 数I「二次関数」 数I「データの分析」 |
30 |
3 | 必答 | 数学A「図形の性質」 | 20 |
4 | 必答 | 数学A「確率」 | 20 |
*参照:令和7年度大学入学共通テスト 試作問題「数学」の概要
2. 【新課程】共通テスト「数学I,数学A」〈確率〉分野の出題 ~試作問題分析~
大学入試センターは新課程への移行に伴い、共通テストの「試作問題」を発表しています。その中から第4問〈確率〉分野の問題を取り上げてみましょう。
*参照:令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『数学Ⅰ,数学A』
(1)は一般的な確率の問題です。くじの確率を問う内容はこれまでも多く出題されていますし、シチュエーション自体も大きな変化はないと言えるでしょう。
ただ、これまで数学B「確率分布と統計的な推測」の分野に含まれていた期待値を求める問題が出題されているので注意が必要です。「数学II・Bの範囲だから必要ない」と切り捨てず、単元内容の本質までしっかりと理解し、あやふやなところがないようにしましょう。
*参照:令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『数学Ⅰ,数学A』
(2)はこれまでの共通テストと比べ、問題文の量が増加しました。数学といえども「読解力」が必要となります。
会話のなかで誘導が示されてはいますが、大学入試センターの掲げる問題作成の方針通り、「解答の過程」も重視されており、立式から解答を求められていることが分かります。
第4問以外も全体的に問題文の量が増えており、何を問われているのかしっかり文章の中から理解するという、「問題を正しく読み取る力」も求められていると感じます。70分の制限時間の中でいかに効率的に解き進めていくかも高得点へのカギとなりそうです。
3. 【新課程】共通テスト「数学I,数学A」〈確率〉分野の対策法
〈確率〉分野を中心に、入試本番に向けて実際にどのような対策をとれば良いか、学習の進め方をアドバイスします。
3-1. 夏までの対策
数学は入試直前に短期で完成させることが、なかなか難しい教科です。3年生に入ってからと言わず、できるだけ早い内から対策を始めると良いでしょう。自分がどの分野が得意でどの分野が苦手であるかを早い内に理解しておくと、勉強計画もスムーズに立てることができます。
この時期は「とにかく問題をこなし、苦手な分野や単元をなくす努力をする」ことが大切です。その中で本質を理解することも忘れないでください。新課程共通テスト「数学I,数学A」では、どの分野も等しく理解できていることが求められるため、分野別対策をおこなう際にも穴をつくらないよう気をつけなければなりません。
〈確率〉分野の対策としては、「独立・背反」「反復試行」「条件付き確率」「余事象」「期待値」――これらの用語の意味や問題に応じてどれを利用すれば良いかを正しく理解しておく必要があるでしょう。問題を解くだけでなく教科書や参考書も活用し、考え方を説明できるようにしておくとよいです。
3-2. 夏~入試直前期の対策
夏までに基礎が固まれば、後は本番に向けてひたすら過去問演習に取り組みましょう。
先ほど分析した試作問題からもわかる通り、1問1問の出題傾向自体に大きな変化はないため、旧課程の共通テスト内容からも参考になるところはたくさんあります。過去問を積極的に活用しましょう!
また、この時期は定期的に模試を受けることになると思うので、現段階での実力を測ることができるでしょう。
入試直前期に分野別の対策に取り組むケースは少なくなると思いますが、苦手な分野と得意な分野がはっきりしている場合は、苦手分野に絞って対策するのも1つの戦略です。もし〈確率〉分野が苦手だと感じていれば、夏までに使っていた分野別の参考書や、模試・過去問の該当問題を解き直してさらなる強化に努めましょう。
この時、入試直前に新しい参考書に手を出すのはあまりおすすめしません。新しい問題を見ると、自分がきちんと勉強できていなかったのではないかと不安になってしまうためです。自分のこれまでの努力を信じ、使ってきた参考書の解き直しに徹した方が良いでしょう。
4. 【新課程】共通テスト「数学I,数学A」分野別対策におすすめの参考書4選
新課程の共通テスト「数学I,数学A」の分野別対策、特に〈確率〉分野の攻略におすすめの参考書を4冊紹介します。夏までの分野別対策にぜひ活用してみてください!
『合格る確率 +場合の数』(文英堂)「原理原則編→典型手法編→入試実戦編→実戦融合問題編→超高難度有名問題編」の5チャプターで構成されており、定期テストから2次試験レベルまでカバーできます。
自分のレベルに合わせて難易度を選択できるのが魅力です。説明も図や表で分かりやすく可視化されており、確率を苦手に感じている人にとっても取り組みやすい1冊です。
『解法のエッセンス/確率編』(東京出版)
第1部「必修編」と第2部「応用編」・第3部「ランダム演習編」に分かれており、段階を踏んで確率分野を理解することができます。
セクションごとに解説付きの例題があり、問題演習へと続いていきます。この解説が授業を書き起こしたような語り口調で描かれており、非常にわかりやすいつくりとなっています。
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本書では語り口調で確率分野の説明が細かくなされており、初心者にも抵抗なく取り組める1冊です。
確率分野でよく問われる内容を取り上げ、詳細に解説されているため、実際の入試問題にも応用できる力を身に付けられるでしょう。
『数学Ⅰ・A 基礎問題精講 六訂版』(旺文社)
収録されているのは確率分野だけではありませんが、分野別に基本問題がまとまっています。過去問演習を本格的に始めるまでの間に、基礎を完成させるには最良の1冊です。
解説やポイントの整理も丁寧で、この1冊を仕上げれば基礎固めはバッチリでしょう。
5. まとめ
2025年度から始まる共通テスト「数学I,数学A」は、新課程に対応した内容となります。
選択問題がなくなるなど出題形式として大きく変わる部分はありますが、求められている能力としては今までの共通テストを引き継ぎ、発展させたものです。試作問題から考えて出題のレベル・傾向が大幅に変わることは考えにくいため、あまり身構え過ぎないようにしましょう。
日頃から「本質を理解する」ことを意識し、応用力を鍛えておくことで自ずと高得点につながるはずです。
なかでも〈確率〉分野は考え方がつかみにくく、理解が難しい分野ではありますが、ひとつひとつの考え方を整理し理解していくことで、問題に応じた適切な解法を選択できるようになるでしょう。
記事で紹介した参考書も活用しつつ、〈確率〉分野を大学入試における「穴」ではなく、得点源となる「武器」にしてください!
*新課程の共通テストについては、こちらの記事も参考にしてください!
>>【新課程】共通テスト「数学I,数学A」目標点数別の勉強法とおすすめ参考書4選
>>【新課程】数学1A(数IA)が苦手な人必見!基礎固めの勉強法とおすすめ参考書4選