現代文はこれといった勉強法が確立しておらず、どのように成績を伸ばせばよいのか悩んでいる人も多いかもしれません。この記事では、参考書を用いた現代文の対策学習について、参考書の種類と選び方の注意点を解説します。
入門的な内容から現代文を極めたい人向けまで、様々なレベルのおすすめ参考書も紹介しますので、ぜひ自分に合った1冊を探してみてください。
1. 現代文の対策に参考書は必要?
「現代文」の勉強法は、大学入試科目の中で最も確立されていないといっても過言ではありません。文章を読んで答案を作成する、もしくは正しいと思う選択肢を選ぶという回答方法は、単純な暗記や基礎問題の繰り返しでは上達しにくいものです。中には、「現代文はセンスだ」とあきらめてしまう人も多いのではないでしょうか。
——ですが、あきらめてしまうのは、大変もったいない選択と言えます。実際、現代文においても参考書による学習は有効だからです。
現代文の問題で使われる論説文や小説には頻出のテーマや語句があり、また文章の構成のパターンや出題パターンなど、一定の「型」があります。そのような読解に役立つ背景知識や語彙力、あるいは答案作成のコツを身につけるために参考書を頼ることができるのです。
1-1. 現代文の対策に役立つ参考書の種類
現代文の学習に役立つ参考書は大きく分けて2つあります。
ひとつは、論説文や小説で頻出の重要語句やテーマについて解説している「現代文キーワード集」です。これは現代文の文章を読む時に、理解の「手助け」となる知識を紹介してくれる参考書です。
現代文の、特に評論文では、例えば「パラダイム:ある時代や分野、集団での支配的な規範となる《ものの見方》や《考え方》のこと」のような日常的には使わない語彙や、「近代的自我の確立」といった特有のテーマが扱われます。「現代文キーワード集」を使用することによって、こうした背景知識を事前に大まかな枠組みとして知っておくことができ、時間が限られた試験本番での、問題を解きながら未知の語句やテーマを理解するといった無駄な工程を省くことができるのです。
もうひとつは、現代文の論説文や小説を「読む」方法を紹介する「問題解説型の参考書」です。この種類の参考書は説明する形式などに解説者の特徴が色濃く出るため、合う・合わないが個人によって分かれますが、有益な読解方法や答案作成のテクニックをレクチャーしてくれています。
問題本文の解説の方法も様々なので、自分が理解しやすいものを選びましょう。また実戦的な問題がついているものであれば、実際に問題を解きつつ解説を読み、読解のコツをつかんでいくことができます。
1-2. 目的に合った参考書を選ぼう
参考書を選ぶ時には、まずどのような力をつけたいのかを考えてみましょう。評論文のテーマを理解するのが苦手な人は「評論文の頻出テーマを知ること」が必要になりますし、記述式の解答を作成するのが苦手な人は「答案を作る力」が必要になります。
大学入試での現代文の出題傾向を見ると、近年では記述式問題が増えていますが、やはり記述式にはそのための対策が必要になります。自分が受験しようとしている大学の入試問題形式を今一度確認し、「記述はあるのか」「どのくらいの分量なのか」を調べ、記述答案作成の練習がどの程度必要なのかを明確にしておきましょう。
また、現代文は文章を理解することが必要になるので、問題集において解説は重要な要素になります。文章で読んだ方がわかりやすかったり、図で示された方がわかりやすかったり、個人差があるので、自分に合ったものを選びましょう。
したがって、現代文の参考書を選ぶ時のポイントは以下の3点です。
- 自分に必要なのは「知識をつけるためのキーワード・テーマ解説書」か、「読解力をつけるための問題集」か
- 受験する大学の入試問題形式は選択式か記述式か
- 本文や設問に対する解説の方法が自分にとってわかりやすいか
2. 現代文の評論・小説問題対策におすすめ参考書7選
StudiCoユーザーたちがおすすめする現代文の参考書を7点紹介します。
内容のレベルや解説の形式など、それぞれの参考書の特徴についてまとめましたので、自分に合った参考書を探してみましょう。
2-1. 現代文キーワード集・テーマ解説書
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『ことばはちからダ!現代文キーワード―入試現代文最重要キーワード20 (河合塾SERIES)』(河合出版)
基礎的な読解用語20語と重要語68語(32語+36語)が取り上げられ、それぞれについて対義語や関連語など関係するワードとともに解説されています。
さらに頻出テーマの解説がついており、基礎レベルから少し発展的な内容までカバーできる1冊です。
『現代文のコア 読解のための最重要テーマとキーワード』(かんき出版)
「近代」や「社会」など頻出テーマについての1~8章、小説についての9章、文章読解についての10章という構成で解説されており、この1冊で現代文に必要な項目をひと通りカバーできる内容になっています。頻出テーマの各章では過去の入試問題が解説とともに掲載されており、実際の問題を見ながら理解を深めることができます。
また、文章読解についてはポイントとなる表現や作問者の視点について詳しく解説されており、問題を解く時の指針になる情報が詰まっています。
2-2. 現代文の問題集と解説型参考書
『現代文読解力の開発講座 新装版』(駿台文庫)
10題の問題に対する解答とその解説という構成の参考書。問題のレベルとしては基礎から中級で、選択式と文章から抜き出して解答する問題、15字程度の記述問題が主になっています。それらに加えて文章の100字要約問題が各題に付いているので、文章の要旨を捉える練習にも活用できます。
解説は講義を受けるような形式で、文章の流れの解説とそのテーマについての説明、設問ごとの解説という構成になっており、始めから問題を解きながら学習したい人に最適です。
『田村のやさしく語る現代文』(代々木ライブラリー)
第一部は、現代文という科目について説く1章と、「接続語」や「指示語」といった問題を解く「道具」について解説している2章で構成されています。第二部は、5題の入試過去問題と解説から成っています。
収録されている問題は中堅私立大レベルで、選択式が中心です。第一部から第二部の解説まで全て文章で書かれており、一見すると重い内容に感じるかもしれませんが、軽快な語り口調で書かれているので、実際はとても読みやすい1冊です。
『現代文 基礎問題精講』(旺文社)
現代文の基本的な考え方や読解のルールを説明する入門編と、各8題の基礎編と実践編の練習問題が収録されています。
練習問題には評論・小説の問題と一緒に、記述問題が基礎編・実践編各1題ずつ含まれているので記述の対策も可能です。問題のレベルとしては入試基礎~中堅私立大学レベルで、基礎編から実践編へとステップアップする形になります。
この参考書で特徴的なのは、解説が視覚的にとてもわかりやすいという点です。文章の流れを矢印で示し、段落の内容がどのような関係にあるのかを整理して本文の全体構造を示したり、設問の前後の文を抜き出して対比関係や並列関係を図示したりと、本文の展開がつかみやすくなっています。
また、基礎編は解説が詳しく、本文に傍線を引く、イコールで繋ぐなど工夫されているため、文章を読みつつ論の流れを捉えることができます。図で本文の流れや設問を理解したい人におすすめです。
『得点奪取現代文記述・論述対策 三訂版(河合塾シリーズ)』(河合出版)
典型問題編(5題)と練習問題編(20題)の2部で構成されています。問題のレベルとしては難関大学向けで記述問題に対応しており、設問パターンごとに分かれた典型問題編では、それぞれについて記述答案を作る時のプロセスを解説しています。
典型問題では実際の答案例とそれを採点した例が載っています。さらに1つの記述解答に含むべき項目が細分化され、その配点と共に示されているので、自分の解答と照らし合わせて、点数がもらうために必要なポイントを確認することができます。
また、練習問題は「社会」「文学」「言語」などのテーマごとの評論文と、小説と随筆、明治期文語文が2編収録されているのも特徴です。
問題本文についての解説は要約された短文と簡単な図式をはさみつつ、基本的には文章によって内容が説明されているため、読解力に一定の自信がある人におすすめです。
『現代文と格闘する 三訂版(河合塾シリーズ)』(河合出版)
評論文に登場するワードや概念などを読み物のように紹介する第一部、評論文・小説のそれぞれについて読解のコツを解説する第二部に続き、第三部には演習問題(評論10題、小説3題)が収録されています。問題レベルは高く、現代文対策としては上級者向けの内容です。
解説では「読みつなぐ」という方法を紹介しており、本文のキーワードに○をつけたり□で囲ったりと、問題文のどこに注目し、どのような関係にあるのかが示されています。
また、解説の随所に「まとめ」として文の要約が挟まれるので、文章の流れと要旨が理解しやすい構成になっています。全体を通して長めの文章で解説されているので、「現代文が好き」「文章を読むのが苦ではない」という人におすすめです。
3. まとめ
現代文の参考書には、解説の仕方や内容などさまざまなものがあります。
センスに頼らず着実に実力を身につけるためにも、参考書を選ぶ際のポイントを振り返っておきましょう。
- 自分に必要なのは「キーワードやテーマの解説書」か「読解力をつけるための問題集」かを見極める
- 自分が受ける大学の入試問題形式は「選択式」か「記述式」かを調べる
- 本文や設問に対する解説の方法が、自分にとってわかりやすいかどうか判断する
現代文が得意な人も苦手な人も、問題に向き合う上で「第三者」である参考書の知恵と力を借りて、入試本番までに文章を読み解くコツを身につけましょう。