• 英語
  • 英語長文

高校1年生・2年生向け 英語長文を“速く正確に”読むためのステップアップ勉強法

2018.12.03

「英語長文が読めない!」基本的な英文法や構文は理解しているつもりなのに、長文読解問題で点が取れないのはなぜなのか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、長文が読めない原因と克服のための対策について徹底解説し、効果的に勉強するためのおすすめ問題集を紹介します!

※この記事は2018年12月に書かれた内容を一部最新の情報にリライトして投稿したものです。紹介するレポートには旧版のものも含まれています。

1. 英語の基礎力はあるのに長文問題が解けない理由

大学入試では、大半の英語試験にて長文読解問題が出題され、配点も高く設定されています。その理由は、英語文の読解力によって、受験生の総合的な英語力を測ることができるからです。逆に言えば、長文読解問題で高得点を取るためには、文法力・単語力・速読力など、英語に関する様々な能力が求められるということになります。
しかし、文法や単語力などの英語の基礎となる力が備わっていれば、それだけで長文がすんなり読めるようになるのかというと、そうでもありません。
英語長文問題での得点が伸び悩んでいる人に最も多いのが、以下のような特徴です。

*英語の基礎となる力は身についている
*1文(センテンス)ごとなら英文をスムーズに理解できる

基礎知識もあり、短い英文なら読み解けるにもかかわらず、それが長文になった途端に読み取ることができなくなってしまうというのは、どのようなことが原因なのでしょうか。
その答えは、長文を1文ごとに読んでしまっており、文章全体の伝えたいことまで読み取れていないことです。
先ほどの特徴に当てはまる人は、長文を読むときに以下のことを読み取る力が身についていない場合が多いです。

*各パラグラフ(段落)のトピックやキーワードは何か
*文章全体のテーマは何か
*筆者の主張は何か

このように、文章の全体像を把握できなければ、結果、長文読解攻略は難しいものとなります。
そこで、「英語の基礎はできるのに長文が読めない」を劇的に変える、効果的な勉強法を紹介します!

2. 英語長文読解の最重要テクニック「パラグラフ・リーディング」

文章全体を読み取るにあたり、まず重要となるのが、「パラグラフ・リーディング」という読解手法です。
パラグラフ・リーディングとは、パラグラフ(段落)ごとに要点を理解し、それを積み重ねて文章全体の主張を正確に読み取る方法のことをいいます。
パラグラフ(段落)の構成が理解できない限り、英語の長文や論説文を読解する力は身につきません。なぜなら、各パラグラフの構成が理解できないことで「要旨」がつかめず、文章全体の主張・テーマが分からないという状況に陥るためです。
そのため、この「パラグラフ・リーディング」の技術は、長文読解において最も重要なテクニックと言えるでしょう。
では、どうすればよいか。
まず、英語の論説文には決まった型(スタイル)がありま
入試で出題される論説文は、必ず1つのテーマを取り上げ、それについて論じています。そして、その文章全体を通じて、筆者はそのテーマに関する自分の主張を、読者に十分に理解・納得してもらうように文章を構成します。
以下の具体例で、英語の論説文のスタイルの典型例を見てみましょう。ここでは、文章の構造を理解しやすくするために、日本語にしてあります。

 AI(人工知能)やロボット工学が急速に発達している昨今、人間の労働がAIやAI搭載ロボットに奪われることを懸念する声が上がっている。だが、AIが人間の労働力に取って代わるのは、絶対的な悪なのだろうか。

 まず、人間より、AIやロボットの方が向いている作業というのが確実に存在する。たとえば、人間が入っていくには危険な場所での作業はロボットに任せるべきだ。また、ビッグデータを高速で処理できるAIは、複雑な病気の診断において、人間の医師より正確に診断できることがわかってきている。さらに、大半の交通事故の原因が人為的なものであることを考えれば、AIによる自動運転技術が十分に発達すれば、交通事故の大幅な減少も見込める。

 一方、懸念されているのは人間の労働力が奪われるという問題だ。しかし、現状では、AIやロボットは、人間を補助する役割で、部分的に使用されている段階である。つまり、人間が働く余地は残されている。それどころか、「過労死」などが問題視されている日本などの国では、AI・ロボットを導入することで、労働者の労働量を適切なレベルに維持し、労働者が仕事を離れて、余暇を過ごす時間が増え、充実した人生を送れるようになるだろう。

 将来、AIやロボットが驚異的な進歩を見せ、補助的な役割を超え、人間の労働の大半に取って代わると仮定してみよう。もし、労働に関する法制度が現状のままなら、大量の失業者が生まれ、社会は混乱するだろう。だが、この問題は国による対策、たとえば「ベーシック・インカム」の導入といった措置により解決できる。人間は、人間にしかできない仕事をこれまでより多くの人数で分担できるようになるため、一人あたりの仕事量が減少し、仕事以外の時間が豊富に持てるようになる。そして必要最低限の生活費は国から支給される収入でまかなうのである。

 このように考えてみると、AIやロボットの進化、そして人間の労働市場への参入は、決して悲観すべきことではないことがわかるだろう。

さっそく、この文章を「パラグラフ・リーディング」してみましょう。

【第1パラグラフ=導入(introduction)】
 AI(人工知能)やロボット工学が急速に発達している昨今、人間の労働がAIやAI搭載ロボットに奪われることを懸念する声が上がっている。だが、AIが人間の労働力に取って代わるのは、絶対的な悪なのだろうか《=テーマの提示、問題提起》

まず、「AIが人間の労働力に取って代わるのは悪なのか」がテーマであることを把握します。このあと文章を読む間ずっと、このテーマを頭に入れておくことが大事です。
次に、第2~4パラグラフをまとめて見てみましょう。
マーカー箇所が、それぞれのパラグラフで重要な箇所です。

【第2パラグラフ】
 まず、人間より、AIやロボットの方が向いている作業というのが確実に存在する。たとえば、人間が入っていくには危険な場所での作業はロボットに任せるべきだ。また、ビッグデータを高速で処理できるAIは、複雑な病気の診断において、人間の医師より正確に診断できることがわかってきている。さらに、大半の交通事故の原因が人為的なものであることを考えれば、AIによる自動運転技術が十分に発達すれば、交通事故の大幅な減少も見込める。

【第3パラグラフ】
 一方、懸念されているのは人間の労働力が奪われるという問題だ。しかし、現状では、AIやロボットは、人間を補助する役割で、部分的に使用されている段階である。つまり、人間が働く余地は残されている。それどころか、「過労死」などが問題視されている日本などの国では、AI・ロボットを導入することで、労働者の労働量を適切なレベルに維持し、労働者が仕事を離れて、余暇を過ごす時間が増え、充実した人生を送れるようになるだろう。

【第4パラグラフ】
 将来、AIやロボットが驚異的な進歩を見せ、補助的な役割を超え、人間の労働の大半に取って代わると仮定してみよう。もし、労働に関する法制度が現状のままなら、大量の失業者が生まれ、社会は混乱するだろう。だが、この問題は国による対策、たとえば「ベーシック・インカム」の導入といった措置により解決できる。人間は、人間にしかできない仕事をこれまでより多くの人数で分担できるようになるため、一人あたりの仕事量が減少し、仕事以外の時間が豊富に持てるようになる。そして必要最低限の生活費は国から支給される収入でまかなうのである。

このように、各段落の核となる文を「トピック・センテンス」と呼びます。必ずしも「トピック・センテンス」という用語を知っておく必要はありませんが、「各段落には核となる文がある」ということは知っておくべきです。
この3つの太字箇所(=トピック・センテンス)だけ取り出してみましょう。

【第2パラグラフ】
人間よりAIやロボットの方が向いている作業がある

【第3パラグラフ
AI・ロボットを導入⇒労働者の労働量が適切に⇒余暇を過ごす時間が増え、充実した人生を送れる

【第4パラグラフ】
(AI・ロボットに大幅に仕事が奪われたとしても)「ベーシック・インカム」導入など、解決策はある

要するに筆者は、「AI・ロボットの積極的な利用は、人間の労働が奪われることより利点が多い」という主張を3つの観点から述べているのです。
こうした論説文では、1つのパラグラフにいくつも主張を盛り込む、ということはありません。パラグラフ1つにつき1つの論点・主張を展開する。逆に言えば、論点が変わるなら、そこでパラグラフを変える。つまり、パラグラフが変わるときは、「ここからは別の論点に移るんだな」ということを意識することが大切です。
論説文のもう1つの重要な要素は、これら「各段落の核となる文(=トピック・センテンス)」に説得力を持たせるための根拠や具体的な例示です。こうした役割をもつ文を、サポート・センテンスと呼びます。
第2パラグラフを見てください。
ここでのトピック・センテンスは、「人間より、AIやロボットの方が向いている作業というのが確実に存在する」というものでした。ただ、この文だけでは説得力に欠けるので、読者を納得させるために、3つの具体例を提示しています。

【トピック・センテンス】
人間より、AIやロボットの方が向いている作業というのが確実に存在する

サポート・センテンス(1) 
人間が立ち入るには危険な場所での作業 ⇒ ロボット◎

サポート・センテンス(2) 
複雑な病気の診断 ⇒ AI◎

サポート・センテンス(3) 
車の運転 ⇒ AIによる技術◎

こうした構造を把握することがなぜ大切かというと、英文に知らない単語が出てきて、文の意味が読み取れなかったとしても、その文が果たしている役割(=根拠となるデータを示す、例を挙げる、など)さえ理解できれば、文章全体の主旨を理解する上では障害とならないのです。これは英文を読むスピードを上げるためにも、効果的なテクニックとなります。
そして最後の段落は、結論・まとめとなっているのが通例です。

【第5パラグラフ=結論(conclusion)
 このように考えてみると、AIやロボットの進化、そして人間の労働市場への参入は、決して悲観すべきことではないことがわかるだろう。

このように、論説文での「論」の展開がしっかり頭に入っていれば、読解するということがとても楽に感じられるようになるはずです。
「パラグラフ・リーディング」について、まとめておきます。

【導入】
テーマの提示、問題提起
⇒テーマを素早く把握し、常にそれを意識しながら読み進める

【文章の中心部分】
いくつかの論点から主張を展開。主張に説得力を持たせるため、根拠の提示・例示を伴う
⇒筆者の主張が述べられるトピック・センテンスを把握。その周りの文章は、トピック・センテンスをどのように補強しているか、その役割に着目し、多少わからない部分があってもあまり気にしない

【結論】
論説の結論/筆者の主張が述べられる

3. 英語長文読解の演習指南 まずは「20題以上」の問題演習から

3-1. 長文演習は数が大事

パラグラフ・リーディングが意識できるようになったら、さっそく問題演習に取りかかりましょう。
「英語長文の点数が伸びない!」という悩みを抱える受験生には、長文読解問題の演習量が圧倒的に不足しているケースがとても多く見られます。
長文問題に5~10題取り組んだだけでは、実力にそれほど変化は表れません。
単語や文章のレベルが比較的易しい300語程度の長文を選んで、まずは20題ほど取り組んでみましょう。このくらいの分量をこなすことで、平均的に読むスピードが1割ほどアップするでしょう。(実体験による感覚的な数値です)

3-2. 長文演習におすすめの問題集

この段階の演習に適した、おすすめの問題集を紹介します。

やっておきたい英語長文300 改訂版 やっておきたい英語長文300 改訂版
英語
英語長文
やっておきたい英語長文300 改訂版
0
杉山俊一 塚越友幸
  • ほしい (0)
  • おすすめ (0)

やっておきたい英語長文300 改訂版』(河合出版)

・200語~400語の長文問題を30題収録
・多様な設問形式を出題
・【解答・解説編】が充実(問題冊子の2倍の厚さ)
・情報量が過度に多くない=コンパクトにまとまっている

「本能と学習」「燃料電池」「カルチャーショック」「脳の大きさ」など、多彩なテーマの英文がバランスよく収められており、かつそれぞれの長文の中で「doの用法」「分詞の形容詞的用法」「動名詞」「分詞構文」といった文法事項も、あわせて学べるつくりになっています。
この1冊をやり終えて、長文読解に少し自信がついてきたら、『やっておきたい英語長文500』(河合出版)にも取り組んでみましょう。こちらは掲載される英文の語数が400語~600語となり、より入試本番を想定した問題演習に取り組めます。

やっておきたい英語長文500 改訂版 やっておきたい英語長文500 改訂版
英語
英語長文
やっておきたい英語長文500 改訂版
0
杉山俊一 塚越友幸
  • ほしい (0)
  • おすすめ (0)

やっておきたい英語長文500 改訂版』(河合出版)

この2冊を最後まで終わらせることができれば、合計60題の長文問題を解いたことになります。ここまで来れば、「パラグラフ・リーディング」のコツもつかめ、長文を読むスピードもかなり上がっているはずです。

4. 再点検! 英語長文演習でつまずいた時に

4-1. 当てはまったら要注意!基礎英語力チェック

これまで「英語の基礎は身についている」という視点で述べてきましたが、自分ではそう思っていても、実は文法や語法、単語の知識が不十分なために長文問題での失点が多い、あるいは読む速度が遅い、というケースもあります。
次のような失点に心当たりがある方は要注意です。

・長文問題の一部として出題される文法問題でたまに間違える
・長文を読んでいて、意味を思い出すのに時間がかかる単語が多い
・句動詞(hear from, get over, take afterなど)を正しく組み立てる問題で間違えた
動詞の時制を見落としていて、物語文の時間の前後関係を取り違えていた

英語の基礎力となる文法・構文・語彙・語法などの知識があやふやだと、英文の読解そのものに支障が出たり、一部の設問でもったいない失点をしたりします。今一度、これらの知識に「穴」がないか、確認してみください。
英文法・語法の問題集に関しては、学校ですでに配られているケースも多いでしょう。まずはその復習から始めるのが効率的です。学校指定のものがない、あるいはもっと多くの問題で演習を積みたいという人には、次のような問題集がおすすめです。

4-2. 英文法・語法学習におすすめの問題集

スクランブル英文法・語法 4th Edition スクランブル英文法・語法 4th Edition
英語
英文法・構文
スクランブル英文法・語法 4th Edition
4.6
中尾 孝司/著
  • ほしい (16)
  • おすすめ (17)

スクランブル英文法・語法 4th Edition』(旺文社)

四訂版 UPGRADE英文法・語法問題 : 文法・語法・語い・熟語・会話・発音/アクセント 四訂版 UPGRADE英文法・語法問題 : 文法・語法・語い・熟語・会話・発音/アクセント
英語
英文法・構文
四訂版 UPGRADE英文法・語法問題 : 文法・語法・語い・熟語・会話・発音/アクセント
5
霜 康司/刀袮 雅彦/麻生 裕美子
  • ほしい (0)
  • おすすめ (0)

四訂版 UPGRADE英文法・語法問題 : 文法・語法・語い・熟語・会話・発音/アクセント』(数研出版)

Next Stage 英文法・語法問題[4th Edition] Next Stage 英文法・語法問題[4th Edition]
英語
英文法・構文
Next Stage 英文法・語法問題[4th Edition]
4.6
瓜生 豊/篠田 重晃
  • ほしい (94)
  • おすすめ (60)

Next Stage 英文法・語法問題[4th Edition]』(桐原書店)

ここに挙げた3冊は、すべて「文法」「語法」「イディオム」「会話表現」「単語・語彙」「アクセント・発音」の大学入試頻出項目を効率的に身につけることができます。
大学入試に出てくる頻出の知識はほぼ網羅されているので、まずはこれらを1冊、こなしてみましょう。

5. まとめ

英語の長文読解問題は総合的な英語力を測る指標です。それだけに、英語の確かな基礎力に裏付けられた英文読解の力と、文章の構造を把握して、段落ごとの内容を着実に読み取るテクニックがとても重要なのです。以下の勉強法を参考に今すぐ対策を始めましょう。

●「パラグラフ・リーディング」を意識する

●参考書の長文問題を20題解いてコツをつかむ

●つまずいたら文法・語法・語彙の知識を再点検

これで英語長文問題が、大学受験での自分の武器になること、間違いなしです!

岡本 眞一郎 先生 武南中学・高等学校
1983年より都立高等学校英語教諭として、都立青山高等学校、都立戸山高等学校、都立白鴎高等学校、2014年より埼玉県立春日部高等学校、埼玉県立浦和高等学校と首都圏の進学校を歴任。2018年4月からは、埼玉県私立の武南中学校・高等学校で教鞭を執り、多くの受験生たちの指導に当たっている。